「浜岡原発を止めよ」

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4月18日付の毎日新聞のコラム「風知草」(山田孝男氏)のタイトルである。

中部電力の浜岡原子力発電所を止めてもらいたい。安全基準の前提が崩れた以上、予見される危機を着実に制御する日本であるために。

(中略)

浜岡原発は静岡県御前崎市にある。その危うさは反原発派の間では常識に属する。運転中の3基のうち二つは福島と同じ沸騰水型で海岸低地に立つ。それより何より、東海地震の予想震源域の真上にある。

「原発震災」なる言葉を生み出し、かねて警鐘を鳴らしてきた地震学者の石橋克彦神戸大名誉教授(66)は、月刊誌の最新号で、浜岡震災の帰結についてこう予測している。
「最悪の場合、(中略)放射能雲が首都圏に流れ、一千万人以上が避難しなければならない。日本は首都を喪失する」「在日米軍の横田・横須賀・厚木・座間などの基地も機能を失い、国際的に大きな軍事的不均衡が生じる......」(「世界」と「中央公論」の各5月号)

これが反原発派知識人の懸念にとどまらないことを筆者は先週、思い知った。旧知の政府関係者から「浜岡は止めなくちゃダメだ。新聞で書いてくれませんか」と声をかけられたのである。原発輸出を含む新成長戦略を打ち出した内閣のブレーンのひとりが、浜岡に限っては反原発派と不安を共有し、「原発を維持するためにこそ止めるべきなのに、聞く耳をもつ人間が少ない」と慨嘆した。

(後略)

既報の通り、石橋名誉教授は岩波書店の雑誌「科学」1997年10月号で、浜岡原発について述べている。

発生が懸念されるM8級東海巨大地震の想定震源断層面の真上、静岡県御前崎のやや西に、中部電力浜岡原子力発電所がある。

原発を直撃する地震動は、原子炉のS2(安全のための余裕を加えた基準地震動)を超える恐れが強い。

地震時に浜岡は1m以上隆起すると考えられるが、それに伴って地盤が傾動・変形・破壊すれば原発には致命的だろう。

津波に関して中部電力は、最大の水位上昇がおこっても敷地の地盤高(海抜6m以上)を越えることはないというが、1605年東海・南海巨大津波地震のような断層運動が併発すれば、それを越える大津波もありうる。

そのうえで、浜岡で、今回福島原発で起きたこと(敷地地盤高を越える大津波、全電源停止、水蒸気爆発、4基すべてが同時に事故、使用済み燃料貯蔵プールへの波及)が起こる可能性を述べている。
    (浜岡は現在は3基だが、当時は4基あった)

2011/3/29  福島原発事故
「科学」1997年10月号記事 http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/9710kagaku.pdf

同氏は2005年2月23日の衆議院予算委員会公聴会で、浜岡原発で事故が起こった場合の首都喪失の可能性を公述している。

今世紀半ばに東海、南海地震が起こるのはほぼ確実としている。

会議録 http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/050223koujyutsu.pdf

「最悪の場合、放射能雲が首都圏に流れ、一千万人以上が避難しなければならない」場合、どこに避難するのだろうか。
西への道は地震と放射能で全て閉鎖されている。

参考

 

 

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石橋氏は全電源停止の可能性を指摘しているが、4月19日付の毎日新聞は、原発の全事業者が電源の長期喪失を想定せず、国も「考慮不要」としていたと報じている。

米スリーマイル島原発事故などを受け、原子力安全委員会が1992年に炉心溶融などシビアアクシデント対策の報告書の作成を推奨した。

これに対し各社は、電源が喪失した場合でも原子炉内に7~8時間は注水を続けられる冷却機能を原発に備えているが、これに加え、隣接する号機の電源を融通する、非常用ディーゼル発電機を追加設置するなどの方法で電源供給能力を向上させるとした。
電源が8時間を超えるような長時間にわたり失われる事態を想定した社はなかった。

安全委が1990年に定めた原発の安全設計審査指針でも「長期間にわたる電源喪失は、送電線の復旧、非常用発電機の修復が期待できるため、考慮する必要はない」とされていた。

一方、原子力安全基盤機構が昨秋に公表したシミュレーションでは、福島第一原発の2~5号機と同じタイプの沸騰水型軽水炉(出力80万kw)について、電源を喪失し、注水不能になって約1時間40分後に核燃料の溶融による落下が始まり、約3時間40分後に原子炉圧力容器が破損、約6時間50分後には格納容器も破損すると予測された。

最悪の事態が予想されながら、国や電力会社が対策を怠っていたこととなる。

 

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付記 「ごまめの歯ぎしり メールマガジン版ー河野太郎の国会日記」

明日(4/20)の外務委員会の質問通告です。国会改革の申し合わせの一環として公表します。

  外務大臣は、浜岡原発の安全性を海外に向けてどのように説明するのか。
  保安院はなぜ、浜岡原発の停止を求めないのか。

 ↓  

今日の質疑を要約するとこんな感じです。詳しくはビデオライブラリーを見てください。
私の質問は9時から35分間です。

ビデオライブラリーはこちら。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib2.php?u_day=20110420 の外務委員会

 問い 保安院はなぜ、浜岡原発の停止を求めないのか。
 答え むにゃむにゃむにゃなので、安全だ。
 
 (中略)

夜、ルクセンブルク大使公邸で、ルクセンブルクの副首相・外務大臣の歓迎夕食会が開かれ、その席上で、元通産官僚が、日本では自動車事故で毎年何千人死んでいる、原発の事故でこれまで何人死んだんだとのたまわった。それを聞いて、出席していたヨーロッパ人は、みんな僕の方を向いてウインクした。日本の原子力行政がいかにひどいかを説明するよりも、百倍、日本の原子力問題がはっきり副首相には伝わった。


目次、項目別目次

http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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