日本の石油化学産業の構造改善-3 ポスト産構法時代前期

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25years22

産構法が終了した際に、業界(と通産省)は産構法の精神の維持のために2つの対応をとった。

①「デクレア方式」(事前報告制度):
産構法終了により今後は設備カルテルは認められなくなったが、新増設の乱立をおさえるため、休止設備再稼動、新増設、改造に当たっては事前に通産省に報告し公表する制度がつくられた。
②共販制度の維持:
公取委は産構法の終了をもって共販会社も解散すべきだと強く主張した。米国の市場開放要請の中に共販制度も参入障害とする指摘があったことも、これを後押しした。
しかし業界では価格競争を防ぐ重要な手段として継続を主張、生産・流通・販売の合理化のためにも必要とした。

最終的に公取委は、他の共販メンバーとの提携をしないこと、生産・流通・販売の合理化の進展状況を毎年報告することを求めた。

設備の増強に当たっては単独では大規模設備の増設は難しいことから共同生産方式が取られたが、上記の制約により、共販メンバー同士の合弁による共同生産が行われた。

需要が回復すると業界はたちまち、増設に乗り出した。
まず、産構法で休止したエチレンや誘導品設備を再稼動した。

続いて新増設計画が相次いだ。
エチレン:

・三菱油化・鹿島2期(326千トン)
・京葉エチレン(600千トン):住友化学と三井石油化学に15万トンずつ供給(共販解散後に出資)
・宇部エチレン(500千トン):宇部興産(50%)、三井東圧(25%)、日本石油化学(25%)
 *PP、SMは先行して完成したが、エチレンは実現せず。
LLDPE:
・千葉ポリエチレン 80千トン(住友化学/東ソー)
・宇部興産 50千トン(単独)
PP:
・千葉ポリプロ 60千トン(住友化学/宇部興産/トクヤマ/共販会社)
・宇部ポリプロ 80千トン(宇部立地。宇部興産/住友化学/トクヤマ/共販会社)
・四日市ポリプロ 65千トン(東ソー/チッソ/共販会社)
・浮島ポリプロ 80千トン(日石化学/三井東圧/三井石化/共販会社)
・ディー・ピー・ピー 80+50千トン(三菱油化/三菱化成)
・旭化成 64千トン(単独)
PVC:
・第一塩ビ製造 80千トン(住友化学/日本ゼオン/呉羽化学/サンアロー/共販会社)
PS:
・日本ポリスチレン増設 30+70千トン(昭和電工/住友化学)
SM:
・三井東圧 240千トン(宇部立地。宇部興産/鐘化が引取り枠)

*共販会社での増設を強調するため共販会社が出資した。
*PPでは新規進出が相次いだ。
東ソーは完全新規、日石化学と旭化成は
泉北ポリマーに参加していたが自社工場内に新設。日本鉱業も新規参入を狙い、輸入販売を始めた。
*共販会社は全般的に「形を変えた価格カルテル体制」に止まっていたが、その中で第一塩ビ販売だけは共同研究を行い、新製造方法を開発し、それをもとに共同生産を行った。
*日本ポリスチレンは増設を各社の責任で各社の工場内に立地。

これらの結果、エチレン及び誘導品の各社の能力は1993年8月時点で添付の通りとなり、産構法以前の能力をはるかに上回るものとなった。

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いつも大変参考にさせてもらってます。某企業で化学業界全般を担当しています。担当間もないため色々と検索していたところ、HPに巡り合いました。色々と質問させてもらうかもしれません。拙い知識なので低レベルかもしれませんが、よければ色々と教えてください。

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