トルコの国営石化会社 Petkim 売却で逆転劇

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トルコ政府は2007年7月、国営石化会社Petkem民営化のため株式の51%の入札を実施したが、応札した8社のうち、最高額で入札したカザフスタンとロシアのコンソーシアムTransCentralAsia Petrochemical Holding 2,050百万ドルで落札した。

同社はロシアの投資銀行のTroika Capital Partners、カスピ海油田の開発のために設立された米国の石油会社Transmeridian Exploration 100%子会社の Caspi Neft と、ロシアやカザフの投資家のためにトルコでの投資管理を行っている不動産業のEvrazia のコンソーシアムである。

2007/7/11 カザフスタンのコンソーシアムがトルコの国営石化会社Petkim の51%を取得
    

10月に入り、首相を含む Higher Privatization Council 2,040百万ドルで2位で入札したSocar-Turcas-Injaz joint investment group を売却先に決めた。

変更の理由は明らかにされていないが、入札のあとで、TransCentralAsia Petrochemical Holding の裏にアルメニア系の米国のビジネスマン Ruben Vardanyan がいるという噂が広まり、国民の間に反対の声が沸き起こっていた。

アルメニアとトルコは第1次世界大戦中に発生したとされるオスマン帝国による「アルメニア人虐殺」問題で対立している。

アルメニア側は、1915年から1923年にオスマン帝国が行った「アルメニア人虐殺」で150万人が殺害されたとし、トルコ政府はこれを否定している。

米国下院外交委員会は大統領やトルコ政府の批判を無視し、1010日に27対21の賛成多数で 「ジェノサイド」と認定して非難する決議を採択した。

アルメニア政府はこれを歓迎、トルコ政府は外交委での採択を非難し、本会議での採決をけん制する声明を発表、採択された場合には両国の同盟関係が失われる恐れがあり、「無責任な態度だ」と反発している。

 

今回売却先に決まった Socar-Turcas-Injaz joint investment group アゼルバイジャンの石油会社Socar、カザフスタンのKazmunaigaz 、トルコの石油会社Turcas Petroleum とサウジの Injaz Projects のコンソーシアムである。

Injaz Projects はサウジの3社、Al Muhaideb Group (40%)Al Fozan Group (40% )Amwal Al Khaleej (20%) が所有するコングロマリットで、本件の技術・財務コンサルタントをしており、コンソーシアムに10%の出資をしている。

Socar の社長は今回の決定を受け、トルコとアゼルバイジャンは歴史的なつながりから兄弟国であるだけでなく、多くの分野、特にエネルギー分野で戦略的パートナーであるとし、次のように述べている。

・今回の決定はトルコがアゼルバイジャンを重要なパートナーと見ている証である。
・同社は
Petkim の設備の近代化のため20億ドルを投資する。
・トルコは現在、石油化学製品の需要の
75%を輸入しているが、同社の投資でこれが30%に低下する。
・トルコとアゼルバイジャンの外交政策は同じであり、アルメニア問題へのスタンスは同じだ。
  しかし、今回の決定は、両国が兄弟国で戦略的パートナーであることが理由だ。
・同社には年産
600万トンのリファイナリー建設の計画があり、これにより両国の商業面での関係が深まる。

2006年6月に、アゼルバイジャン共和国バクー市からグルジア共和国トビリシ市を経由し、地中海に面するトルコ共和国ジェイハン市を結ぶ総延長1,768kmのBTCパイプライン」が完成している。伊藤忠商事や国際石油開発などが投資している。

2006/6/7 BTCパイプライン完成  

なお、トルコの最高裁は労働組合から出された Petkim 売却無効の訴えを却下した。
入札手続の瑕疵を理由にしたものだが、このほかに、「国益に反する」理由での無効の訴えも出されている。

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* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
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