マリンホース国際カルテル事件

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5日付けの朝日新聞によると、米司法省と公正取引委員会などが今年5月に摘発したマリンホースをめぐる国際的なカルテル事件は、横浜ゴムの米司法省への自主申告によることが分かったという。

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米司法省は5月2日、原油の海上輸送に使うマリンホースの販売で国際的な価格カルテルに関与した疑いがあるとして日欧企業の幹部8人を逮捕したと発表した。

逮捕されたのは、
 英
国に本拠を置くコンサルタント会社  PW Consulting (Oil & Marine) Ltd のオーナー
 英国の
Dunlop Oil & Marine Ltd 2名
 フランスの
Trelleborg Industrie S.A2名
 イタリアの
Parker ITR slr 1名
 イタリアの
Manuli Rubber Industries SpA 1名
 日本のブリヂストンの1名
の合計6社の8名。

少なくとも1999年以降、フロリダ、バンコック、ロンドンなどで何度も会談し、入札のやり方、価格、割当などの協議を行い、決定していたという。議題や議事録も見つかった。

PW Consulting (Oil & Marine) Ltd のオーナーは1社当たり年間5万ドル、合計30万ドルを集め、カルテルを調整していた。

マリンホースは
海上タンカーと陸上の貯蔵基地を結んで原油を移送するもので、全世界の市場規模は150億円強。
需要家はShell、Exxon、Chevronなどの石油会社のほか、米国の国防総省も購入し使用しているため、国民の税金を奪うものとして重要視され、国防総省も捜査に入った。

 司法省発表 http://www.usdoj.gov/atr/public/press_releases/2007/223037.htm

 

司法省の発表を受けて、欧州委員会と日本の公取委も調査に入った。

公取委は
5月7日、ブリヂストンと横浜ゴムに立ち入り検査に入った。(上記逮捕者に横浜ゴムは入っていない)

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朝日新聞によると、司法省は2006年秋、横浜ゴムが船舶用ゴム製品の販売エージェントの米国人を別のカルテル容疑で逮捕し、同社が関与したとする供述を引き出し、同社に対し、本件の訴追を見送る条件としてマリンホース事件について減免制度での自主申告を持ちかけた。

横浜ゴムの自主申告に基づき、司法省は横浜ゴム担当者になりすましてコンサルタントらとやりとりを開始、ヒューストンのホテルで会合を開くことになった。ホテルでの話し合いが終わった直後に、司法省の捜査員らが踏み込み、横浜ゴムの担当者をのぞく参加者を逮捕したという。

横浜ゴムは「捜査中なので何も話せない」としている。

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2007/7/2 ガス用ポリエチレン管・継手に排除措置及び課徴金納付命令 で同事件での自主申告について述べたが、欧米では既に多くの日本の企業がこの適用を受けている。また、摘発された多くの企業のほとんど全てが調査に協力し、司法取引で罰金の減免を受けている。

藤沢薬品はグルコン酸ナトリウムで米国及びEUで摘発されたが、EUでは最初にカルテルの決定的証拠を提出したとして80%という最高の減免を受けている。

武田薬品はビタミン剤カルテルで摘発を受けたが、他の例がないかとの質問(omnibus question)に対して調味料のカルテルについて供述した結果、調味料カルテルでは免責、ビタミン剤カルテルでも法人としての罰金のみで、社員・役員については免責された。

防カビ剤のソルビン酸価格カルテルではダイセル、上野製薬、日本合成の3社が米国及びEUで罰金を支払い、米国では各社の役員が起訴されたが、詳細情報を当局に提出したチッソは全て免責されている。

日本人がカルテル問題で米国で逮捕されたのは初めて。

これまで何人もの人が米国で起訴されているが、日本在住の場合には犯罪人引渡し条約が適用されず、時効の中断の状況のままである。(米国や米国との犯罪人引渡し条約が適用される国に入国すれば逮捕されることとなる)

ただし、
防カビ剤のソルビン酸価格カルテルで起訴されたダイセル、上野製薬、日本合成の3社の役員、社員のうち、ダイセルの社員が出頭して実際に服役している。
  
2006/2/16 独禁法改正 



* バックナンバー、総合目次は 
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

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