C型肝炎訴訟 福岡地裁判決

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汚染された血液製剤を投与されC型肝炎ウイルス(HCV)に感染させられたとして、九州・沖縄などの患者18人が国と製造元の三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)と子会社ベネシスを相手取り、総額11億6600万円の損害賠償を求めた「薬害C型肝炎九州訴訟」の判決が30日、福岡地裁であり、原告18人のうち11人に対して、国と製薬会社に計1億6830万円の賠償を命じた。

6月21日の大阪地裁の判決に次ぐもの。
大阪地裁では原告13人のうち5人については国と製薬会社の、4人は企業側の責任のみを認定し、総額2億5630万円の支払いを命じている。
既報 2006/6/28 「
薬害C型肝炎訴訟判決」 参照    

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大阪地裁ではは青森で肝炎集団感染が起きた87年4月企業はウイルス不活化処理方法を変えた85年8月以降に責任があるとした。

旧ミドリ十字は、約20年間にわたって行ってきた紫外線照射及びBPL併用処理から、ほとんど不活化効果がなかった紫外線照射等に変更したことにより、C型肝炎(当時の非A非B型肝炎)感染の危険性を一層高めたから、安全性確保義務に違反した過失がある。

(国は旧ミドリ十字の不活化処理方法の変更を知っていたと認めるに足りる証拠はない)

しかし、今回の福岡地裁は80年11月以降のフィプリノゲンによる感染者について国と製薬会社に責任があると判断した。

判決要旨から
「1978年には
米食品医薬品局(FDA)によるフィブリノゲン製剤の承認取り消しが公示され、当時の知見としてもフィブリノゲン製剤の有効性に疑問が生じていたのであるから、医薬品の安全性の確保等について第一次的な義務を有する旧ミドリ十字だけでなく、厚生大臣としても、その詳細を含めた情報を得た上で、非加熱フィブリノゲン製剤について調査、検討を行うべきであった。この時点で調査、検討を行えば、遅くとも80年11月までには、有効性及び有用性についての判断を行うことができたし、厚生大臣については、仮にそうでないとしても、旧ミドリ十字に対して緊急安全性情報を配布するよう行政指導すべきであった。

従って、旧ミドリ十字と厚生大臣は、遅くとも80年11月までに非加熱フィブリノゲン製剤の適応を先天性低フィブリノゲン血症に限定するか、または緊急安全性情報を配布すべき義務があったにもかかわらず、これを怠ったことに過失及び違法性がある。よって、被告会社らと国は、その後に同製剤の投与を受けた原告らに対する損害賠償義務を負う。」

なお、出産時に投与され感染したとする女性と母子感染した息子については、母子手帳紛失などで投与が立証されていないとして棄却、クリスマシンについては「肝炎感染の危険性はあったが、大出血時などに代替製剤がない場合もあり、有用性は認められる」として棄却になった。

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なお、大阪地裁判決に対しては、判決が1987年4月以前の国の責任などを認めず、原告によって判断が分かれたことを理不尽とし、勝訴した9人を含む原告13人全員が大阪高裁に控訴した。

8月25日には新たに患者31人が計約19億1400万円の損害賠償を求め全国4地裁に一斉提訴した。

国側も、臨床現場の産婦人科医の間では「出産時の大量出血などにフィブリノゲンは有効」との声が支配的だったなどから 6月28日に控訴している。

国側は今回の判決に対しても、「医薬品行政の根幹問題であり、判決をそのまま受け入れるのは難しい」として控訴する方向。

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