中国の反ダンピング法の特例-2

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前回に続いて、中国の反ダンピング法の具体的な事例をあげる。

1.調査の打ち切り
中国の反ダンピング法第27条では以下の5ケースで調査を打ち切ることとなっている。
(1).調査の申請者が申請を取り消した場合
(2).ダンピングや被害及び両社の関係について十分な証拠がない場合
(3).ダンピング巾が2%より小さい場合
(4).実際の輸入量が少ない場合又は被害が少ない場合

(5).商務部が調査の継続が適当でないと考えた場合

(1).の申請取り消しは3ケースある。
・MDI (日本、韓国)
・ビスフェノールA (日本、ロシア、シンガポール、韓国及び台湾)
・EPDM (米・韓・オランダ)


このうち、MDIについては、中国側は用途先も価格も異なるポリメリックMDIとモノメリックMDIをごちゃまぜにして調査していたといわれている。これが分かって申請を取り消したと思われる。

(2).の十分な証拠がない場合は2ケース
・ポリスチレン(日本、韓国、タ イ)
・リジン(韓国、米国、インドネシア)


いずれも調査の結果、ダンピングの事実はあるが、国内企業に実質的損害が及んでいないとしている。

(3).のダンピング巾が2%より小さい場合はナイロンフィラメントヤーン(台湾 )。

このほか、エピクロルヒドリン(日本・韓国・ロシア・米国)の仮決定(本決定はまだ)ではダイソーがダンピング巾 0.9%で微小なため、保証金はゼロとなっている。

(4).の実際の輸入量が少ない場合
他はダンピング税が課せられているが、輸入量の3%未満の国及び企業が除外されている。
・塩化メチレン(韓、米、英、独、仏、蘭)のうちフランス  
・塗工印刷用紙(日、韓、米、フィンランド)のうち 米、フィンランド 
・エタノールアミン(日、米、独、ほか)のうち ドイツ
・光ファイバー(日本、米国、韓国)のうち 米のCorning

2.価格協定
Section 2 (第31~36条)に: Price Undertakings の規定がある。
当該企業と商務部が価格協定を締結するもので、今後ダンピング価格とならない価格で輸出する場合にはダンピング税を課さないというもの。
価格協定の例には以下がある。
・PVC(日本、韓国、米国、ロシア、台湾)でロシアのJoint Stock Company (SAYANSKCHIMPLAST)
・クロロホルム(EU、韓国、米国、インド)で

 LII Europe GmbH、The Dow Chemical Company、Vulcan Materials Company、ARKEMA、Samsung Fine Chemicals 5社
・Benzofuranol(日本・EU・米国)で日本農薬㈱と米国のFMC

参考 日本農薬の価格協定(中国語) http://gpj.mofcom.gov.cn/table/0602133.doc

3.ダンピング税率の再審査
第49条に関係者の要請による再審査の規定がある。
再審査によりダンピング税率が変更されたケースは多い。


・アクリル酸エステル(韓国、インドネシア、マレーシア、シンガポール)
 BASFペトロナス(4%)、日触インドネシア(11%)が再審査を要請
 BASFはそのまま、日触は3%に引き下げ


・TDI(日本、米国、韓国)で中国企業の要請で再審査
 三井武田ケミカル 4%→12.45%
 日本ポリウレタン 5%→60.02%
 その他  49%→60.02%

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