クウェート、アルズール製油所計画中止

| コメント(0)

クウェート国営石油(KNPC)は3月20日、150億ドル規模のアルズール製油所建設プロジェクトを中止したと正式に発表した。
閣議の決定によるもので、既に関係企業に通知した。
<p><p>HTML clipboard</p></p>
日揮は21日、同国から発注取り消しの通知を受けたことを明らかにした。韓国各企業もこれを認めている。

計画は国内の電力需要増加に対応すべく、クウェート市の南85kmの Al-Zour 地区に日産615千バレルの製油所を建設するもので、当初予算は63億ドルであったが、現在の予算は150億ドルに膨れ上がっている。20125稼動を予定していた。 

クウェートの原油生産量は現在、日産 255バレルで、3つの製油所に合計 930千バレルの精製能力を持っており、本計画の完成後は、200千バレルのShuaiba 製油所を停止する予定だった。

KNPCは工事を5つに分け、そのうち4つを日韓の企業に、用役・付随設備をFluorに発注していた。

パッケージ 発注先 予算
原油蒸留設備(日産 205千トンx 3基)、
常圧残渣油脱硫装置
(日産 330バレル)など
日揮及び韓国 GS エンジニアリング 40億ドル
水素設備 韓国 SKエンジニアリング 20億ドル
用役、付随設備 Fluor 21億ドル
タンク 韓国 大林産業 11.84億ドル
海上設備 韓国 現代エンジニアリング 11.2億ドル

日揮は昨年5月13日、韓国のGS Engineering & Construction社と共同でKNPCから、常圧蒸留装置、常圧残渣油脱硫装置など製油所の中核設備を含むパッケージ1の発注内示書を受領したと発表した。
約40億米ドルのうち日揮受注分は2,000億円以上で、同社は常圧残渣油脱硫装置、残渣油冷却設備、オフガス回収設備などを担当する。

2008/5/22 中東で2つの大型製油所計画

ーーー

この問題の根は深い。

クウェートは1961年の独立後、1962年に近代憲法が制定され、翌1963年に初の国民議会議員選挙により国民議会が開催された。
議会と政府の対立が深刻化、1976年から5年間と1986年から6年間の2回停止されている。

1992年の議会再開後も、首長一族がおさえる政府と反対派が牛耳る議会の対立は続き、2008年3月に首長が議会を解散し、5月に議会選挙を実施した。

議会はイスラム派が中心で、議員の一部は資源の国有化を主張、ダウなどとの外資との共同事業を進める親西欧派の政府を批判している。

昨年12月1日、ダウとクウェートの Petrochemicals Industries Co. PIC)は、50/50の合弁会社 K-Dow Petrochemicals の設立契約と付随契約に調印したと発表した。

これに対して、クウェートの国会の会派 Popular Action Bloc の議員が問題視し、反対運動を展開した。

設立契約ではPICは持分取得で75億ドルを支払うこととなっているが、反対派は、グローバルな経営危機により、ダウの市場価値は昨年の510億ドルから170億ドルに下落しており、対象となる K-Dow Petrochemicals の事業の価値も低下しているとし、この取引は国の資金の浪費であると主張する。

アルズール製油所建設計画についても取り消しを要求、K-Dow Petrochemicals や新製油所計画のような大規模プロジェクトについては、十分なFSを実施しprofessionalism)、すべての情報を公開(transparency)すべきだと主張した。

「首相を問い詰め、責任を取らす」としており、正式発足の1月1日までに契約を取り消すことを要求した。

昨年12月28日、クウェートの最高石油評議会は、1月1日発足予定の K-Dow Petrochemicals 設立承認を取り消し、ダウに連絡した。

この結果、ダウはPICからの入金で賄うはずであったRohm & Haas 買収で苦悩することとなった。

その後もクウェートの議員はダウが賄賂を払ったのでないかと騒ぎ、クウェート国会は1月27日、ダウJVや製油所建設にからみ、石油会社の役員による不当利得行為やあらゆる形でのコミッションの受取りの疑いについて調査パネルを設置することを決めている。

議会の野党勢力が求めたナセル首相喚問をめぐる対立で、ナセル首相は3月16日、内閣総辞職の意向をサバハ首長に伝え、首長は18日、国民議会(定数50、任期4年)を解散、2カ月以内に総選挙を実施することになった。

ナセル首相が2006年2月に就任して以来、総辞職は4回目で、昨年11月に総辞職し、首長による首相再指名を受け新内閣を発足させたばかりだった。
ナセル首相(
Sheikh Nasser al-Mohammad al-Sabah)はサバハ首長(Emir Sheikh Sabah al-Ahmad al-Sabah)の甥。次期首相は首長の弟のCrown Prince Sheikh Nawaf al-Ahmad al-Sabah が噂されている。

政府と議会の対立が続くのは、経済不況の回復を妨げるのではないかと懸念されている。

 


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメントする

月別 アーカイブ