三菱ウェルファーマと田辺製薬が合併発表

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三菱ウェルファーマと田辺製薬は2日、両社の合併で基本合意書を締結したと発表した。

合併期日   2007年10月1日
合併会社名   田辺三菱製薬㈱(仮称)
存続会社   田辺製薬(ウェルファーマは非上場のため)
合併比率   田辺1:ウェルファーマ 0.69
大株主   三菱ケミカルホールディングス(過半数、10年維持)
      同社の連結子会社とするが、上場は維持

両社の推移は以下の通り。

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三菱ウェルファーマ(現在、三菱ケミカルホールディングスの完全子会社)については下記参照

  2006/5/22 「医薬各社決算対比と医薬業界の構造改善」 

  2006/6/28 「薬害C型肝炎訴訟 

田辺製薬は、1678年田邊屋五兵衛が大阪土佐堀に「たなべや薬」を看板に薬種問屋として創業したのに始まる。1933年田邊五兵衛商店を株式会社に改組し、1943年田邊(辺)製薬に変更した。

1999年に三菱化学の医薬品部門を分離し、東京田辺製薬と合併して三菱東京製薬となっているが、この東京田辺製薬は1900年代初頭に田邊五兵衛商店から田邊元三郎商店として独立し、その後東京田辺製薬と改組したもの。
資本関係はないが、一時期、田辺と東京田辺間で東日本・西日本の営業地域分けを行っていたこともある。

田辺製薬は2001年9月に、大正製薬との間で、株式移転により両社で共同持株会社を設立して、事業の一体的運営を図り、更に傘下会社の事業統合を推進することとし、「共同株式移転に関する覚書」を締結した。

2002年4月の共同持株会社設立、株式移転比率(大正1:田辺0.55)、社名(大正田辺ファルマグループ㈱)も同時に発表された。

しかし、両社は2001年12月に統合見送りを発表した。
経営統合による相互補完的なメリットと規模の利益は存在するものの、事業再編の方針の相違や、人事・組織体制などの基本的なインフラの相違から、それぞれの会社が持つ特質と優位性を最大限に発揮して株主価値の向上を図ることが難しいとの結論に至ったとした。

原因は主導権争いである。両社長は以下の通り述べている。(日本経済新聞)

田辺:大衆薬は大正に全面的に任せるが、医療用薬の研究開発、販売は田辺主導でという話だった。
大正:すべて任せて大正が多額の研究開発費を出していたら株主責任は果たせない。

大正:持株会社への株式移転比率は大正が田辺の約2倍で、資本の論理が働くのは当然。
田辺:あくまで対等の立場。田辺は大正にのみ込まれないと一貫して主張したし、相手も理解していると思っていた。

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今回、両社は創薬力の更なる強化、海外事業展開の加速化、今後の医療の変化に積極的に対応して事業機会を追求、という共通の目標の実現のため、事業規模の拡大と経営基盤の強化により、国内トップクラスの製薬企業へのステップアップが不可欠であるとの認識で一致し、合併するとしている。

新会社のポジション(*外資系企業を除く、数値は2006年3月期連結)
  ・売上高 国内第5位 (4,078億円)
・営業利益 国内第5位 (638億円)
・研究開発費 国内第5位 (784億円)
・国内医家向製品売上高 第4位 (3,847億円)

国内製薬会社の売上高順位(2005年度 単位:億円)  (大塚は医療関連売上のみ)

1 武田薬品工業  12,122 世界15位
2 第一三共(第一製薬+三共)   9,259    20位
3 アステラス製薬(藤沢薬品+山之内製薬)   8,793    17位
4 エーザイ   6,012    23位
5 大塚製薬    4,863    26位
  三菱ウェルファーマ+田辺製薬   4,077  
6 中外製薬(ロシュ傘下)   3,271    32位
7 大正製薬   2,714  
8 大日本住友製薬(大日本製薬+住友製薬)   2,457  
9 三菱ウェルファーマ   2,362  
10 塩野義製薬   1,963  
11 田辺製薬   1,715  

 (世界順位で第一三共とアステラス製薬の順位が逆転しているのは、レート換算の問題と思われる。)

医薬業界の生き残り競争の中で、欧米の製薬会社はM&Aを続けている。

2006年にも独メルクがスイスのバイオ会社セローノを買収、ベルギーのUCBは独シュワルツ・ファーマを買収した。
本年に入り、Sanofi-Aventis と Bristol-Myersの合併の噂がでている。
 2007/1/31 「Sanofi-Aventis が Bristol-Myersと合併か?

日本のトップの武田薬品も世界では15位にとどまる。今回の合併を機に医薬業界の再編が再始動すると見られている。

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田辺製薬と三菱ウェルファーマは、基本合意書の有効期間中、それぞれが第三者との間で合併等の企業再編行為等に関する協議・交渉等を行ってはならないとの義務を負う。また、三菱ケミカルホールディングスは、両社の合併の実行を著しく困難にせしめる企業再編行為を実行しないとの義務を負う。各社は義務に違反した場合、違約金を支払うと決めている。

2004年にUFJホールディングスが傘下のUFJ信託銀行の大半の業務を住友信託銀行に売却することで合意していたが、UFJグループ自体が三菱東京フィナンシャル・グループと経営統合に向けた交渉に入る方針を固め、住友信託銀行に対しUFJ信託銀行の売却を白紙撤回する意向を伝えた。UFJと三菱東京は合併し三菱UFJフィナンシャル・グループが発足したが、住友信託との間で裁判となり、2006年11月、東京高裁の和解勧告を受け、三菱UFJフィナンシャル・グループが25億円を支払い和解した。
日本の慣行を重視し、違約金条項を入れていなかったのが解決に時間がかかった原因であり、これを参考に違約金条項を入れたと思われる。
 

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なお、三菱ケミカルホールディングスは、他の医薬関係事業について、本年4月1日に下記の2つの事業再編を行う。

1)三菱ケミカルホールディングスは傘下のヘルスケア3社を本年4月1日以降、統合する。

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・三菱化学ビーシーエル:製品臨床検査、治験、食品衛生検査、各種検査サービス事業、ドーピング検査
・三菱化学ヤトロン:製品体外診断用医薬品、体外診断用機器、研究用試薬
・三菱化学安全科学研究所:製品医薬・農薬・食品添加物・化粧品・化学品等の安全性に関わる受託研究

この3社の事業を、それぞれに適用される各種法令等の制約の下で、その継続に支障のない形で統合し、シナジーを早期に実現できる組織運営を検討した結果、事業持株会社形態を採用することが最善であると判断した。

新社グループは、診断検査(診断機器・試薬の製造販売及び臨床検査)と創薬支援(非臨床試験及び治験)を主たる事業とする。
グループ全体の統括機能は新社の本社に集約し、グループの一体的・有機的事業経営を行う。

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2)三菱ケミカルホールディングスは、本年4月1日に、傘下のゾイジーン株式会社の事業の再編を行う。

ゾイジーン(ZOE)は三菱化学がゲノム創薬の分野において創薬資源の開発及びライセンスを行う新会社として設立したもので、2002年1月に営業開始した。

三菱化学生命科学研究所、三菱ウェルファーマ、三菱化学ビーシーエル、三菱化学メディカル、三菱化学安全科学研究所等の持つ基礎研究成果や知的財産、バイオテクノロジーの研究成果及び生命現象理解の知識・知見をベースに、蛋白質の構造解析及びこれに基づく新薬候補化合物並びに創薬のターゲットとなる蛋白の同定等の各種創薬資源の開発及びライセンス事業をグローバルに展開するためのもの。

再編の内容は以下の通り。

1 

ZOEは、蛋白工学の研究事業を、三菱ケミカルホールディングス・グループ内にあるバイオ分析機能と統合し、バイオマーカー探索の研究拠点として個別化医療の実現に向けて、新たにスタートする。これに伴い、ZOEは4月1日付で社名を変更する。

三菱ケミカルホールディングスは、ヘルスケア事業の成長戦略として、個々人の状況に応じた「個別化医療」の実現を戦略課題と位置づけており、ZOEは個々人の薬剤反応性の差の原因となる蛋白質の合成や相互作用解析に関わる独自の研究の実用化に成功してきた。これらの蛋白工学に関わる機能と、グループ内に蓄積されているバイオ分析機能とを統合し、更にインフォマティックスに関する機能を新規に付加することにより、「個別化医療」の実現に資する研究の拠点として新たにスタートする。

2  

化合物の設計及び化学合成に関わる事業は、三菱ウェルファーマへ移管し、同社の創薬研究機能を強化する。

3   

蛋白質構造解析に関わる事業は、三菱化学科学技術研究センターに移管し、創薬研究や三菱化学グループ内のバイオ技術開発に活用する。

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