公取委、マリンホース国際カルテルで排除命令

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公取委は2月22日、海上のタンカーから陸地の貯蔵施設に石油を移すときに使うマリンホースを巡り国際カルテルを結んでいたとして、独占禁止法違反(不当な取引制限)で英仏伊のメーカー4社とブリヂストンに排除措置命令を出した。
ブリヂストンには課徴金納付命令も出された。

国際カルテルで公取委が外国企業に同命令を出すのは初めて。

ーーー

米司法省は2007年5月2日、原油の海上輸送に使うマリンホースの販売で国際的な価格カルテルに関与した疑いがあるとして日欧企業の幹部8人を逮捕したと発表した。

逮捕されたのは、
 英
国に本拠を置くコンサルタント会社  PW Consulting (Oil & Marine) Ltd のオーナー
 英国の
Dunlop Oil & Marine Ltd 2名
 フランスの
Trelleborg Industrie S.A2名
 イタリアの
Parker ITR slr 1名
 イタリアの
Manuli Rubber Industries SpA 1名
 日本のブリヂストンの1名
の合計6社の8名。

本件は横浜ゴムの米司法省への自主申告により調査が開始された。

公取委も2007年5月7日、ブリヂストンと横浜ゴムに立ち入り検査に入った(EUも)。

    2007/7/9 マリーンホース国際カルテル事件  

その後、逮捕された各社責任者が順次、米国で長期の禁固刑を受けている。(ブリヂストンはまだ決定していない)

    2007/12/18 マリーンホース国際カルテル事件のその後 

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今回公取委は、以下の決定を下した。
横浜ゴムは自主申告をしたため、排除命令、課徴金納付命令を免除された。

  事業者名 本店の所在地 排除措置命令 課徴金額
1 ブリヂストン    ○  238万円
2 Dunlop Oil & Marine Ltd 英国  ○   -
3 Trelleborg Industrie S.A. フランス  ○   -
4 Parker ITR slr イタリア  ○   -
5 Manuli Rubber Industries SpA イタリア  ○   -
6 横浜ゴム    -   -
合  計  5社  238万円

 違反行為:

  日・英・仏・伊の需要家にはそれぞれの国のメーカーが受注予定者となる。
日本とイタリアの場合は2社のうち、いずれかを受注予定者とする。
  それ以外の国の需要家には、予め決めた各社の割合を勘案して、コーディネーターが選定する。
  受注価格は受注予定者が決め、他のメーカーはそうなるよう、協力する。

 排除命令:

5社は違反行為を取り止めている旨を確認し、今後日本での受注では各社が自主的に受注活動を行なうことを取締役で決議する。
  5社はメンバー及び日本の需要家に上記を通知する。
  5社は今後、相互又は他の事業者と共同して、日本の需要家発注分について受注予定者を決定してはならない。

 課徴金納付命令

 ・ブリヂストンは、平成20年5月21日までに、238万円を支払わなければならない。

 

欧州委員会は20071月、電力用ガス絶縁開閉装置で国際カルテルを結んでいたとして日欧10社に7億5千万ユーロの制裁金支払いを命じた。
日本企業は欧州で販売せず、欧州企業は日本で販売しないことも決めていたとし、日本企業は欧州での販売実績はほとんどないが、欧州で応札せず、直接的に欧州での競争を制限したため制裁金が課せられた。(日本メーカーはこれを不服として提訴している。)
欧州委員会のカルテル制裁金は当該事業者の全世界売上高の10%以下となっている。
  
2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金 
    

日本の場合は、日本でのカルテル行為について、日本の売上高を基準に課徴金が科せられる。
英・仏・伊のメーカーは協定に基づき日本では販売していないため、課徴金の対象となっていない。
横浜ゴムは自主申告により、課徴金を免ぜられた。

ーーー

ブリヂストンは2月22日、「このような命令が出されたことを厳粛に受け止めており、役員ならびに社員一同、高い倫理意識でコンプライアンスを重ねて徹底し、信頼の回復に努めたいと考えております。」とし、命令の内容については、これから精査し対応を検討すると発表した。

横浜ゴムは2月22日、自主申告したことを初めて認め、以下の発表を行なった。

弊社は、かねてより独占禁止法の遵守に取り組み、談合やカルテルに関わる事のない様、社内ではコンプライアンス推進室を設けるなど、その排除に努めてまいりました。
 しかしながら、2006年秋、本件に関する社内調査の過程におきまして、当該商品の販売に関するカルテルへの関与が明らかとなりましたので、公正取引委員会に弊社の調査結果をご報告するとともに、課徴金減免制度の適用申請を行いましたので、本日に至るまで公表を差し控えておりました。
 弊社といたしましては、引き続き談合やカルテルへの関与等の独占禁止法違反となる行為の排除はもとより、コンプライアンス遵守の経営の徹底に全社一丸となって取り組んで参りますので、皆様の温かいご理解とご支援を賜ります様、合わせてお願い申し上げます。」

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ブリヂストンは2月12日、マリンホース事業で中南米や東南アジアなどの外国公務員に対する不適切な支払いが少なくとも1億5千万円あったと発表した。
販売を仲介する海外コンサルタントに支払った手数料の上乗せ分が複数国の公務員らに賄賂として渡った可能性があるというもので、不正競争防止法違反(外国公務員への賄賂)にあたる恐れがある。

不正競争防止法
第18条(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)
 
 何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。

同社はマリンホース事業から撤退することを明らかにした。


  

* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

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