LyondellBasell のChapter 11 申請の影響

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LyondellBasell 16日、米国事業について破産法 Chapter 11 (民事再生法)の申請を行ったと発表した。

2009/1/7 LyondellBasellChapter 11 申請

Basell 20077月、 Lyondell の全株式を127億ドル(借入金込み 190億ドル)で買収することで合意し、LyondellBasell が誕生したが、世界経済の悪化により化学品の需要が減少、LyondellBasell 借入金負担に耐えられず、260億ドルの債務の整理のため、Chapter 11 を申請したもの。

同社への債権者は債権の90%程度を失うと見られている。

Citigroup 1月16日、2008年第4四半期の業績を発表したが、LyondellBasell 向け債権20億ドルに対し、12億ドルの損失引き当てを行っている。

Royal Bank of Scotland Plc は1月19日、25億ポンド(35億ドル)の債権のうち、10億ポンド(14億ドル)を損失に落とした。
同行は他の欧州銀と分割してオランダ銀ABNアムロを買収したが、アムロが保有していた16億ドルの債権を引き継いだ。

Royal Bank of Scotland 2008年度の最終赤字が最大で280億ポンド(約3兆7千億円)に達するとの見通しを発表している。
英国政府は昨年の金融危機対策で購入した同行の優先株を普通株に転換し、持株比率を58%から70%に引き上げる。

Goldman Sachs Group Inc.は127LyondellBasell Finance Company への融資及びつなぎ融資のうち 850百万ドルを昨年12月に損失に落としたことを明らかにした。

このほか、 UBS(スイス)  Merrill Lynch & Co.(破綻して Bank of America NA が買収)も多額の債権を有している。

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Basell と同様に借入金で事業を拡大してきた Ineos も大変な状況にある。

2008年11月、同社はBarclays Merrill Lynch 主導の銀行団に対し、総額70億ユーロの2つの借入契約を2009年5月末まで免責(金利支払中断)するよう要請、銀行団はこれを受け入れた。

2008/11/19 Ineos の状況悪化 

Standard & Poor's は1月27日、Ineos の企業格付けをCCCに落としたと発表した。Moody'sも同じレベルのCaa2 に落とした。
S&P では4月の銀行との再交渉の結果(利率のアップなど)や第1四半期の損益状況によっては、更なる引き下げもありうるとしている。

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これらの状況は金融機関による融資姿勢に表れており、化学業界で融資を受けられるのは Cash-rich な医薬品メーカーに限られている。

Hexion によるHuntsman 買収は、買収資金を供給する契約を結んでいたCredit Suisse Deutsche Bank が融資を拒否したため破綻した。
このため
Huntsman は両行を訴え、裁判が5月11日に予定されている。

昨年10時点の裁判では、判事は、Hexion/Huntsman の合併会社が支払不能になるとか、借入金を返済できないだろうとかを主張する裁判を銀行が起こすことを禁止するのが妥当であるとした。

しかし、LyondellBasell Ineos が現実に支払不能な状況に陥ったため、新しい裁判では判断が変わる可能性がある。


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