薬害C型肝炎訴訟判決

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大阪地裁は6月21日、薬害C型肝炎訴訟で国と製薬会社に賠償責任を認める判決を下した。

血液製剤「フィブリノゲン」などを投与されてC型肝炎ウイルスに感染したとして、近畿、中国、四国地方の患者13人が国と製造元の三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)、子会社のベネシスを相手に総額7億5900万円の損害賠償を求めた集団訴訟。

判決では投与時期により、ミドリ十字がウイルスの不活化処理方法を変えた1985年8月以降に投与を受けた4人には企業のみに、集団感染が発覚した1987年4月以降に投与を受けた5人には企業と国の連帯での支払いを命じた。賠償総額は約2億5600万円。残り4人は請求を棄却した。

これに対して国は「医薬品は、副作用と有効性のバランスを見て承認するかどうかを判断している。フィブリノゲンに大きな有効性があったのは明らか。このままこの判決を受け入れると、薬事行政が立ち行かなくなってしまう」として控訴する方向。

三菱ウェルファーマでは「当社の主張が認められていない点もあり、今後の対応について慎重に検討したい。今後も医薬品の安全性の確保に最善の努力を尽くしていく」としている。

 同社は旧ミドリ十字製の血液製剤「フィブリノゲン」の投与で約1万人がC型肝炎を発症したと推計しており、今回の判決が新たな訴訟を促す公算は大きい。同社は賠償金の支払いに備えた会計上の引き当てをしていない。 

 

ミドリ十字は血友病患者への人血液・血漿の非加熱製剤でHIVに感染した薬害エイズ事件でも他の製薬会社と国とともに損害賠償を求める民事訴訟を起こされ、96年3月に和解している。(製造販売ではミドリ十字と化学及血清療法研究所、輸入販売ではバクスタージャパン、日本臓器製薬、バイエル薬品の5社)

なお、ミドリ十字の代表取締役3人は業務上過失致死罪で起訴され実刑判決を受けた。

 

ミドリ十字は1950年に日本ブラッド・バンクとして設立され、1964年にミドリ十字と改称している。

同社はエイズ事件で不買運動にさらされ、和解金も多額に及んだため、自主再建を諦め、1988年4月に吉冨製薬と合併した。
この合併は吉冨製薬が武田薬品の関連会社であるため、
薬害エイズの問題を製薬業界全体でフォローする」ととらえたメディアもあった。Wellpharma_2
合併会社の社名は当初は吉冨製薬であったが、20004月にウェルファイドに改称した。

一方、1999年10月に三菱化学が東京田辺製薬を吸収合併し、医薬品部門を分離して三菱東京製薬を設立したが、2001年10月に三菱東京製薬とウェルファイドが合併し、三菱ウェルファーマとなった。

両社は、激化する国際競争を勝ち抜くためには適正事業規模の達成と、一層の経営基盤の充実が必要との共通の認識のもとに交渉してきたとしている。

2002年10月に同社は血しょう分画製剤事業の製造部門を分社してベネシスを設立、1年後に完全分社化した。

なお同社は2003年に米国子会社アルファ・テラピゥティクの血漿採漿部門をバクスターに血漿分画事業をプロビタス・ファーマに譲渡し、米国における血漿分画事業から撤退した。

 

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