樹脂サッシメーカー5社が防火性能偽装

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国土交通省は1月8日、エクセルシャノン、三協立山アルミ、新日軽、PSJ及び H.R.D. Singapore の5社が、樹脂製窓について、申請した仕様と異なる不正な試験体を使用して建築基準法に基づく性能評価を受け、大臣認定を受けていたこと等が判明したと発表した。

エクセルシャノンが、不正な試験体を使用して性能評価を受け、大臣認定を受けていたこと及び他社と共同で性能評価を受けたものがあることについて、報告したもの。

この報告を受けて調査を行ったところ、5社が、計27種類の防火設備(樹脂製窓)の遮炎性能試験又は準遮炎性能試験において、窓枠等の内部における遮炎材の増量等をした不正な試験体を使用して試験に合格し、性能評価を受けていたことが判明した。

また、これらの不正な試験体を使用して性能評価を受けた計27種類の防火設備(樹脂製窓)について、5社が計80件の大臣認定を受けていた。

各社は、国土交通省が2007年に実施した「防耐火関連の構造方法等の認定に関する実態調査」において、
不正な試験体による性能評価試験を行っていない
大臣認定を受けた仕様とは異なる仕様の防火設備(樹脂製窓)の販売等を行っていない旨、報告していた。

国土交通省は2008年1月8日、「防耐火関連の構造方法等の認定に関する実態調査」結果を発表した。

これまで認定を受けた大臣認定の構造方法、建築材料のすべてについて、認定を受けた企業に調査・報告を依頼したもの。
調査対象企業は1,788社。対象件数は1万3,965件。このうち、1,422社から1万2,771件の報告が寄せられた。

調査により、大臣認定の取得、認定書の使用について不正が行なわれていた疑義があるとの報告は40企業・77件あった。
内訳は「認定申請仕様と異なる試験体によって性能評価試験を受験したことが確かめられたもの」が7件、
「大臣認定の仕様とは異なる仕様の構造方法等の販売等を行なった」が38件、
残り 32件は「今後、ヒアリングを実施予定のもの」だった。

 

国土交通省では、不正な試験体を使用して大臣認定を受けた防火設備(樹脂製窓)については、当該大臣認定を取り消した。

各企業に対し、以下の指示を行った。
原因究明を行い、再発防止策を検討し国土交通省に報告する。
当該建築物について建築基準法の基準への適合性の確認を行い、不適合のものについて改修等の必要な対策を講じる。
上記以外で、販売仕様が認定仕様と異なる製品については、上記と同様の必要な対策又は 販売仕様の性能確認を行う。
各企業が保有する他の大臣認定について、あらためて法適合性の確認を行う。
相談窓口を設置し、適切に対応する。

今後は、社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会・防耐火認定小委員会においてとりまとめた再発防止策を実施する。

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不正があったのは、27種類の樹脂サッシについて各社が2003年2月~08年7月に取得した計80件の認定で、炎にさらされても20分間延焼を防ぐ性能が求められるが、13分程度しかないとみられるという。

約5500棟の建物の窓に使われており、エクセルシャノンが約4100棟と大半で、三協約750棟、H.R.D.約530棟、新日軽約90棟、PSJ 4棟。各社は無償改修する。多くの製品は複数社が共同で開発していた。試験体は、主にエクセルシャノンが製作した。

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エクセルシャノンはトクヤマの樹脂製窓枠事業子会社シャノンが2008年10月にカネカとその子会社の樹脂サッシ事業を吸収合併したもので、トクヤマ 67.38%、カネカ 32.62% となっている。2008年12月に改称。

三協立山アルミは2006年6月に三協アルミニウムと立山アルミニウムが合併してできた。

新日軽は2000年8月に株式交換により日本軽金属の100%子会社となった。

PSJ は2004年11月にシャノン、三協アルミニウム、立山アルミニウム、新日軽がビル用樹脂サッシの開発と供給を目的に均等出資で設立した。

H.R.D. Singapore は木造注文住宅建設事業の一条工務店の関連会社。H.R.D. は Housing Research and Development の略

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トクヤマによると経緯は以下の通り。

1995年 トクヤマが乙種防火戸認定を取得し、翌年 認定仕様と異なる構造の樹脂サッシを販売開始。
2000年 トクヤマの樹脂サッシ事業をシャノンが承継。
2003年 シャノンが準遮炎性能の防火設備認定を取得、認定仕様とは異なる仕様の樹脂サッシの製造販売開始。
2007 国土交通省の「防耐火関連の構造方法等の認定に関する実態調査」依頼に対し、「認定仕様と相違なし」と報告。

構造計算書偽造問題が発覚して大問題になったのが2005年。その10年も前から偽装を隠し続けてきたことになる。

シャノンの歴代社長は不正を知りつつ、公表していなかった。同社の中村辰美社長は「代替品ができるまで公表できなかった」と弁解したが、回収のコスト負担を恐れたことも公表を遅らせた。

同社では、問題となる製品は約5,500 棟(約71,000窓)に販売されており、対象となる建物の特定作業が済み次第、対象製品の不具合の改善を行う。
原因究明と再発防止については、独立した第三者(有識者、弁護士等)で原因究明のための社外調査委員会を構成し、調査委員会の報告を受け、再発防止体制を構築し、公表する。

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樹脂サッシは約半世紀前、ドイツで誕生した。以来、北欧の寒冷地を中心に、欧米の先進諸国での省エネ推進の観点から急速に普及し、2000年にはアメリカで約46%、アイルランドで66%、ドイツで55%が樹脂製となっている。

日本では1975年に発売開始された。
1999年に政府が策定した「次世代省エネルギー基準」で断熱サッシの採用を奨励したことも追い風となり、増加した。

当初は、冬季の凍結によるモルタルや窯業系材料のひび割れ被害が深刻化していた北海道や東北地方といった寒冷地、あるいは塩風による金属系材料の錆びが大きな問題となっていた沿海地域など、限定された範囲内にとどまっていた。

その後、高断熱・高気密機性が買われ、全国に広がりつつある。

塩ビ工業・環境協会(VEC)では樹脂サッシ普及促進委員会を設置し、2003年から普及活動を行っている。
(上のグラフは同委員会のホームページ 
http://www.jmado.jp/main.html から)

VECは活動の重点課題のひとつに「地球温暖化対策に貢献する樹脂サッシ等の普及促進」を挙げている。

環境省は2008年3月、入居している霞が関合同庁舎5号館の4フロアの事務室の窓をすべて二重化し、窓の内側に、樹脂サッシと複層ガラスを組み合わせた断熱・省エネ窓を2年がかりで設置した。工事費は約6,000万円。同省では「省エネ効果は確かに高い。それと外から騒音が入らず、部屋が静かになった」としている。

      付記

塩ビ工業・環境協会は1月9日、下記の声明を発表した。

1. 昨日午後、樹脂サッシメーカー5社が防火製品についてその性能を偽装していたとの発表がありました。誠に遺憾です。
2. 問題を起こした樹脂サッシメーカーには、問題となった製品についての適切な対応を早急に行うこと、また、法令に従った適切な製品を製造・供給することを強く求めます。その上で、環境性能に優れた樹脂サッシの普及を今後とも推進して参りたいと思います。
3. 樹脂サッシは、もともと、その優れた断熱性能と耐久性能故に、欧米では長年にわたり広く使われており、高い信頼性を築いてきております。今後の温暖化対策に 大きな役割が期待されるものであり、また、結露の防止や温熱環境の安定により、住まう人及び住宅そのものにも優しい製品です。


* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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