独禁法改正案 閣議決定

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政府は談合やカルテル行為への罰則強化などを盛り込んだ独占禁止法の改正案を2月27日に閣議決定し、今国会に提出する。

2005年の一部改正法の附則第13条において、
「政府は、この法律の施行後2年以内に、新法の施行状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、課徴金に係る制度の在り方、違反行為を排除するために必要な措置を命ずるための手続の在り方、審判手続の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とされている。

この規定を踏まえ、政府は2008年に独占禁止法等の一部を改正する法律案を提出したが、廃案となった。

今回、若干の修正を加え、再提出する。
(株式取得、合併等の届出基準を見直し、個人の罰則強化を追加)

前回も今回も、主に問題になるのは、独禁法違反の行政処分の是非を公取委が自ら判断する審判制度である。

財界はこれに反対しており、経団連は2007年11月の「独禁法改正に向けた提言」で、行政処分に対する不服申立ては地方裁判所に対する取消訴訟の提起により行う仕組みに改めるべきであるとしている。

公取委はあくまで審判制度の維持を主張したが、反対論が強いため、昨年の改正案では付則に、審判手続に係る規定について、全面にわたって見直すものとし、平成20年度中に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるもの」とした。

公取委は今回、審判制度の見直し案として、
・談合・カルテルは裁判所で争い、
・不当廉売などの違反行為は企業の主張を聞いたうえで処分を決める「事前審判」
を併せた制度を提案した。

これに対して、経済界は審判制度の全廃を主張、自民党の独禁法調査会でも「公取委の組織防衛」との批判が上がり、与党内でも調整が付かず、「09年度中に見直す」との付則を設け、先送りすることとなった。

民主党は審判制度の廃止を主張しており、今国会で法案が成立するかどうか不透明。

ーーー

独禁法改正案の主なポイント

〔課徴金制度〕  
   課徴金の適用範囲の拡大
 (追加)
 
排除型私的独占 他の事業者の事業活動を排除することによる私的独占<p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p>

公取委は2月27日、日本音楽著作権協会(JASRAC)に対し、他業者を排除しているとして排除措置命令を出した。

現行では課徴金制度がなく、これが最も重い処分。命令違反は50万円以下の過料。

不当廉売、差別対価、共同の取引拒絶、再販売価格の拘束
(それぞれ同一の違反行為を繰り返した場合)
正当な理由がないのに、競争者と共同して、ある事業者に対し供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限する等の行為
不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもって、商品又は役務を継続して供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
正当な理由がないのに、自己の供給する商品を購入する相手方に対し、その販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させること、その他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束する条件をつけて当該商品を供給する等
優越的地位の濫用 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、継続して取引する相手方に対し当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させる等の行為
・押し付け販売、経済上の利益を提供させる行為(協賛金・従業員派遣)、受領拒否、不当返品等
  これらに対する課徴金(違反行為に係る売上額に対する率)は以下の通り。
    製造業等 小売業  卸売業 
現行 不当な取引制限
 (中小企業)
 10%
 (4%)
 3%
(1.2%)
 2%
(1%)
支配型私的独占  10%  3%  2%
追加 (ア)排除型私的独占   6%  2%  1%
(イ) 不当廉売等
  (繰り返し)
  3%  2%  1%
(ウ)優越的地位の濫用       1%
  主導的事業者に対する課徴金 談合・カルテルの主導的役割を果たした事業者に対する課徴金の割増算定率

   対象:カルテル・入札談合等
   
課徴金:5割増(大企業・製造業等の場合10%⇒15%)

   「主導的役割を果たした事業者」:

単独で又は共同して、当該違反行為をすることを企て、かつ、他の事業者に対し当該違反行為をすること若しくはやめないことを要求し、依頼し、又は唆し、当該違反行為をさせ、又はやめさせなかった者

  課徴金減免制度の拡充
 
課徴金減免制度の拡充

・1事件の減免を3社から5グループに増やす

   現行は最大3社、改正後は最大5社(但し、調査開始後の対象は最大3社) 
     例)調査開始前2社+開始後3社(計5社)
       調査開始前1社+開始後3社(計4社)  

   減額率は①100%、②50%、③~⑤30% (但し、調査開始後は全て 30%)

・子会社を含めグループ会社を1社と数える

一定の要件を満たす場合に、同一企業グループ内の複数の事業者による共同申請を認め、すべての共同申請者に同一の順位を割り当てる。(1社として扱う)   

事業譲渡等が行われた場合 事業を承継した一定の企業に対しても課徴金納付命令
除斥期間の延長 課徴金納付命令等に係る除斥期間(時効)の延長(3年⇒5年)

(参考)

法令等 国税通則法
(過少申告、無申告、不納付)
米国・反トラスト法
(カルテル等)
EU・競争法
(カルテル等)
除斥期間 加算税:5年
重加算税:7年
刑事罰:5年 制裁金:5年
(最長10年)
〔企業合併〕  
  株式取得の事前届出制の導入 企業結合規制の見直し
(1)株式取得の事前届出制の導入等
 ・他の企業結合と同様に事前届出制とする
 ・簡素化
   現行:単体ベースで10%、25%超及び50%超の3段階
   改正:企業グループベースで20%超及び50%超の2段階に簡素化

(2)届出基準の見直し等
 ・株式取得、合併等の届出基準を見直し

  現行 改正
買収会社 会社並びにその直接の国内の親会社及び
子会社の総資産の合計額100億円超等
企業グループの国内売上高の
合計額200億円超
被買収会社 単体総資産100億円超(国内会社の場合) 会社及びその子会社の国内売
上高の合計額50億円超*
                              * 2008年改正案では 30億円超

基準以下の届け出は不要で、届け出件数は07年度の1284件から、「半数以下に減る見通し」(公取委)で、審査期間の短縮化も見込まれる。

 ・外国会社についても国内会社と同様の届出基準を適用
 ・いわゆる叔父甥会社間の合併等同一企業結合集団内の企業再編について、届出を免除

〔個人への罰則〕  
  強化 不当な取引制限等の罪に対する懲役刑の引上げ(3年から5年に引き上げ)

他の経済関係法令等での自然人に対する懲役刑等の上限

  金融商品取引法 特許法 不正競争防止法 米・反トラスト法
(カルテル等)
加・競争法
(カルテル等)
インサイダー
取引等
風説の
流布等
みなし
侵害
侵害 不正競争 営業秘密の
 詐取等
懲役等  5年  10年  5年  10年  5年  10年  10年  5年

 


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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