BHP Billiton によるRio Tinto 買収のその後

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20082月のブログで、中国のアルミ大手、Aluminum Corporation of China Chinalco)と米国のAlcoa The Aluminum Company of Americaが Rio Tintoの株式の12%を141億ドルで取得したと報告した。
正しくは、Rio Tinto は英国と豪州の両本社制で、取得は英国本社のものであり、Rio Tinto 全体への出資比率は9%となる。

取得は、この目的のためにChinalco 100% 出資でシンガポールで設立された特別目的事業体(SPPL)によって行なわれ、Alcoa SPPLが発行する12億ドル分の転換社債を引き受ける。

    2008/2/8  中国アルミとアルコア、Rio Tinto に出資      

 

2008年8月24日、豪州の財務相は中国アルミがRio Tinto の英国本社の株を14.99%まで買収することを承認した。
これにより中国アルミはRio Tinto全体の
11%を取得することとなる。

買収について、豪州政府は次の2つの条件をつけた。
 ・中国アルミは豪州政府の承認なしに、これ以上の取得を行なわない。
 ・持株比率が15%以下である限り、Rio Tinto
に取締役を派遣しない。

中国アルミ社長は、Rio Tinto 株取得は戦略的投資であるとしたが、同時にBHPによる買収に懸念を示した。

日本経済新聞によると、豪州では買収相手の企業の発行済み株式の9割を取得すれば、残りは強制的に買収できることとなっているが、中国アルミの出資比率が11%に高まれば、買収には中国アルミの同意が不可欠になる。

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BHP Billiton によるRio Tinto 買収に関しては、司法省とFTCは、買収の事前通知に対し、調査活動を開始しないことを決めた。

しかし、EU事前調査に1ヶ月かけたが、世界最大と世界第二位の鉱山業者の統合には多くの懸念があるとし、74日、徹底調査を開始した。129日に最終決定を行なう。

 2008/7/5 BHP Billiton Rio Tinto 買収、EUが徹底調査を決定
     

豪州の独禁法当局 Australian Competition and Consumer Commission (ACCC) は本件の101日の正式決定の前に、822日、"statement of issues" を出し、本合併の問題点を明らかにした。

合併が鉄鉱石の取引に対する影響(特に豪州の製鉄メーカーへの影響)が大きいとする一方、銅、金、ウラン、ボーキサイト、アルミに関しては競争上の大きな問題はないとしている。

鉄鉱石でのシェアはブラジルのVale に次いで、 Rio Tinto 2位、BHP 3位で、合併すれば海上取引の35%を押さえることを問題視している。

最終的にシェアが大きくなり過ぎると判断すれば、資産の売却を命じる可能性が強い。
両社はそれぞれ、西オーストラリア州Pilbara地域で鉄鉱石の開発を行なっており、仮にこれの売却が命じられると厄介なこととなる。

BHP BillitonはPilbara地域の鉄鉱山拡張プロジェクトを決め、鉄鉱石の生産能力を129百万t/年から2010年末までに155百万t/年にする。
Rio TintoもPilbaraでの増産を計画中で、140百万tの能力を2008年末までに220百万t/年とする。

BHP は独禁法が施行された中国にも書類を提出している。


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメント(1)

はじめまして。いつも拝見させてもらっております。
本件は以前より自分のブログでも追いかけていたので興味深く見ているところです。
ここにきて、コモディティバブルもやや熱が冷めてきた雰囲気もあります。
こういった中で本件のM&AをBHPがやりぬくのか見ものだなあと思っております。
個人的には、合併したら、やはり発言力はさらに強くなりそうな気がしますが、現状でもRioは防衛のための値上げとも思える強硬な手段を活用(長期契約外の玉を増やすなど)し、結局需要家からすれば同じじゃないかと思ってしまいました(要するに値上がる)。
鉄鉱石よりも銅の方が価格支配力が高まらないかな、と感じています。

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