昭和シェル石油、太陽電池事業に 1600億円投資

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昭和シェル石油は2010-14年度の5年間で太陽電池事業に約1600億円を投資する。工場新設などで期間中に生産能力を現在の8万キロワットから100万キロワットに増やす計画。

同社は5月26日、中期経営ビジョン「EPOCH 2010 ~変化に克ち、未来を拓く~」の概要を発表した。

国内での石油製品需要の漸減、海外市場での新規輸出型製油所の出現による国際競争の激化と、低炭素社会への動きという事業環境の変化を考慮して策定した。

それによると、中期経営目標・計画として2014年度にCCS ベースの経常利益目標1,000 億円とし、そのうち石油事業500 億円、太陽電池事業500 億円としている。

CCS ベース(Current cost of supply) とは棚卸資産の影響を除いたベースで、
2007年の経常損益は443億円
2008年は457億円となっている。
現在の経常損益を2倍にし、それを太陽電池で増やすという野心的な計画である。

中期経営ビジョンの柱は4つ。
 ① 石油事業の収益力強化

調達・製造・供給では、サウジアラムコ(同社に15%出資)からの最適な原油調達、シェルグループのトレーディングネットワークを活用した機動的な輸出、製油所の最適操業を通じてアジアトップレベルのコスト競争力の確立を目指す。

 ② 太陽電池事業の展開

グローバルシェア10%の獲得を目指す。

 ③ エネルギー&ホームソリューション事業の展開

石油製品、太陽電池に加え、東京ガスと共同で建設中の扇島パワーステーションで発電される電力を中核電源とした電力事業の確立、燃料転換を志向される需要家様のニーズに応えるLNGの供給拡大などを通じ、総合的なエネルギーソリューションの提供を目指す。

 ④ 成長の芽の育成

燃料電池、バイオ燃料、電気自動車関連、GTL燃料などの次世代エネルギーの技術開発にも取り組む。

 

太陽電池事業については、同社はシリコンを使わない「化合物型」の一種で、銅(Copper)、インジウム(Indium)、セレン(Selenium)を原料とする「CIS太陽電池」の商業生産を宮崎県内で手掛けている。

CIS太陽電池の特長は以下の4点。
1) 従来型の結晶シリコン系太陽電池とは異なる全く新しい構造の薄膜化合物系太陽電池。
2) シリコンを使用しないので、結晶系で危惧されている原料不足問題に影響されない。
3) 鉛やカドミウム(Cd)などの物質を使用していない環境対応型商品。
4) 外観は結晶系とは異なり、黒一色の落ち着いたデザイン。

現在、100%子会社である昭和シェルソーラーのCIS太陽電池宮崎第1プラント(年産能力20MW)が稼動しており、第2プラント(60MW)が本年4月22日に竣工式を行った。

同社は、既存80MWの能力に対し、2011年に年産1,000MW(1GW)規模の生産能力達成に向けて検討を行っている。

同社は昨年7月、CIS太陽電池技術開発の強化を目的として、厚木にリサーチセンターを設立するとともに、㈱アルバックと量産技術に関する共同開発を開始することを決定した。

昭和シェルが世界に先駆けて確立した独自のCIS太陽電池製造技術とアルバックがこれまで半導体、フラットパネルディスプレイで培ってきた真空装置技術を融合させることで、より生産能力の高い製造装置の開発を期待している。

本年4月、同社と日立製作所は、宮崎県にある日立のプラズマパネル工場を昭和シェルが買収することで両社が交渉に入ったことを明らかにした。日立はパナソニックからの調達に切り替えた。

昭和シェルは同工場を買収後、太陽光発電パネルの生産工場に転用する。

新井純社長は「太陽電池で世界シェア1割をめざし、石油と並ぶ中核事業に育成する」としている。

付記

昭和シェル石油は6月24日、15%の大株主であるサウジアラムコと、サウジアラビア王国内において太陽光を活用した小規模分散型発電事業の可能性の調査を開始することに合意したと発表した。

太陽光発電のパイロットプラントを建設し小規模独立型電力系統(マイクログリッド)への繋ぎ込みなどの技術検討を行い、この結果を受けて同国内での本格的な事業化へ移行する計画。

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新日本石油も、総合エネルギープロバイダーとして燃料電池、太陽電池、蓄電池等新エネルギー関連事業を次期事業の柱の一つと位置づけている。

ENEOSはエネルギーに責任を持ちたいと思っています。だからこそ、有限なエネルギーである石油だけでなく、無限で再生可能なエネルギーである太陽光にも取り組む-
総合エネルギー企業として当然の責務と考えています。」

新日本石油と三洋電機は、本年1月23日付で50/50の出資で薄膜太陽電池合弁会社「三洋ENEOSソーラー」を設立した。

新日本石油は薄膜シリコン太陽電池を安定調達し、国内大規模発電や公共産業向けの用途開拓ならびに住宅用途への投入を推進したいと考えていた。

三洋電機は、現在世界最高レベルのセル変換効率を実現するHIT太陽電池(結晶シリコン基板とアモルファスシリコン薄膜を用いて形成したハイブリッド型の太陽電池)を製造販売しているが、さらに薄膜シリコン太陽電池の技術開発も進めてきた。

三洋はHIT太陽電池に関しては今後とも単独での事業拡大を推進するが、薄膜太陽電池に関しては、新日本石油との共同出資会社設立を決めたもの。

新会社は、三洋電機のHIT太陽電池の要素技術や薄膜太陽電池の基礎技術、新日本石油の石油精製やガス原材料技術を強みとし、加えて新日本石油が持つ中東産油国との強い信頼関係を引き継ぐことで、早期の事業化および高性能な薄膜太陽電池の供給を進める。

新会社は、当初80MW規模で2010年度内の生産(三洋の岐阜事業所)・販売を開始した後、順次生産規模の拡大を図り、国内外を合わせ2015年度に1GW規模、2020年度には2GW規模の生産・販売を目指す。

なお、パナソニックが三洋電機を子会社化することが決まったが、パナソニックは2002年に住宅向け太陽光発電システムから撤退し、同社の弱点となっている。
このため、三洋が得意とする太陽光発電と充電池の両事業を合わせ、「五つ目の戦略事業」と位置づけている。

パナソニックの戦略事業
 デジタルAV事業-薄型テレビ事業
 生活快適実現事業:「エコライフ」「セキュリティ」「照明」「ヘルスケア」
 デバイス事業
 カーエレクトロニクス事業

 


* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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