火星探査機の着陸用パラシュートに帝人のアラミド繊維

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帝人は8月28日、NASAの無人火星探査機 Curiosityと超音速パラシュートとをつなぐサスペンション・コード(吊り下げ用のコード)の素材として、帝人テクノプロダクツのパラ系アラミド繊維「テクノーラ」が採用されたと発表した。

宇宙船 Mars Science Laboratoryは8月5日、火星の大気圏に接近するにつれて火星の重力に引かれて加速、時速2万1240キロで大気圏に突入した後は、超音速パラシュートによって減速し、降下部分(Decent stage)がロケットエンジンを点火してさらに減速。上空約10mの地点で滞空し、クレーンを使って1トンのCuriosityを火星のGale Craterに吊り降ろした。

2012/8/6 火星探査車Curiosity、着陸に成功

この超音速パラシュートは、「テクノーラ」製のサスペンション・コードを80本装着しており、コードも含めると総重量約60kg、直径約15m、全長は16階建てのビルに匹敵し、これまでに製造されたパラシュートの中で最大のサイズ、最高の強度を誇る。

NASAの計算によると、火星着陸時にこのパラシュートが受けた重力は9Gで、これは80本の「テクノーラ」製サスペンション・コードが、27トンの重量に耐えたということになる。

同コードは、実際に72.5トンの重量に耐え得る強度を備えており、さらに寸法安定性、耐熱性などの「テクノーラ」の優れた特性がNASAに高く評価され、採用された。

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帝人は「テクノーラ」を独自に開発し、1987年に生産を開始した。

「高強力」、「耐疲労性」、「寸法安定性」、「耐熱性」、「耐薬品性」の特徴を有しており、産業用のロープやケーブル、光ファイバーケーブル、ゴムベルトやホース、コンクリートなど、幅広い製品の補強材として使用されている。

アラミド繊維はDuPont(日本では東レ・デュポン)と帝人が世界の市場を二分している。
(帝人とDuPontはアラミドペーパーで折半出資の合弁会社 デュポン帝人アドバンスドペーパーを設立している。)

韓国のKolonは1979年にアラミドの基礎研究を開始、1994年に完成させ、2005年末から商業生産を開始したが、DuPontに敗訴している。

   
2011/9/21 DuPont、アラミド繊維の技術盗用裁判で韓国のKolonに勝訴

3社の状況は以下の通り。

  パラ系アラミド メタ系アラミド 2009年生産量
(新聞情報)
poly-p-phenylene-
terephthalamide
左に
ジアミノフェニレン-
テラフタルアミドを共重合
poly-m-phenylene-
isophthalamide
DuPont Kevlar®   Nomex® 28,000 t 
帝人    Twaron®
(オランダで生産)
テクノーラ®
 
コーネックス®
 
25,000 t 
Kolon Heracron®     5,000 t  


Twaronについて:

Courtauldsの繊維部門Enkaが開発した。
DuPontとの特許紛争があったが、1988年に和解している。 

1998年にAkzoNobel がCourtauldsを買収、EnkaとCourtauldsの繊維、化学部門を統合して
Acordis設立した。

その後、1999年にCVC CapitalがAcordisを買収した。)

日本では1987年に住友化学とEnkaが日本アラミドを設立した。
2001年に帝人がAcordisのアラミド事業(日本アラミドも)を買収した。



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