レアメタルの国家備蓄拡充

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政府はレアメタルの国家備蓄拡充に乗り出した。

従来の 7品目に加えて、インジウム、ガリウムの備蓄を開始した。
経済産業省は現在、レアアース(希土類)など5品目についても備蓄対象にする方向で検討している。

参考 2009/4/22 中国がレアアースの輸出を制限? 

現在の国家備蓄制度は以下の通り。

  国家備蓄 民間備蓄
実施主体 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 民間企業
(国際鉱物資源開発協力協会がとりまとめ)
対象鉱種 ニッケル、クロム、タングステン、コバルト、モリブデン、マンガン、バナジウム
目的 円滑な産業活動の維持及び国家経済安全保障の確立 企業の使用実態に即応した自主的な備蓄制度
保管場所 茨城県の備蓄倉庫で一元集中管理 民間企業が個別保管管理
目標 国内基準消費量の42日分
(備蓄目標量の7割)
国内基準消費量の18日分
(備蓄目標量の3割)
                     合計 国内基準消費量の60日分
実施状況
(09/3末)
財政難から保有費用を極力抑えるとともに、
リスクに対応
鉱種 日数
ニッケル  21.8
フェロクロム  29.2
タングステン  20.1
コバルト  22.2
モリブデン  17.1
フェロマンガン  26.2
フェロバナジウム  18.9
平均  22.2

 

 
現在の動き 新たな備蓄品目:インジウム、ガリウム

需要動向の注意対象品目:ニオブ、タンタル、ストロンチウム、プラチナ、レアアース

 
制度の変遷は以下の通り。

1982年4月の産業構造審議会の報告を受け、国家備蓄の実現に向けた検討が本格化。
1983年4月の「金属鉱業事業団法」改正により、金属鉱業事業団(現
石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の業務に「金属鉱産物の備蓄」が追加され、同年度より備蓄制度が創設された。
   
    備蓄目標:消費量の60日分(国家備蓄:25日分、共同備蓄:25日分、民間備蓄:10日分)
   
1986年の鉱業政策懇談会の報告(制度の簡素化、効率化)を受け、1987年度より変更 
   
    備蓄目標:消費量の60日分(国家備蓄:42日分、民間備蓄:18日分)
   
1997年12月の「特殊法人等の整理合理化について」の閣議決定により、新規の備蓄積み増し停止
   
2000年12月、鉱業審議会レアメタル対策分科会は、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデンの4鉱種について当面の備蓄水準の削減が可能と評価し、2001年度以降、最低合計30日分以上の備蓄物資を確保。
   
   ・ニッケル:対日輸出国集中度が低下、リサイクルが進展する等、供給の安定度は相当高い。
 ・クロム:我が国企業の南アフリカ進出、南アフリカ情勢の安定化等から供給の安定度は上昇。
 ・マンガン:南アフリカ情勢の安定化、生産国の分散化が進展するなど、供給の安定性は大幅に上昇。
 ・モリブデン:アメリカ・中国・チリ等安定した生産国が多いことから備蓄水準の削減が可能。
   
レアメタル備蓄の放出
   当初は「緊急時放出制度」(供給障害が発生 or 発生のおそれがある場合)のみ。
   1991年度に「高騰時売却制度」(価格高騰時に一部売却)を追加。
   2000年度に4鉱種(ニッケル、クロム、モリブデン、マンガン)について30日分まで売却することを可能に。「平常時売却」
最近数年間で下記の売却が行われた。
 ニッケル地金    863t
 フェロニッケル   6,443t
 モリブデン    415t
 フェロマンガン  19,650t
 フェロバナジウム    160t
 タングステン    117t

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上記の通り、原則は国家備蓄は42日分だが、新規備蓄積み増し停止、高騰時売却制度、平常時売却制度により、現状は22.2日分に留まっている。

また、レアメタルの用途が増えているが、新規用途は勘定に入らず、備蓄は十分ではないという。

コバルトは需要の7割を占める二次電池向けが制度スタート時に想定されておらず、備蓄量算定基準に含まれない。

「31種類に固定化しているレアメタルの分類見直しも含めて備蓄対象を増やし、安値で迅速に買い付けに動ける環境が必要」との声もある。(日経記事)

資料  http://www.jogmec.go.jp/mric_web/organization/japan/g3/index.html

 

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経産省は6月3日、レアメタルを国内に安定供給するための総合戦略「レアメタル確保戦略」の原案をまとめた。

①海外資源確保、②リサイクル、③代替材料開発、④備蓄の4つの柱を挙げた。

①については鉱山周辺のインフラ整備へのODAの活用を盛り込んでいる。
②については携帯電話やデジカメなどをリサイクルする仕組みの構築が重要と指摘している。

②に関して 参考 2008/1/15 資源大国 日本 

③については産学官の連携強化や研究開発拠点の整備などを挙げ、
④については「需給動向を踏まえ、積み増し、放出を機動的に取り組むべきだ」としている。

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

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