太陽光発電に関する新たな買取制度の創設へ

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二階経済産業大臣は2月24日の閣議後の大臣記者会見で、太陽光発電に関する新たな買取制度の新設について次の通り述べた。

太陽光発電の導入を抜本的に強化することは、国会でも各党からも積極的な意見もたくさん聞いている。
昨日総理からの指示で、「新たな成長のシナリオ」において、これが目玉となり得るようなものを考えて欲しいということであった。
太陽光発電は、ここ3年ないし5年が価格競争力の強化を図る正念場であろうという判断をしている。
これまでの政策に加えて、新たな制度を創設して、日本独自の体系を構築することとした。

新しい制度は、電気を使っている人の太陽光発電導入が促進できるように、また、これまで努力をしてきた人にも評価をしてもらえるような、電気事業者が
10年程度にわたり、(当初は)現在の2倍程度の価格で買い取る仕組みを考えている。

国民の全員参加型の制度をつくり、負担については国民にも広く理解、協力をお願いする。

電気事業連合会の森会長に考えを伝え、新たな買い取り制度という国の施策に対し、協力するとの意見をもらった。

事務当局で電気事業業界の考え等を十分に聞き、積極的な理解、協力を得られるようにしたい。

事務方には、今国会に提出予定の「エネルギー供給構造高度化法案」の法令面での手当てを含め、具体的な制度設計に向けて、各方面との調整を開始するよう指示した。

買い取り対象は、太陽光発電設備を設置している家庭のほか、事業会社、学校などで発電しても使い切れなかった余剰分となる。

これまで電力会社がサービス扱いで、家庭用で1キロワット時あたり24円程度で買い取りにあたってきたが、これを義務化したうえで価格も2倍程度に引き上げる。買い取り期間は10年程度を想定している。 

電力会社としてはコスト増になるため、電気料金に転嫁される。(最大で月100円程度とされている)

制度の詳細はこれから検討するが、電力会社の負担分を一般の電気料金への上乗せでカバーするという点で、欧州を中心に広がっている「Feed-in TariffsFIT)」制度と基本的に同じである。

経産省では今国会中に法案を提出し2010年にも実施する方針で、さらに「少なくとも予算がついている2010年度末までは家庭向け太陽光発電システムの設置補助金制度と併用する」(経産省)としている。

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ドイツでは2000年2月に再生可能エネルギー法(EEG:Erneuerbare-Energien-Gesetz: Renewable Energy Law) が成立した。
総電力供給における再生可能エネルギーの割合を2010年までに12.5%以上、2020 年までに20%以上にすると定められている。(2004年改正)

EEGでは風力発電、太陽光発電、バイオマス発電など、再生可能エネルギーによる電力を20年間、通常の電力料金よりも高い固定価格で買い取ることを、発電業者と送電業者に義務づけている。
電力事業者は、再生可能エネルギー電力を化石燃料の電力よりも優先して買い取る義務がある。(余剰分ではなく全量)
再生可能エネルギー電力に対する固定価格買取補償は、
Feed-in-Tariffs と呼ばれる。

2004年の改正で、太陽光発電からの電力の買取価格を大幅に引き上げた。(2000年は1kWhあたり50.62ユーロ・セント)
規模別の買取価格が導入され、買取規模の上限100kWも撤廃された。(単位:ユーロ・セント/kWh)

   <30kW  30kW-100kW  100kW< 期間  
建物
高速道路防音壁
 57.4セント  54.6セント  54.0セント 20年  
ファサード  62.4セント  59.6セント  59.0セント 20年  
その他         45.7セント 20年 一定条件

ファサードは道路に面した部分(その建物の一番の「顔」となる部分であるため価格差をつけている)

なお、その他の再生可能エネルギーでの電力買取価格は次の通り。

水力 3.70~9.65セント
ゴミ処理ガス等 6.65~9.67セント
バイオマス 3.9~17.5セント
風力 5.5~9.1セント(沖合風力を優遇)
地熱 7.16~15.0セント

2004年の太陽光発電の買取価格は、当時の家庭用電力料金の3倍となっている。

EEG法の買取価格は、2002年~2008年に毎年5%、2009年からは、年8~10%で低下する。
運転を開始した年の価格で20年間、買い取られるため、早く太陽光発電を設置するほど、多くの売電収入を得ることができる。

このためドイツの太陽光発電は急速に普及した。2007年には日本の5倍以上にあたる1100MWを設置した。

EPIA(欧州太陽光発電産業協会)は、ドイツの回収年数を8~21年と推計している。
仮に回収期間が10年とすると、買取期間の残り10年は売電分がそのまま利益となる。

現在ではイタリア、ポルトガル、スペイン、フランス、ギリシャ、オーストリアなど、欧州各国がFIT制度を導入している。

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2月26日に東大サステイナビリティ学連携研究機構主催でエネルギー持続性フォーラムが開催された。

席上、産業界からは温暖化対策について、十分な情報公開を行い、企業や家計の負担についても説明し、合意を得るよう努力すべきだとの主張が行われたが、今回の買取制度の新設についても、太陽光発電を導入しない家庭が電気代の値上がりの形で負担することになることを説明し、合意を得るべきだとのコメントがなされた。

経産省には「高額な太陽光発電システムを買えるのは金持ちだけ。なぜ、われわれが負担しなければいけないのか」などの苦情が多数寄せられているという。

インターネットで調べると、中川雅治参院議員の「活動報告」にドイツの例が載っている。   

電力会社が太陽光発電を買い取ることによるコスト増は一般の電力消費者の料金に転嫁されることになっています。

この点について、我々一行はマッハニック事務次官に対して産業界、一般の国民はどのように受け止めているのか尋ねたところ、マッハニック事務次官は「産業界は短期的には価格転嫁による電力料金の上昇には反対であるが、長期的には国の方針を受け入れている。ドイツの一般国民は、再生可能エネルギー拡大の必要性を十分に理解しており、不満の声は特に出ていない。」と述べました。

別資料によると、2007年のドイツの標準世帯がEEG法のために負担する金額(太陽光発電だけでなく、風力発電、バイオマス発電、地熱発電など含める)は、1カ月 2.94ユーロで、家庭の電気料金の4.9%にあたるという。

日本のやり方で負担がどうなるのか、なぜ必要なのか、十分な説明が必要だろう。


* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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