中国で日本製醤油からトルエン検出

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中国国家品質監督検査検疫総局は10月30日、日本から輸入したしょうゆなどから有害物質トルエンと酢酸エチルが検出されたことが広東省検疫当局の調べで分かったと発表した。

検出されたのはトルエンは0.00064~0.0053ppm、酢酸エチルは0.417~0.537ppm で、輸入業者が既に対象製品を販売店から撤去したという。

北京の日本大使館は31日、問題の商品名とメーカーを公表した。

   ヤマサ醤油 「NH小包日式醤油」
   万城食品  「NH小包わさびペースト」
   キッコーマン 「公務小醤油」

キッコーマンは31日、同社に「公務小醤油」という名前の商品はないとした上で、下記の発表を行なった。

この件につきましては、日本醤油協会よりすでに、「微量であり、人の健康に影響を及ぼすとは考えられない」 との見解が示されております。(下記)
弊社としましても、トルエンおよび酢酸エチルは、通常、しょうゆに含まれていること、検出量が微量であることから、人の健康に影響をおよぼすものではないと考えております。

なお、しょうゆ中に微量のトルエンが含まれていることについては、20年以上前より日本農芸化学会で報告されており 学会での定説とされています。
また、
酢酸エチルは、醸造物中に香気成分として含まれます。酵母によって生成されたエチルアルコールと原料由来、あるいは酢酸菌や乳酸菌によって生成された酢酸から酢酸エチルが生成されます。

日本醤油協会では「いずれも微量であり、人の健康に影響を及ぼすとは考えられません」とし、検出レベルについて以下のように説明している。

上記検出レベルに対する考察
① トルエン
 ○ 日本の水道水の水質管理目標値 0.2mg/L(ppm)以下
 ○ WHO 水質基準ガイドライン値 0.7mg/L(ppm)以下
 上記の0.0053ppmは、水道水に設定された値に比較し十分に低いレベルである。

② 酢酸エチル
 醸造物中の酢酸エチルの濃度(ppm)
   しょうゆ(15)、清酒(12~45)、米焼酎(25)、高粱酒(中国酒)(1280)、茅台酒(中国酒)(1390)、
   ビール(10~20)、赤ワイン(95~174)、白ワイン(46~98)
 上記の0.537ppm は、一般に醸造物中に含まれる量に比較し低いレベルである。

ヤマサ醤油も、「NH小包日式醤油」という商品名の商品は弊社にはありませんとし、キッコーマンと同じ説明をしている。

万城食品では、「検出された量はいずれも微量であり、当社としては人の健康に影響を及ぼすものとは考えておりません」としている。
同社では製造工程ではトルエン・酢酸エチルは一切使用していないが、包装フィルム製造時これらの物が使用されている事は承知しているとし、食品衛生法・食品・添加物の規格基準の何れの数値をも下回っているので、何ら問題ないものと判断するとしている。

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実はこれは厚生労働省の措置に対する報復であった。

厚生労働省は10月7日、以下の発表を行なった。

つぶあんからのトルエン、酢酸エチルの検出について

本日、別紙のとおり、名古屋市において公表されたのでお知らせします。
なお、トルエンと酢酸エチルが検出された製品の同一ロット品については、輸入者が自主回収を行っています。

本事案の発生を踏まえ、厚生労働省としては次の対応をとったところです。
1 当該製造者からのあんについて、本日以降、輸入手続を保留
2 都道府県等に対し、同様の事案があった場合には直ちに報告するよう要請
3 当該品は日本国内において加工されておらず、未開封で流通していたことから、
  中国政府に対し、製造段階における異物混入の有無等について確認を要請

<製品の概要>
1.品 名:つぶあん (賞味期限2009年4月17日)
2.輸 入 者:マルワ食品株式会社(静岡県磐田市宮本218-2)
3.原 産 国:中華人民共和国
4.製 造 所:LANGFANG TORA YA FOODSTUFF CO., LTD.(河北省廊坊市)

5.検査結果

項目 苦情品 苦情品と同一品(1) 苦情品と同一品(2)
トルエン 0.008ppm 0.008ppm 0.010ppm
酢酸エチル 0.16ppm 0.28ppm 0.11ppm

6.検査機関:名古屋市衛生研究所

 

「粒あんを食べてめまいがした」との苦情が保健所に寄せられ、食べ残しを検査した。

同日付の朝日新聞は以下の解説をつけている。

トルエンは、塗料の溶剤などとして使われる。空気中の濃度が高まると、のどや目に刺激を感じるとされる。健康被害が報告された中国製冷凍ギョーザの包装の外側から検出されたことがある。酢酸エチルはトルエンと同様に溶剤として使われ、マニキュアの除光液にも含まれる。口にすると頭痛や眠気を催すほか、意識を失うことがある。

 

実際には、この検査結果は、上記の日本醤油協会の「考察」によると、「いずれも微量であり、人の健康に影響を及ぼすとは考えられない」ものである。

検疫総局は、(それを知った上で?)、日本の報道を引用し、日本でトルエンなどが入った食品を食べた人が体調不良を訴えたと指摘している。

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国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子さんは「食品安全情報blog」http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20081031#p4 で、「これは日本側が先にやった間違いだし、謝った方がいいと思うけど」、とコメントしている。

中西準子さんはホームページの雑感451-2008.11.4「信じられない認識と対応-トルエン」で、以下のように述べている。

これまで、マスコミの過剰報道がしばしば問題になってきた。しかし、厚生労働省がこうではどうしようもない。国際紛争の引き金になりかねない。猛省を望む。そして、もっと勉強してほしい、監視安全課と言うからには。

 


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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