韓国のLGグループとサムソングループ、2011年に過去最大の投資

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LGグループは2010年12月、2011年に過去最大規模の21兆ウォン(約1兆5330億円)を投資することを決めたと発表した。 (以下、1ウォン=0.073円で換算)

2010年の投資額は当初計画では15兆ウォンであったが、LGディスプレーの坡州LCD生産ライン増設とLG化学の自動車用バッテリー生産施設新設・増設に追加投資をし、当初の計画より3.8億ウォン(25%)増の18.8兆ウォンとなった。

今年の投資額はこれを11.7%上回るもので、過去最大となった。

LGグループの具本茂会長は、グループの社長らと来年の事業戦略を協議した際、「未来の準備に対するスピードを上げ、市場をリードする大胆な構想を求めたい」と強調したが、今回の投資計画はこれに基づいている。

主な内容は以下の通り。

分野 投資額 会社 投資の主な内容
エレクトロニクス 14.2兆ウォン
1兆366億円)
LG Display 設備 8世代など大型液晶ディスプレー(LCD)の生産ライン
を新設・増設
R&D アクティブマトリクス式有機EL3Dパネル、電子ペーパー
LG Electronics 設備 太陽電池能力増強(2011年前半に3ライン新設)
  
120メガワット→330メガワット
R&D SmartphoneTablet PC3Dテレビ
LG Innotek 設備 Smartphonecamera module
Tablet PC
用のプリント基板製造設備拡張
R&D 高性能LDE電球
ケミカル 3.6兆ウォン
2628億円)
LG Chem 設備 リチウムイオン電池拡張、液晶ディスプレイのガラス基板
R&D 電気自動車技術、液晶ディスプレイ用先端ガラス基板
LG Hausys 設備 蔚山に省エネ「Low E」ガラス製ライン
R&D
LG Life Science 設備 製薬工場建設
R&D Bio-similar (後発バイオ医薬品)
テレコム 3.2兆ウォン
2336億円)
LG Uplus 設備 Wi-Fi zones (無線LAN)、次世代テレコム
R&D Smart television contentcloud-computing services)、
Mobile advertisements
合計 21.0兆ウォン
(1兆5330億円)
設備 16.3 兆ウォン(1兆1899億円)
R&D 4.7 兆ウォン(3431億円)

ーーー

サムスングループは1月5日、2011年の設備投資と研究開発費などの投資総額を過去最大となる43.1兆ウォン(3兆1463億円)にすると発表した。新事業や主力事業への大規模投資で、未来の成長エンジンの充実化を図る。

2010年実績の36.5兆ウォン(2兆6645億円)と比べ18%増、2009年実績21.1兆ウォンの2倍強となる。

2011年投資計画(日本円換算)
資本 803億円
R&D 8833億円
   
その他投資 6424億円
有機EL 3942億円
液晶パネル 3942億円
半導体 7519億円
(設備投資計) 21827億円
   
合計 31463億円

設備投資のうち半導体が前年比14%減の10兆3000億ウォンで、液晶パネルは同35%増の5兆4000億ウォン。
半導体はDRAM、NAND型フラッシュメモリーのメモリー新工場への毎年の投資を平準化させるため減額となるが、高水準を維持する。

最大の伸び率となるのが有機ELで、前年比4倍弱となる5.4兆ウォン(3942億円)を投じる。

中小型パネルを手掛けるグループ会社、サムスンモバイルディスプレーが忠清南道湯井で7月に新ラインを稼働させる予定で、製造装置などの関連投資を積み増す。このラインは「5.5世代」と呼ぶ大きさのガラス基板を使い、有機ELとしては世界最大規模の生産拠点となる。
生産能力はガラス基板投入ベースで月産7万枚。サムスンは自社製のスマートフォンに組み込んで製品競争力を高める一方、外販も増やすとみられる。有機ELテレビ用のパネルを生産する足がかりとする狙いもある。

このほか、テレビに8,000億ウォン、発光ダイオード(LED)に7,000億ウォンを投じる。

研究開発投資は前年比14%増の12兆1000億ウォン。
有機ELなど次世代技術のほか、3Dテレビなどの開発を強化する。

資本投資には、グループの中核企業、サムスン電子の海外法人の増資や、サムスン物産の海外資源確保に向けた株式投資、M&A資金などが含まれる。

サムスン電子の李健熙会長は1月3日、現在「主力」の事業・製品は全て今後10年以内に勢いが衰えるとして、新たな分野に投資を行わなければならないとの考えを表明、停滞に陥る前に、新事業・製品を確立することが必要だと付け加えた。

三星グループは2010年5月11日に新事業戦略を発表した。

2010年3月に経営の第一線に復帰した李健煕会長主宰で新事業関連社長会議を開き、確定したもので、未来の新事業は、太陽電池、自動車用電池、発光ダイオード(LED)、バイオ製薬、医療機器の5つ、2020年まで23兆3000億ウォン(約1兆9000億円)を投資するというもの。

  2010/5/12 三星グループの新事業戦略

このほか、2011年に大卒や中途などで前年比11%増となる2万5000人を採用する計画も公表した。
このうち、大卒新入社員が9000人、キャリア職が5000人、技能職が1万1000人の予定。
採用の拡大には、韓国を代表する企業として、若者層の失業など雇用問題の解決に向けた社会的責任をとる意思も込められている。

サムスン電子は1月7日、2010年第4四半期の実績予想を発表した。
営業損益は、液晶パネルと半導体の価格下落で、第3四半期比38%減の3兆ウォンの予想だが、2010年暦年では過去最高の17兆2800ウォン程度となり、前年比で58%の増益となる。これは円換算で1兆2600億円となる。

ーーー

これに対して日本の企業の2010年3月期の連結営業損益の予想は、
  パナソニック 3100億円
  ソニー     2000億円
  シャープ     900億円
となっており、大きく差を開けられている。  

既にエレクトロニクスや半導体分野で日本のメーカーが韓国のメーカーに製造委託するケースが増えており、これらの分野を韓国企業に抑えられる恐れが出てきた。

サムスンが有機ELで前年比4倍弱となる5.4兆ウォン(3942億円)を投じるという報道に、山形大学の城戸淳二教授はブログ大学教授のぶっちゃけ話で以下のコメントをしている。
 
  有機EL研究者として、サムスンに拍手。
  日本人として、涙。
  日本のディスプレイパネルメーカー、消滅の年になりそうですね。

付記

李健煕・三星電子会長は1月11日、金浦空港から日本へ向けて出国する前、「三星が日本を抜いたと言われるが、日本企業から学ぶことは何か」という記者の質問を受け、以下の通り答えた。
「外見では三星がリードしているように見えるかもしれないが、中身(部品)で日本に追いつくためには、まだ多くの時間と研究が必要だ。学ぶべきことは多い。ずっと学んでいかなければいけない。」


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