カネカ、バイオ医薬関連事業を本格展開

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カネカは6月17日、ベルギーのバイオテクノロジー企業であるEurogentecと提携し、新たにバイオ医薬関連事業を積極展開すると発表した。
同社株式の過半数を約40億円で取得し、バイオ医薬関連事業の売上高として10年後に約300億円を目指す。

バイオ医薬は、微生物培養技術、遺伝子組み換えや細胞融合の技術などのバイオテクノロジーにより創られたペプチド、タンパク、核酸などにより構成される医薬品。

Eurogentecは、1985年にリエージュ大学マーシャル教授等により設立され、バイオテクノロジーをベースとした事業分野で20年以上の経験と実績がある。
現在、日米欧に製造販売拠点を有し、タンパク、核酸、ペプチドの3つの事業分野おいて医薬・診断薬の受託製造や研究試薬の販売を行っている。

日本では、遺伝子工学研究用試薬、体外診断用医薬品、検査・診断試薬の開発及び製造を行うニッポンジーンとEurogentecとのJV2001年設立)のニッポンイージーティー(Nippon EGT)で、研究、診断、検査用のオリゴヌクレオチドのカスタム合成サービスを行っている。

ニッポンイージーティーは、Eurogentecのアジアにおけるオリゴヌクレオチドの生産拠点となっている。

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カネカはこれまで、独自の技術をベースに、医薬バルク・中間体の事業を主力事業の一つとして展開してきたが、新薬承認数も減少傾向にあり、画期的な医薬を創出することが次第に難しくなってきている。

カネカのライフサイエンス部門製品は以下の通り。

医薬品:グルタチオン、ユビデカレノン、半合成ペニシリン中間体、
     血圧降下剤力プトプリル中間体、エナラプリル型血圧降下剤中間体、
     カルバペネム系・ペネム系抗生物質中間体、
     血圧降下剤力プトプリル中間体、エナラプリル型血圧降下剤中間体、
     カルバペネム系・ペネム系抗生物質中間体

機能性食品素材:コエンザイムQ10、還元型コエンザイムQ10、
           カネカ・グラボノイド

血管内治療用カテーテル、血液浄化システム

ライフサイエンス部門の2010年3月期の売上高は392億円(前年比 -7億円)、営業利益は45億円(前年比 -14億円)となっている。

これに対しバイオ医薬は微生物培養の技術などを用い、これまでにない疾患に有効な新薬を作り出せる可能性が高いこと、また生体内にある物質を利用することにより、低分子薬より安全性が高く、副作用も少ない利点があり、近年市場が大きく成長してきている。

カネカでは、長年培ったバイオ技術を活かし、比較的早くから微生物系培養のタンパク医薬製造の基礎技術開発や、次世代抗体医薬である低分子化抗体の生産技術開発などにも取り組んできたが、自社の微生物培養を始めとする独自のバイオ技術力と、Eurogentecのこれら事業基盤を組み合わせることにより、バイオ医薬関連事業の早期育成が図れると判断した。
今後はタンパク医薬受託事業における大型プラントの新設や核酸分野への展開強化も進め、事業の飛躍的拡大を図る。

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カネカは2006年12月、100%出資子会社でファインケミカル製品の受託生産会社である大阪合成有機化学研究所がジェネリック医薬品分野への積極的な事業展開を進めると発表している。
カネカは同社を2002年7月に買収した。

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カネカは、2009年の創立60周年を機に策定した長期ビジョン「KANEKA UNITED宣言」の中で、「健康」を重点戦略分野の一つとして位置づけ、「人々の健康や医療・介護に貢献できる素材や製品の創出を目指す」としている。

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付記

カネカは10月19日、バイオベンチャー企業のジーンフロンティアを実質買収し、100%子会社化すると発表した。

ジーンフロンティアは2003年に、ゲノム創薬支援のためのサービス・製品提供を目的に、IT事業創出会社のITXが80%、残りを、総合臨床検査センターのBMLと「ニッチトップ」を目指すインフォコムが各10%出資して設立された。

独自の抗体作製技術を持つドイツのバイオ企業MorphoSys AGと、日本での独占的業務提携に関する契約を締結、2004年9月から抗体事業に本格参入した。

抗体とは、体内で特定の異物(抗原)に結合して、その異物を体内から排除するように働くタンパク質のこと。
モノクローナル抗体は1個の抗体産生細胞が増殖して生じた均一な細胞群によって生産された抗体で、特定抗原決定基のみを認識する。

MorphoSysが開発した完全ヒトモノクロナール抗体作製技術を用いた、バイオ研究者向けのカスタムモノクロナール抗体作製サービスを提供するほか、製薬会社等に対して、MorphoSysの抗体医薬開発に関する技術ライセンス、共同研究、共同開発の斡旋も行っている。

カネカはジーンフロンティアのカスタムモノクローナル抗体の作製サービス事業を継続しつつ、新たな研究開発支援事業の立ち上げや、スキャフォールド(低分子化した抗体よりさらに小さい分子で、抗体と同様の機能を有する分子)などの次世代バイオ医薬の探索技術の開発を強化する。

同社は同社、Eurogentec、ジーンフロンティアの総力を結集し、提案型のバイオ医薬受託製造のビジネスモデルを確立し、バイオ医薬関連事業の売上高として10年後に約300億円を目指すとしている。



目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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