ポリカーボネートと原料ビスフェノールA

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4月10日、三菱化学は黒崎事業所のポリカーボネート(PC)の増設と、北京でのSINOPECとのJVによるPC及び原料ビスフェノールAの事業計画について発表した。4には三井化学がSINOPECとのビスフェノールAのJV設立で認可を取得したと発表している。

中国におけるPC樹脂需要は、年率10%を上回る勢いで成長を続けており、世界でも最大の需要地となっており、欧米企業を含め各社が中国やタイ、シンガポールに進出している。

以下に日本におけるPC樹脂の状況と、欧米企業を含めたアジアでの活動状況をまとめた。

国内の状況は以下の通り。

三菱エンジニアリングプラスチック(MEP)は1994年に三菱ガス化学と当時の三菱化成が折半出資によって設立した会社で、両社のエンジニアリングプラスチックス事業を継承し、一体化した。コンパウンドは自製、国内の原体製造は各社が行う。
PCについては
三菱化学・黒崎に 40千トン、三菱ガス化学・鹿島に 100千トンのプラントをもつ。(三菱ガス化学・大阪の 25千トンは停止)
今回の発表では三菱化学・黒崎の40千トンのうち老朽化した20千トンを廃棄し、新たに60千トンを建設し、80千トンにする。

住友ダウ(住友化学 50%/ダウ 50%)は愛媛に 55千トンをもつ。
1992年に住友ノーガタック(住化100%)から改称したもので、95年にPCを生産開始、同年に元の住友ノーガタックのABS、ラテックス事業を分離(現在は三井化学との合弁の
日本エイアンドエル)した
ダウは日本のほか、米国、ドイツと韓国(下記)にプラントをもつ。

日本ジーイープラスチックス(GEPJ)は千葉に45千トン。
1989年設立で、GE 51%、三井化学 41%、長瀬産業が8%出資している。三井化学・千葉工場内にPCとビスフェノールA工場をもっている。

GEは米国とオランダ、スペインにプラントをもつ。

出光興産は千葉に50千トン。
1960年に
自社技術により工業化した。「世界でも出光のみの原油からの一貫生産を実施」。

帝人化成は松山に 120千トン。
1960年に製造開始した。

旭化成は世界で初めてのCOからの非ホスゲン法PC樹脂製造技術を開発した。
世界のPC樹脂は全て一酸化炭素(CO)を原料とするものであり、大部分は一酸化炭素と塩素から製造されるホスゲン(毒ガス)を原料としている。ホスゲン法はホスゲンの毒性問題や環境面での問題をもっている。Asahipcprocess
同社の技術は
エチレンオキサイドと副生CO及びビスフェノールAを原料とし、高性能のPC樹脂と高純度EGの2つの製品を高収率で製造するもので、日本に先駆け、台湾奇美実業との合弁会社(旭美化成:当初、旭化成 49%/奇美実業 51%、現在、旭化成 10%/奇美実業 90%)で100千トンのプラントを建設した。

各社のアジア進出状況は以下の通り。

中国:
Bayerは米、独、ベルギー、イタリアとタイ(下記)、中国に拠点をもつが、中国では上海のケミカルパークにPC関連とポリウレタン関連の諸プラントを建設中。PCはBayer 90%/上海クロルアルカリ10%のJVで能力は200千トン。ビスフェノールA 200千トンも今後建設する。
(2006/9修正 PCは2006/9に第一期 100千トンが完成、2008年末までに倍増する。ビスフェノールA完成時期は未定)

帝人化成浙江省嘉興市に100%子会社・帝人化成(中国)を設立し、50千トンのプラントをもつ。現在、倍増中で2006年9月に完成する。原料ビスフェノールAは現在は輸入だが、上海石化三井化工のプラントが完成すればそこから供給を受ける。(シンガポールでも三井が原料供給)
なお、同社はバイエルとPC樹脂事業でグローバルで製品の相互供給を行うことで合意した。バイエルの上海工場も相互供給の一環とする予定。
帝人とバイエルは1998年に新しいPC樹脂の開発のために帝人バイエルポリテックを設立している。2000年には高密度光ディスクに適した全く新しいタイプのPC樹脂を開発した。

三井化学はビスフェノールAを製造・販売するSINOPECとの50/50合弁会社・上海石化三井化工有限公司の設立で中国政府の認可を取得した。130億円を投じて上海ケミカルパークに12万トンのプラントを建設する。原料フェノールはSINOPEC上海高橋分公司から供給を受ける。

三菱化学は黒崎の増設とともに、中国でのPC計画についてSINOPECと共同FSを行うことを発表した。
日本側投資会社(三菱化学とMEP)とSINOPECがJVを設立し、北京の燕山石化敷地内にPC 60千トン、ビスフェノールA 100千トンを建設する。

タイ:
三菱エンジニアリングプラスチック(MEP)は1996年にタイタイ・ポリカーボネート社設立(MEP60%、三菱ガス化学 5%、三菱化学 5%、TOA Chemical 30%)、50千トンからスタートし、現在は140千トンの能力をもつ。

Bayerは1999年にアジアで最初のプラント(50千トン)を建設した。現在の能力は200千トンで、ビスフェノールAも160千トン生産している。

シンガポール:
帝人化成と帝人はジュロン島にTeijin Polycarbonate Singaporeを設立し(現地EDB 10%出資)、PC樹脂 180千トンを生産している。
原料のビスフェノールAはジュロン島の
Mitsui Phenols Singaporeから供給を受ける。

三井化学はジュロン島でフェノール、アセトン、ビスフェノールA、塗料原料用樹脂、アクリルエマルジョン、ビニルウレタン接着剤、合板用接着剤、ホルマリン、エラストマー製品(「タフマー」)などを製造している。フェノール、アセトン製造会社とビスフェノールA製造会社を統合したMitsui Phenols Singapore(三井化学 95%/三井物産 5%)では、ビスフェノールAを230千トン製造している。

韓国:
ダウとLGの50/50JVは麗川に65千トンのプラントをもつが、昨年9月に倍増することを発表した。

三菱化学(当時は三菱化成)は1989年に三養社との50/50JVの三養化成を設立した。現在は三菱化学25%、MEP 25%、三養社 50%出資で、能力は85千トン、半量をMEPが引き取って販売している。

台湾:
出光石油化学(当時)は台湾プラスチックとの50/50のJVの台化出光石油化学を設立し、麦寮工業区に100千トンのプラントをもっており、第3期75千トンの建設で合意している。

旭化成は上記の通り、旭美化成をもっている。

 

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いつも情報が良くまとめっているので良く読ませて戴いております。 PC技術については過去よりClosed Society的な側面もありましたが、昨今は旭化成が技術を乱売、既存Supplierが動揺しているみたいですね。 今後の旭の動きが要注目です。

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