住友金属鉱山、比最大手ニッケル鉱山会社の株式を取得

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住友金属鉱山は8月19日、世界有数のニッケル資源国フィリピンの最大規模のニッケル鉱山会社 Nickel Asia の株式16.5%を約39 百万米ドルで取得したと発表した。

付記
2009年12月、追加出資を決定し、同社株式の8.5%を、約22百万米ドルにて取得、出資比率は25.0%となった。

付記
 
Nickel Asia は2011年10月3日、タガニート・マイニング・コープが武装勢力に襲撃されたため、生産と出荷を停止していると発表した。共産ゲリラの新人民軍(NPA)がタガニートをはじめ鉱山3カ所を襲撃、設備や施設に火をつけたという。

NPAの幹部は報道陣に対し、NPAによる襲撃だったと認め、「環境破壊を続ける日本人への懲罰だ」と語った。
住友金属鉱山の関連会社を襲撃目標としていると明言し、「住友のトップの日本人との交渉」を求めるとした。

ニッケル鉱山開発が森林を伐採するなどして環境を破壊し、住民や農民の権利を侵害していると主張。「今年4月、住友の出資する関連会社に「我々と話し合わずに、プラント建設を進めるべきではない」との手紙を送ったが、ろくな返事がなかった。だから攻撃した」と述べた。

Nickel Asia は2006 年2月に、Zamora グループ傘下のニッケル鉱山会社の資本を統合して設立された。
子会社を通じ、
Rio TubaTaganitoCagdianaoTaganaanSouth Dinagat などのニッケル鉱山を持っている。

住友金属鉱山は子会社のCoral Bay Nickel で、Rio Tuba 鉱山の低品位ニッケル酸化鉱を原料として「HPAL法」(High Pressure Acid Leach:高圧硫酸硫酸浸出法)を用いたニッケル製錬を行っており、更に Taganito鉱山でもHPAL計画のFS中である。

同社は将来にわたる重要な戦略的パートナーとしてのNickel Asia との関係を一層強化するために、資本参加を決定した。

ニッケルはレアメタルの一つとして国家備蓄の対象となっている。

HPAL法(High Pressure Acid Leach:高圧硫酸浸出法)は、これまで回収が難しいとされてきた低品位酸化鉱石からニッケル・コバルトを回収する画期的な方法。

それまでニッケル製錬は比較的品位の高い鉱石を原料としており、ニッケル分1.5%以下のラテライト鉱は原料に適さないとされてきた。
多くの場合このラテライト鉱の下に高品位の鉱石が存在するため、ラテライト鉱を掘り起こす必要があり、Rio Tuba (Palawan島)でも約20年間にわたり積み立てられたままになっていた。

住友金属鉱山のCoral Bay Nickel では2005年4月から、Rio Tuba鉱の貯蔵低品位鉱石(Ni=1.26%)を原料としてHPAL法(高圧硫酸浸出法)によりニッケル・コバルト混合硫化物 (Ni=52.7%,Co=3.9%)を生産し、新居浜製錬所で電気ニッケル、コバルトを生産している。

第一期プラントではニッケル量で約10,000トン/年、コバルト量で約700トン/年のニッケル・コバルト混合硫化物 を生産しているが、第2工場完成後はニッケル量で22,000トン/年となる。

HPAL法では大量の硫酸を消費するため、住友金属鉱山東予工場(愛媛県西条市)の銅生産能力増強に伴い生産される硫酸の安定的なユーザーでもある。

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住友金属鉱山とTaganito Mining は2007年3月、ミンダナオ島北東部タガニート地区での「HPAL法」製錬プロジェクトの共同FS契約に調印した。

同鉱山の低品位ニッケル酸化鉱を原料としてニッケル・コバルト混合硫化物からニッケル量で年産3万トンを生産するもので、操業開始は2012年、操業期間は約30年間を見込んでいる。

付記

住友金属鉱山、三井物産、Nickel Asia(NAC)は、住友が推進しているタガニート・ニッケルプロジェクト(総事業費13 億ドル)に三井とNAC が参画することで合意し、2010年9月15日に株主間契約を締結した。

住友の100%子会社Taganito HPAL Nickel Corp.が実施する第三者割当増資を引受け、引受後の出資比率を住友62.5%、NAC22.5%、三井15.0%とする。

ニッケル製錬の中間品であるニッケル・コバルト混合硫化物(Nickel/Cobalt Mixed Sulfide ニッケル品位約57%)を年間3万トン(ニッケル量換算)生産するもの。

住友金属鉱山は"非鉄メジャークラス入り"を戦略的な目標としている。
(2006年中期経営計画  
http://www.smm.co.jp/ir/management/keikaku/pdf/070220setsumeikai.pdf

1.ニッケル10万トン体制の構築
2.東予工場 銅精錬45万トン体制の確立
3.鉱源確保 自山鉱比率の向上
4.Pogo金鉱山フル生産体制へ

ニッケルでは2005年の同社の能力は56千トンで世界7位だが、上記の計画や新居浜ニッケル工場拡張などにより、2013年に10万トンとし、5位を目指す。

現在、1位はロシアのNorilsk Nickel(25万トン弱)、2位はカナダのInco(ブラジルのCVRDが買収)、3位は豪州のBHP Billiton、4位はカナダのFalconbridge(スイスの Xstrata が買収)、5位が中国の金川ニッケル集団(Jinchuan)、6がフランスのEramet となっている。

2006年6月に米国の産銅会社Phelps DodgeがカナダのIncoFalconbridgeの買収を発表した。
買収額は約400億ドルで、3社合併後の新会社Phelps Dodge Incoは ニッケル生産世界一、銅生産世界2位、モリブデン生産も世界2位となる巨大企業となる筈であった。

しかし、CVRD(リオドセ)がInco、XstrataFalconbridge の買収に乗り出し、Phelps Dodge自身がFreeport-McMoRan Copper & Gold に買収された。

Pogo金鉱山は住友金属鉱山の海外での初の主導的な開発プロジェクトで、1991年に探鉱を開始、1997年にTech Resources と提携し、探鉱及び企業化調査を進めた。
Techは本年4月にこの権益をJVパートナーの住友金属鉱山へ2億4500万米ドルで
売却した。  

1)位置:米国アラスカ州フェアバンクスの南東約145キロ
2)権益比率:住友金属鉱山アメリカ社(住友金属鉱山100%子会社) 51%→85%
        Teck Resources 40%→ 0
        SC Minerals America(住友商事100%子会社) 9%→15%
3)埋蔵金量:109t(2008年末鉱量計算結果)
4)年間生産金量:11~12t/年
5)開発投資額:約378百万ドル(出資比率で負担)

2009/7/14 中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資


* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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