欧州委員会、後発薬問題で製薬大手を調査

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Pfizer 114日、製薬会社と後発薬メーカーとの間の後発薬特許契約に関する独禁法調査で欧州委員会から質問を受けていることを明らかにし、調査に協力すると述べた。

問題となっているのは後発薬の参入を遅らせるためにリベートを支払うという 'pay-for-delay' という取引。

何年もの調査に基づき、欧州委員会は多くの製薬会社に、20087月から200912月までの間の欧州における後発薬特許契約(generics settlement agreements)に関する情報提供を求めた。

Settlement agreements は、後発薬の参入の前に、複雑な特許係争によるリスクとコストを最小にするため、製薬会社と後発薬メーカーとの間で長年結ばれていた。

しかし、この結果として、後発薬参入を遅らせるために、製薬会社が後発薬メーカーにリベートを支払うことになれば独禁法問題が生じる。これが'pay-for-delay' と呼ばれ、患者は高価なブランド薬品を必要よりも長期間、使用せざるを得なくなる。

情報提供を求められているのは、ほかに、AstraZenecaBoehringer IngelheimGlaxoSmithKlineNovartisRocheSanofi-Aventisと後発薬メーカーのイスラエルのTevaと英・アイルランドのNiche Generics

これとは別に、欧州委員会は17日、デンマークの製薬会社 H Lundbeck A/S が抗うつ剤のCitalopram の後発薬参入を遅らせた疑いで初期調査に入った。

欧州委員会は、欧州経済領域(EEA)において、後発Citalopramの参入を防止又は遅らせるための慣行を調査するとしている。

欧州委員会では今後、これらのデータを毎年集める予定。

まず資料集めだが、独禁法上で懸念のある契約については調査する。

欧州委員会では後発薬の参入遅延で2000年から2007年の間で少なくとも30億ユーロの損失となっているとみている。

欧州委員会の競争政策担当委員のNeelie Kroes女史は今月までが任期で、2月から現経済・通貨担当のスペインの政治家 Joaquín Almunia Amann 氏が横滑りする。

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米国ではFTCが米国の製薬会社のsettlement agreementsのタイプや頻度に関する年報を作成している。
FTCpay-for-delay 契約をやめるよう、しばしば求めている。

下院を通過した医療保険改革法案では、pay-for-delay 契約を禁止する条項を含んでいる。
上院の案には含まれていないが、多くの市民運動グループがこれを含めるよう上院に請願している。

113日にはFTC委員長と議会の主要メンバーがpay-for-delay 契約禁止を求める共同声明を発表した。
 http://www.ftc.gov/opa/2010/01/payfordelay.shtm

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欧州委員会は20097月に医薬業界の問題点(Antitrust: shortcomings in pharmaceutical sector require further action)という報告を発表した。

調査は20081月に開始された。新規医薬品の上市が少ないこと、後発医薬品の参入が遅れることを問題視した。

報告によると、
2000年から2007年の間で特許が切れた医薬品で、後発医薬品発売は7ヶ月以上遅れ、20%の追加支出となった。
・後発医薬品は平均
40%安い。
 製薬会社は出来るだけ長く、後発医薬品なしで販売するよう、多くの手をうっている。
・新規医薬品の発売が減っている。製薬会社の慣行も原因となっている。

・欧州共同特許と統一特許訴訟制度の設立が必要。
 (特許訴訟の
30%がいくつかの国で平行して行われている。11%が国によって判決が異なる)

欧州委員会はメンバー各国に次の要請をしている。
・後発医薬品の承認を遅らせないこと
・後発医薬品の承認手続きを早める。
・後発医薬品の品質が問題とするような誤ったキャンペーンに対応策をとる。
・新規医薬品の評価を早くする


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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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