中国バブル説

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現在の日本の石油化学の好調の理由は中国需要にある。そして多くの人が、これが今後もかなり長期間続くと期待している。
その根拠の一つに経済産業省の発表する「世界の石油化学製品需給動向」の中国の石化製品の需給予想がある。

http://www.meti.go.jp/policy/chemistry/index.html

2005年5月の資料から中国のエチレン関連製品の需給をグラフ化すると以下の通りとなる。(クリックしてください)
C2kanzanchina

これによると2004年以降、能力が急増し生産量も増えるが需要はそれ以上に増えている。需要と生産の差が輸入であり、今後とも輸入は減らない。

このグラフには2つの問題がある。
まず、生産能力については調査時点で明らかになっている計画だけであり、その後も大規模の計画が次々に発表されている。
中国政府は小規模設備新設を禁止しており、新設は全て大規模である。

特に需要面が問題で、グラフから見てもこの数年の需要の急増を延長しているのが分かる。根拠の一つには13億人という膨大な潜在需要の存在と思われる。
しかし実際には三大成長エリア、広東、長江デルタ(上海)、渤海湾(北京、天津、大連)の3億人を現在のマーケットと考えるべきである。これと残りの10億人の所得格差は著しく大きい。

中国では戸籍が農民と都市市民に分かれており、農民は大学を出るなりしないと都市に住むことが出来ない。そのため多数の農民が出稼ぎの形で都市に流入し、低賃金で働いている。いってみれば、農民の犠牲の上で、都市市民の現在の繁栄ができているといえる。
最近は中国政府も西部(農村部)の開発に力を注いでいるが、これも実際には農村部の官吏が安い価格で農地を取り上げ、転売して儲けており、農地を失くした農民は生活が困窮しているといわれている。

将来は別としてこの数年をとってみると、これら10億人の需要を当てにすることはできない。
グラフの元の数字は2005年の中国の需要は18,107千トンとなっている。これに対して日本は5,611千トンで、既に2005年で日本の需要の3.2倍にもなっている。1人当たりで見ると中国は13.9kg、日本は44kgである。(これに対しフィリッピンは6.5kg)

仮に三大エリアの3億人が日本並み、残り10億人がフィリッピン並みに消費するとすれば、中国の需要は2000万トンにしかならず、本年にも頭打ちとなることとなる。

これに加えて人民元の切り上げ問題がある。繊維や雑貨など、エチレン系製品の最終製品が多く輸出されているが、元高が進むと輸出に陰りが出てくる。繊維については自主規制もある。

現実にいろいろの面で需要の限界が現れているのがみられる。
「人民網日本語版」(2005年8月2日)は以下の通り伝えている。
ーー消費財600品種のうち、繊維品、家電、靴などは需要が落ち込み、供給過剰がはっきりと現れている。商務部がモニタリングする繊維品衣類84品目のうち、供給過剰の状態にあるものは86.9%を占める。家電73品目のうち87.7%が供給過剰。金属・電気器材商品19品目はすべて供給過剰だ。
商務部国際貿易経済研究院国内貿易市場研究部の李永江主任は、最近において住宅・乗用車などの販売が鈍化し、生産・販売量が大きく落ち込み、家電、繊維品、家具、金属・電気器材商品などの需給に影響を及ぼしているとみる。

家電・金属・繊維の各業界では、生産規模が国内需要を大幅に上回っている。市場の変化が企業に反映されるまでのタイムラグを考えると、これら業界の販売面への影響は今後より鮮明になるとみられる。ーー

中国経済は今やバブルの時代に入っており、いつバブルが弾けてもおかしくないと思われる。石化製品についても、建設中の新増設が完成した時点で需要が失速し、輸入が激減する可能性がある。(PVCでは既に中国の輸入量は2001年の1,916千トンが2005年には1,307千トンに減っている)
その場合、今まで中国に輸出していた韓国・台湾メーカーが日本に輸出先を変える可能性もある。

日本の化学業界は2000年頃から本格的な「選択と集中」政策を始めたが、中国景気による採算向上でその動きが弱まっている。中国バブルが弾けた場合に日本の化学メーカーは対応できるであろうか。

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