アラブ諸国で初のアブダビ原発、韓国電力連合が受注

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アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国のアブダビ国営原子力エネルギー会社(Emirates Nuclear Energy CorporationENEC)は2009年12月27日、アラブ諸国初となる原子力発電所の建設を韓国電力公社を中心とする韓国企業連合に発注することを決め、合意文書に調印した。

韓国電力のほか韓国水力原子力、現代建設、斗山重工業、サムスン物産、Westinghouse(東芝子会社)、国際プロジェクトマネジメント会社の英AMECとなどがメンバー。

UAEで認知度の高い現代建設と三星物産を入れた。
各社の参加でコンソーシアムは原発の建設から運営まで全てのことが可能であることを積極的に説得することができた。

外国企業の参加を通じ、『韓国が中心 になったグローバルなチーム』というイメージを強調することができた。

韓国では原子炉冷却材ポンプや制御計測装置などの基幹技術に関しては独自に開発できておらず、今回もこれらはWestinghouseからの技術供与で行なわれる。供与される部分は工事費全体の5%ほどとされる。

急きょUAE入りした李明博大統領が27日にハリファ大統領と会談し、General Electric/日立を中心とする日米企業連合、フランス電力公社/Areva(世界最大の原子力産業複合企業)などのフランス連合を抑えて巨額プロジェクトの受注を勝ち取った。
韓国初の外国での原子力発電所建設の契約で、現代建設の経営者出身で、経済重視の外交を展開してきた李大統領の執念が実った。

UAEはエネルギー部門を近代化し、エネルギーソースを多様化する計画を進めている。

核拡散を恐れる米国が計画に反対していたが、UAE1217日に米国との間で、ウラン濃縮を行わないこと、使用済み燃料の再処理をしないことを約束する協定に調印し、前進した。

韓国電力のグループは4基の第三世代1400MW 軽水炉原発を設計、建設し、操業支援を行う。
1基は2017年に稼動、残りも2020年までに稼動する予定。

4基の建設費だけで200億ドル、これに加え、原子炉の耐用年数の60年間にわたり、原発の操業、メンテナンス、燃料供給を行い、これを合わせると契約額は合計400億ドルとなる。

ENECと韓国電力は原発の操業のためのJVを設立するとともに、燃料供給などの他のJV設立も検討する。
最初の3年間は韓国電力が燃料を供給する。

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韓国政府100%出資の韓国電力は現在、20基の原発を運転しており、2030までに更に10基を建設する。

韓国の強みは、30年間無事故という徹底した安全管理、高い技術力、価格競争力などとされる。

韓国知識経済部によると、韓国における原発の建設費用は1キロワット当たり2300ドルで、米国の3582ドル、フランスと日本の2900ドルよりも安い。また原発建設に必要な期間は52カ月で、フランスの60カ月、ロシアの83カ月より短いという。

韓国にとっては史上初の原発プラント輸出で、米国、フランス、日本との競争に勝利しての受注となった。
世界に原発プラントを輸出する能力を持つ国はこれまで、米国、フランス、カナダ、ロシア、日本の 5カ国だけだったが、韓国は今回の受注により、世界で6番目の原発輸出国となる。

大統領府関係者は「今回の受注による新規の雇用拡大効果は、10年間の建設期間で 11万人に達すると見込まれている。建設や機器の製作、設計、技術開発、金融など、関連する効果も考慮に入れれば、国の経済全体に大きくプラスになるだろう」と述べた。

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韓国とUAEは、今回の原子力発電所建設の契約を交わすにあたって、原発の建設および運営の期間である70年にわたるパートナー関係を結ぶこととなった。

12月27日、「韓国・UAE政府間経済協力協定」を締結した。
原子力分野のほか、再生エネルギー、造船、半導体、人材養成などの分野で両国間の長期パートナー関係を構築する。
UAEが推進している
炭素排出ゼロ都市 「Masdar City」の建設プロジェクトに韓国側が参加する。
人材養成分野でも、両国が共同で協力案の細部を詰めていくとした。

また両国は包括的「軍事交流協力協定(MOU)」を締結した。
両国は、防衛産業の技術交流や軍の教育訓練協力、軍高官の交換派遣、パイロット養成支援など20項目で合意した。
韓国政府消息通は、「金長官は、韓国型原発を選定する場合、軍事関連分野でかなりのインセンティブを提供する、という意志を提示したものとみられる」と語った。

李明博大統領はこの日、UAEでハリーファ大統領と首脳会談を開いたが、その場で韓国電力の企業連合による受注が最終的に決まり、両国関係を「戦略的同伴者関係」へと引き上げることでも合意した。

李大統領とシェイク・ハリーファUAE大統領兼アブダビ首長は首脳会談直後、原発事業契約書の調印式、韓国・UAE経済協力協定の調印式に出席した。

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UAEは今回初めて国際競争入札を行った。

9月以降は事実上、韓国電力とフランスのアレバの連合に絞られたが、韓国とフランスの国同士の争いとなった。

アレバは価格面や工期など、提案書の内容では不利であったが、サルコジ大統領が中心となって逆転を狙った。

朝鮮日報によると、サルコジ大統領は「UAEの戦闘機をフランス製のミラージュから最新型のラファエロに交換する」とか、「UAEに駐屯するフランス軍を増強する」などと提案した。
さらに、ルーブル美術館の分館をUAEに建設する案や、「UAEが大使館などを持たない国では、フランス大使館を無償で使っても良い」「核の傘を提供する」などとまで持ち掛けていたという。

サルコジ大統領は5月にアブダビを訪問し、ムハマド王子に対して週に2回から3回も電話をかけることもあったという。

李大統領は7月に韓国電力がUAEに提案書を提出する際、「工期を6カ月短縮せよ」「事業費をさらに10%安くして提出せよ」などとアドバイスしたという。

大統領府の尹政策室長は外交通商部、国防部、知識経済部、教育科学技術部、韓国電力などからなるプロジェクトチームを指揮した。最終的に経済、安全保障、教育などを網羅するパッケージプログラムが、UAEに提案された。

李大統領はムハマド王子と6回電話で話をし、外交経路を通じて親書も送った。
大統領府の関係者は「何よりも李大統領は、韓国とUAEが今回の原子力発電所建設事業を通じて、“百年の知己”になるという点を強調して説得した」と語る。

 

フランスや韓国の大統領の動きを見ると、このような大規模プロジェクトで日本が敗退するのは当然である。

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韓国政府はUAE原発を受注した12月27日を「原子力の日」と制定することを検討中。

韓国電力は世界初の原子力専門大学院を設立する。12月29日、教育科学技術部から韓電国際原子力大学院大学(INGS)設立の認可を受けた。国内専門人材を養成すると同時に、韓国原子力技術に詳しい外国人材を育成し、海外原子力発電所の受注人脈として活用する。

蔚山市の古里(コリ)原発付近にキャンパスを設置し、2年間の修士課程として2012年開校する。原発の設計・建設・運転・整備専門人材を育成する。


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