日本ポリスチレン 2009年9月末に操業停止、解散へ

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三井化学と住友化学は4月2日、両社の共同出資会社である「日本ポリスチレン(JPS)」を解散し、ポリスチレン事業から撤退することを決めたと発表した。本年9月末を目途に大阪と千葉の工場の操業を停止し、その後解散する。

今後ますます厳しさを増す事業環境下においては、中長期にわたって安定的に収益を確保することは困難であると判断した。

同社の損益は2004年3月期以降、昨年までは黒字であった。
                      単位:百万円
   売上高 営業損益 経常損益 当期損益
07/3  23,443   557   531   224
08/3  24,248   919   902   675

日本ポリスチレンは三井化学(旧三井東圧)と住友化学の50/50JVとして1997年8月に設立され、199710月に営業開始した。 (同じ 1997年10月に三井化学が誕生)

三井東圧は宇部にSMプラントを持ち、大阪工業所に年産 133千トンの生産設備(GP,HI各2系列)を保有していたほか、サンスチレン(電気化学と三井東圧の合弁会社)から年間17千トンのPSを引き取っており、実質的には年産150千トンの生産設備を保有していた。
一体化に伴い、サンスチレンの株式は電気化学に譲渡した。

なお、三井化学は2004年1月、宇部のSMプラントを太陽石油に譲渡した。

住友化学は、昭和電工とのJV・日本ポリスチレン工業(
NPSのプラントが停止、同社から離脱したが、千葉に独自に建設した92千トンの設備(GP、HI各1系列)を保有していた。

現在の能力は大阪が62千トン、千葉が100千トンで、合計162千トンとなっている。

日本のポリスチレン業界は再編が進み、現在は
・PSジャパン(
旭化成  45%三菱化学 27.5%出光石油化学 27.5%)
・東洋スチレン(電気化学 50%
新日鉄化学 35%ダイセル化学 15%)、
・JPS

DIC(旧 大日本インキ化学)
4社体制となっているが、JPSの解散で3社体制となる。

2004年6月、PSジャパンの3社と大日本インキ化学(現 DIC)はポリスチレン事業を再編・統合することに基本合意したと発表した。DICのPS事業をPSジャパンに営業譲渡し、出資比率を旭化成 40%、三菱化学 20%、出光興産 20%、DIC 20% とするもの。

しかし、これに関しての公取委との交渉は難航し、予定の2004年10月の統合は延期され、2005年4月、各社は公取委の「競争を実質的に制限する恐れがある」との指摘を受け、基本合意を解消した。

この公取委判断に対する批判: 
  
2006/02/20  競争政策研究会の「企業結合審査における改革の進展状況と今後の課題」

 

PS業界の再編の推移は以下の通り。

PS業界の再編については 2006/10/7 日本のPS業界の変遷 

 

工場別能力は以下の通り (2007/12/末 単位:千トン/年)

会社名 工場 能力 備考
PSジャパン
旭化成・千葉   207 旭化成      45%
三菱化学    27.5%
出光石油化学 27.5%
三菱化学・四日市    85
旭化成・水島   108
出光・千葉    45
合計   445
DIC 四日市   131 (旧 大日本インキ化学)
東洋スチレン 電気化学・千葉    87 電気化学    50%
新日鉄化学  35%
ダイセル化学 15%
新日鉄化学・君津   138
ダイセル化学・姫路    53
合計   278
日本ポリスチレン 住友化学・千葉   100 住友化学   50%
三井化学   50%
三井化学・大阪    62
合計   162
合計    1,016 JPS撤退後は854

PS業界は2つの点で他のレジン業界と異なっている。

第一は「需要に合わせた能力」で、PSジャパンの前身のA&Mスチレンの発足時に親会社負担で老朽設備を廃棄した。
東洋スチレン発足時には電気化学が、PSジャパン発足時には出光石化が設備を廃棄している。

第二は儲からない輸出をやめたことで、2001年2月に中国がPSのダンピング調査を開始、同年12月には「損害なし」として調査が終結したが、業界では2002年頃から輸出を減らし、現在では月2千トン弱となっている。

2007年の能力が1,016千トン、内需が862千トン、輸出が44千トン、内需計906千トンとなっている。

この余剰能力がないことが、逆にPSジャパンとDICの統合時に公取委から「供給余力がない中で一層高度な寡占市場となる」とされ、不承認の理由の一つとされた。

2008年下期から内需が前年比で大きく減少、本年に入っても更に減少が続いている。

 
  2007 2008
内需   862   768
輸出   44   37
合計   906   806
能力 .1,016  

石化業界では2000年頃にようやく「選択と集中の時代」に入り、三菱化学の四日市エチレン停止や、三井と住友の合併(のちに破談)、塩ビ各社の撤退、ポリオレフィン統合会社の再再編などが相次いだ。

その後、中国バブル(と原油価格高騰化での値上げ)で石化は一転して儲かる事業となり、この動きは止まった。

今回のグローバルな経済危機の中、再び「選択と集中」が動きだしたようだ。

昨年11月には三菱化学がABS事業から撤退することを決定、ABSの統合会社テクノポリマーJSRの100%子会社とすることを発表している。

2008/11/28 三菱化学、ABS事業から撤退

 


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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