注目会社 2009年3月決算-2

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損益の変動の大きな会社の決算を順次分析する。

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JSR

これまで会社を支えてきた多角化事業が大幅減益となった。

多角化事業は売上高 1,464億円で、うち、半導体材料が505億円、フタットパネル・ディスプレイ材料が592億円となっている。
下期はこれらの営業損益がほとんどゼロにまで落ち込んだ。

連結決算                        単位:百万円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  406,967 60,010 56,063 36,994 16.0 16.0
09/3  352,502 30,347  31,111 13,981 16.0 16.0
増減   -54,465  -29,663 -24,952  -23,013 - -
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減  2009年
上期 下期
エラストマー  112   80 -31   60  20
エマルジョン   15   5   -10   -1   6
合成樹脂   30   13   -17   13   0
多角化事業  443  205 -238 190  15
合計  600  303  -297  262  41

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カネカ

化成品(塩ビ)、機能性樹脂(MBSほか)、エレクトロニクス(超耐熱性ポリイミドフィルムや液晶関連製品、太陽電池)、合成繊維が大幅減益となった。
太陽電池の減収減益は円高の影響が大きいとしている。

連結決算                     単位:百万円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/3  502,968 35,745   33,866 18,817 8.0 8.0
09/3  449,585 7,604   5,844 -1,850 8.0 8.0
増減   -53,383  -28,141  -28,022  -20,667 - -
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減  2009年
上期 下期
化成品   52   -5   -56   18 -23
機能性樹脂  120   30   -90   37 -7
発泡樹脂製品   -1   13   14 -1 14
食品   28   38    9 9 29
ライフサイエンス   53   59    6 34 25
エレクトロニクス   91   -9  -100 20 -29
合成繊維   66   12   -54 17 -5
全社  -52  -62   -10 -32 -31
合計  357   76  -281 102 26

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出光興産

石油製品は、上期はアジアの需要増を背景として製品輸出マージンが好調に推移し、夏場以降は原油価格の下落によりコストが大幅に低下して収益が向上、前年の営業損失から大幅な収益改善となった。

しかし、石油化学製品は下期に入り、需要減少、売価の下落で大きな赤字となった。

同社はこれまで棚卸資産評価を年度別後入先出法を採用していたが、当期より、四半期別に変更した。
また、当年度より適用される「棚卸資産の評価に関する会計基準」により、ネット売却価額まで簿価を切り下げた。
この影響は前者が538億円の益、後者が328億円の損、差引き210億円の益となっている。

連結決算                     単位:百万円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/3 3,864,263 55,891 60,695 4,837 75.0 75.0
09/3 3,798,489 102,411 89,289 3,323 75.0 75.0
増減 -65,774 46,520 28,594 -1,514 - -
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減  2009年
上期 下期
石油製品 -78 564 642 255 309
石油化学製品 186 -213 -399 -30 -183
石油開発 433 498 65 359 139
石炭 29 190 161 30 150
その他 -11 -10 1
全社 0 -5 - 5 0 -5
合計 559 1,024 465 614 410

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新日本石油

上記の出光興産は在庫評価を後入先出法を採用しているため、前年末の在庫の影響をあまり受けない。

しかし、新日本石油をはじめ、ほとんどの会社は総平均法を採用しているため、今回のように原油価格が激減した場合、前年末の高い在庫が当期の損益に大きく影響を与える。

2009/2/2 新日本石油の業績

新日本石油の場合、この影響が4,470億円の多額にのぼり、経常損益では前年比で5,511億円の採算悪化となった。
在庫の影響を除くと、経常損益は前年比で逆に638億円の改善になる。

石油化学製品の経常損益は356億円の赤字となった。

連結決算                     単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/3  7,523,990   263,962   275,666   148,306   6.0   6.0
09/3  7,389,234  -312,506  -275,448  -251,613  10.0  10.0
増減   -134,756  -576,468  -551,114  -399,919   4.0   4.0

経常損益対比(億円)
  08/3 09/3 増減    2009年
  上期 下期
石油製品   1,313  -3,757  -5,070      476  -4,233
石油化学製品    226   -356   -582     -114   -242
石油・天然ガス開発   1,113   1,211    98      219    992
建設・その他    105    148    43       1    147
合計   2,757  -2,754  -5,511      582  -3,336
             
在庫影響   1,679  -4,470   6,149      791  -5,261
             
在庫影響除き            
 石油製品   -363    713   1,076     -315   1,028
 合計   1,078   1,716    638     -209   1,925

国際会計基準では先入先出法か総平均法が定められており、日本で採用されている後入先出法は認められない。

企業会計審議会は、日本でも国際会計基準(IFRS)の任意適用を開始、2012年をめどにIFRSを強制適用するかを判断するとの方針を示している。

このため、海外の石油会社は在庫影響を除いた損益を、BPReplacement cost profits、Shell はCCS (Current cost of supplies) profits などとして報告している。

2009/2/4 BPの損益


* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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