ベビーパウダーから発ガン性物質、韓国と中国で大問題に

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韓国食品医薬品安全庁(食薬庁)は4月1日、徳山(トクサン)薬品工業が、ベビーパウダーを製造する一部のメーカーに発ガン性物質のアスベスト(石綿)が含まれたタルクを供給したと発表した。

食薬庁はその後、徳山薬品工業が原料を供給したと確認された会社が304社で、うち約100社は製薬会社、残りは医療機器のメーカーや病院・医院であることを明らかにした。

食薬庁はまた、国内でタルクの原料を製造・輸入するすべてのメーカーを調べたところ、徳山薬品工業のほか7社の原料からアスベストが追加で検出されたこと明らかにした。

タルクはアスベストを含有している蛇紋岩とともに地中に埋まっているため、自然状態でアスベストを含有するケースが多いといわれている。

トクサン薬品工業は国内タルク需要の20%以上を輸入している。

食薬庁は6日、アスベストに汚染されたタルク成分を原料として作った化粧品に対し、販売禁止の措置を取った。

タルクはベビーパウダーやおしろいなど粉状の化粧品に使われ、医薬品の製造過程でも医薬品がお互いにくっ付かないようにするためにも使われる。

全体の原料でタルクが占める割合はベビーパウダーが70~90%、フェイスパウダーが40~50%に上る。薬品に入っているタルクの量は錠剤の重さの1%ぐらいでごく微量。

付記

医薬品については当初は含有量が少ないため問題ないという意見が強かったが、その後食品医薬品安全庁がアスベストを含むタルクを使った製薬メーカー120社の医薬品1122品目を販売禁止したため、製薬業界が反発している。

最終製品からアスベストが検出されたかどうかを確認せず、含まれている可能性があるというだけでリストを発表した。製薬大手では自社製品をDAの基準に合わせ自主調査したとこ ろ、アスベストは全く検出されなかったとし、検査もせずに発表し、製薬メーカー各社のイメージを低下させたと批判している。

世界90ヵ国以上で使われている乳首・哺乳びんのメーカーのドイツのNUK(ヌーク)のブランドでベビーパウダーをライセンス生産しているボリョンメディアンス(Boryung Medience) も、製品が汚染されていることが分かり、「24時間相談センターを稼動し、石綿が検出されていない製品に交換するか、購買金額の全額を返している」としている。

しかし、一部メーカーはきちんとリコールを行わないか責任を回避するなど、不真面目な態度で一貫し、消費者から批判を受けている。特に、製造メーカーと販売会社が異なる場合は責任を擦り付け合っているため、消費者の混乱がさらに深まっている。被害を受けた消費者らの集団訴訟の動きも本格化している。

一方、有名化粧品会社では、原料のタルクをアスベストの規制が厳しいアメリカや日本から輸入しているため、問題なしとしている。

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付記

食品医薬品安全庁は4月3日、タルク基準を改正して、アスベスト基準の他に鉄分の含有量基準試験法を新しく定め、タルク鉄分基準0.25%とした。

日本産タルクの需要が高まっているなかで、最近輸入された日本産タルクが鉄分含有量が0.29%で非適合判定を受け、需要家が混乱している。

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韓国でNUKブランドのベビーパウダーから発ガン性物質が出たとの報道を受け、中国国家質量監督検験検疫総局は44日、蘇州徳宝嬰童用品有限公司(Suzhou Debao Baby Supplies )の蘇州新興保健品工場に立ち入り検査を行い、加工済みのNUKブランドのベビーパウダー40キロを現場で押収した。製品は市場から回収された。

同社は2008年3月以降、蘇州市シルク輸出入公司を通じて韓国のBoryung Medienceから5回にわたってベビーパウダーの半製品計11.6トンを輸入し、蘇州新興保健品工場で加工を行い、NUKブランドで国内で販売していた。

中国では昨年、汚染ミルク問題が起こったばかりであり、消費者、特に若い母親の間に不安が高まっている。

2008/9/17 中国で粉ミルク汚染

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NUKはフランスの自動車部品などゴムやプラスチック製品のコングロマリットHutchinson Worldwide のドイツ子会社 MAPA GmbH のブランドで、乳首・哺乳びんは世界90ヵ国以上で使われている。

今回の報道を受け、同社は以下の声明を発表した。

我々はこれまでベビーパウダーを製造販売したことはない。
我々は50
以上にわたり、乳首や哺乳瓶などのベビー製品を製造してきたが、これらは我々の工場で開発・製造され、厳重なチャックを受けている。我々の全ての製品は安全です。

例外的に特定のメーカーにNUKブランドでライセンス生産することを認めている。
韓国の
BORYUNG MEDIENCE はその一つで、クリームやパウダーなどのベビー製品を扱っている。
ライセンシーは製品の製造販売に唯一 責任を持ち、我々はライセンサーとして、製品の処方の開示と、規則やルールに完全に合致することの保証を求めている。

BORYUNG MEDIENCE は過去20年間、全く問題がなかった。

現在、韓国の当局とライセンシーに連絡をとっている。

BORYUNG MEDIENCEのこの製品はドイツやEU、(韓国と中国以外の)他の諸国では販売されていない。

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日本では労働安全衛生法施行令等の一部改正により、2006年9月1日から、石綿をその重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物の製造、輸入、譲渡、提供又は使用が禁止されている。

しかし、その後、石綿をその重量の0.1%を超えて含有する粉状のタルクが製造されている可能性があるとの情報を受け、厚生労働省が同年10月、タルクの製造を行っている33事業場に対し、緊急調査を行い、その結果、1事業場で石綿を含有するタルクが製造されていたことが判明した。

この結果を受け、厚生労働省では都道府県労働局に対し、関係事業者に対して指導を徹底するよう指示するとともに、関係事業者団体に対しても、法令の遵守の徹底について要請した。


なお、ベビーパウダーについては1987年に原料のタルクにアスベストが不純物として微量混入していたとして社会問題になった。
1987年11月に当時の厚生省が「ベビーパウダーに用いられるタルク中のアスベスト試験法」を公表している。


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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