石原産業フェロシルト不法投棄事件

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有害物質を含んだ埋戻材フェロシルトが大量に埋められた事件で、三重、愛知、岐阜、京都の4府県警の合同捜査本部は6日朝、廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いで、石原産業四日市工場の元副工場長(同社元役員)と社員や子会社幹部ら数人の逮捕状を取り、取り調べを始めた。

同社は酸化チタンを製造しているが、輸入した砂鉄状の鉱物を粉砕して、硫酸法と塩素法でチタンを抽出している。

問題となったのは硫酸抽出法で抽出した後の廃硫酸で、同社は1969年に、これを長年にわたって中和処理せずに伊勢湾に捨てたとして、四日市海上保安部から摘発され、垂れ流した廃硫酸が約1億トンに上がることが認定されて、1980年に津地裁で有罪判決を受けている。

その後は廃硫酸と汚泥は炭酸カルシウムや消石灰で中和し、脱水して、産廃処分場に廃棄していた。
2003年の廃棄量は250~380千トンと膨大な量で、処分費用は1トン9,400円との推定がある。

同社では国際競争力強化策の一環として、1997年に、廃棄物の減量化と酸化チタンの製造コストの低減をはかるため、製造工程から副生する使用済み硫酸を再生利用して副生品を生産・販売する研究開発に着手した。
2001年から土壌埋戻材を「フェロシルト」と命名して販売を開始し、2003年には三重県リサイクル製品利用推進条例に基づく「リサイクル製品」に認定された。

2005年4月までの間に約77万トンのフェロシルトを生産、そのうち約72万トンが販売され、委託業者を通じて東海3県や京都府加茂町など35カ所に埋設された。業者がケナフを植えるための肥料と偽って埋め捨てたケースもある。

2004年11月、大雨によって愛知県北丘地区でフェロシルトが流出し、川の水を赤く染めるという事件が発生し、続いてフェロシルトの放射線量が問題とされた。
放射能については、自然界に存在する値と比較しても問題のないことが確認されたが、サンプル検査の過程でフェロシルト中から基準値を超える6価クロムやフッ素化合物も含まれていることが分かった。

同社ではこの時点ではフェロシルトに起因するものかどうかは疑問であるとしたが、自主回収を基本として対応することとし、フェロシルトの生産を中止し、リサイクル製品の認定も取下げた。

その後の調査過程では三重県及び岐阜県にフェロシルトのサンプルとして提出したものが別のものであるということが判明した。

2005年10月、石原産業はフェロシルトに関する事実とお詫びを発表した。
それによると、

1) 6価クロム
当初は製品中に含まれていないとしていたが、試作試験の結果、製造工程の条件の変動によっては
、6価クロムが含まれる可能性があることが判明した。
2) フッ素
  フェロシルトは、硫酸法酸化チタンの製造工程からの廃酸を再利用して製造されるものだが、
  シリカ分を加えることにより凝集性を高めることができることが分かり、
塩素法酸化チタン製造工程から副生する未反応鉱石中和スラリー等からシリカ分を分離・回収して、フェロシルトに混合することが行なわれていたことが判明した。
塩酸回収工程において弗酸を使うので、その廃液にはフッ化カルシウム等のフッ素化合物が含まれており、シリカ分をフェロシルトに混合する過程でこれらのフッ素化合物も混入したと判断。
3) 認定された製造工程と異なる工程での製造は、フェロシルトの開発・生産の責任者の元副工場長が部下に命じて実施させていた。
4) 元副工場長は、塩素法酸化チタン製造工程からの廃液の混合状況の操作を示す資料を廃棄させたり、三重県・岐阜県から提出を求められたフェロシルトのサンプルを別の試作品サンプルにすり替えて提出させていた。

しかし、問題はそれだけではなかった。フェロシルト自体が問題であったようだ。

捜査本部は、土壌埋戻材として販売しながら、実際には購入業者には「改質加工費」などの名目で販売価格の約20倍の金額が払われていたとして、この改質加工費は実際には産廃処理費で、業者に引き取り料を払う「逆有償」にあたるとみて取調べを進め、今回の逮捕状となった。

地方自治体では、石原産業に対しフェロシルトの撤去命令を出して撤去させようとしているが、撤去はなかなか進んでいない。

なお、合同捜査本部は、法人としても同法の両罰規定を適用する方針だが、社長については、事件への直接的な関与を立証するのが難しいとして立件を見送る模様。

同社は2006年3月連結決算で、フェロシルト回収費用326億円(うち損失引当296億円)などを特別損失に計上し、当期純損失は107億円(前期比165 億円減)。

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