BHP Billiton の Rio Tinto 買収、EUが徹底調査を決定

| コメント(0)

2008年5月30日、BHP Billiton European Commission に対し Rio Tinto 買収の事前届出を行なった。

BHP Billiton 2007年11月、Rio Tinto に対して、Rio Tinto の株式1株に対してBHP株3株を与えるという案で、買収提案を行った。
これに対し、
Rio Tinto は買収価額が著しく安すぎるとし、拒否した。

BHP Billiton 本年2月6日、当初の案を修正し、BHP株3.4株で再提案を行なった。

    2008/6/6  BHP BillitonEC Rio Tinto 買収の事前届出

BHPRio Tinto買収には欧州、米国、豪州、カナダ、南アの独禁法当局の承認が必要である。

BHPでは、自発的に日本、中国、その他アジア諸国にも承認を申請するとしている。

日本は鉄鋼原料等の輸入で本買収で大きな影響を受けるが、両社の資産が日本にほとんどないことから、現在の独禁法では規制が行なえない。
仮に公取委が資産の売却等を命じたとしても、これを無視されても何らペナルティを与えられない。単に面子を潰すだけとなる。

ロイターの記事で、元公取委事務総長で英国の法律事務所Freshfields Bruckhaus Deringer の東京オフィスのシニアコンサルタントの上杉秋則弁護士は、「日本の法律は外国と比べ余りにも古く、影響を受ける企業がいるのに日本の当局はコントロールする手段を持たない」と述べている。

公取委事務総長は6月4日の定例会見で、以下の通り述べた。

「引き続き、欧州委員会をはじめ、海外の競争当局と連携をとりつつ、情報収集、実態把握を行い、独占禁止法上の問題点の有無について、検討を進めていきたい。

(現行法では)株式取得については、問題がないかどうかをチェックするために、取得後30日以内の届出を義務付けているだけ。
EU等諸外国と同じように事前届出にしようという改正法案を、今、国会に提出している。」
(独禁法改正案は審議入りも出来ず国会が閉会した。事前届出でも効果は少ないと思われる)

ーーー

米国ではHart-Scott-Rodino Antitrust Improvement Act (1976) に基づく事前通知が必要で、通知の提出の後、待機期間の進行が開始し、米司法省及び連邦取引委員会(FTC)は、①調査活動を開始しない、②限定調査を開始する、ないしは③調査活動を開始する――のいずれかの対応を選択することになる。
待機期間中、当事者は、調査活動等を行っている政府機関の許可を得なければ、取引を完成させることができない。

BHP Billiton 73日、司法当局がレビューを終え(①調査活動を開始しない)、米司法省とFTC待機期間の早期終了を承認したと発表した。
「待機期間の早期終了は買収での重要な一歩だ」としている。

しかし、欧州と豪州の決定が最も重要である。

ーーー

EU74日、徹底調査を開始した。事前調査に1ヶ月かけたが、更に90日間 調査を行なう。
世界最大と世界第二位の鉱山業者の統合には多くの懸念があり、更なる調査が必要としている。

もし欧州か豪州の当局が買収の条件として Rio の事業の大きな部分の売却を求めた場合、買収は破綻する。
逆に買収を認めた場合は、
Rio の株主が提案について投票することとなる。

EU は「買収により、特に鉄鋼、石炭、ウラン、アルミ、鉱物砂の市場で、値上げや需要家側での選択余地が減るという懸念がある」としている。
鉄鋼メーカーは両社の統合が鉄鉱石の
36%のシェアを握ることに懸念している。

EUNeelie Kroes 委員競争政策担当は「最近のコモディティ価格の上昇は需要家業界と世界中の需要家に深刻な影響を与えており、更なる悪影響を与えかねない変化は有害である。EUではこの買収が欧州での競争に悪影響を与えないかどうか、十分検討する」としている。

EUの事前調査の結果は以下の通り。

両社が統合すれば鉄鉱石の供給で大きなシェアを占め、3番手と合わせると鉄鉱石の供給の大きな部分を支配する。
原料炭に関しては、BHP Billitonの支配力が強化され、競合者ははるか後方に置かれる。
   
鉄鉱石と原料炭の市場支配力の強化で、この統合が鉄鋼メーカーの価格交渉力を弱める。
更に、統合会社が投資計画を減らしたり遅らせたりして供給を減らし、価格を上げる恐れがある。
   
ウランは電力会社が原発用に購入するが、ウランの主要供給2社の統合により、供給者の選択余地を減らす懸念がある。
   
アルミと酸化チタンを含有する鉱物砂に関しても、懸念がある。

ーーー

Rio Tinto はさきに中国及び日本の鉄鋼メーカーとの間で豪州産鉄鉱石の大幅値上げで妥結したが、BHP Billiton 74日、宝鋼集団との間で豪州産鉄鉱石について Rio Tinto と同じ水準で決着した。

    2008/4/8 鉄鋼原料価格 急騰  


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメントする

月別 アーカイブ