寧波で大規模デモ受け、SinopecのPX増設取り止め

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浙江省の寧波市政府は10月28日、Sinopecが計画していたパラキシレン工場の拡張を中止することを決めた。
パラキシレンによる健康被害を懸念する地元住民による抗議デモが、10月28日まで7日連続で発生したことを受けた措置。

Sinopecの石油精製・石油化学コンプレックスの拡張計画は中断し、再検討する。
計画のうち、パラキシレン増設については計画を取り止める。

なお、既存のパラキシレンについては触れられていない。

共産党大会が11月8日に開幕するが、国の公安当局は地方政府に対し、指導者交代を前に騒乱を避けるためあらゆる手段を講じるよう要請しており、市政府は社会の安定を優先した。

しかし、デモ隊は市長の辞職も要求するなど当局への不信感を募らせており、緊迫した状態が続いている。


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Sinopec子会社の鎮海煉油化工は2009年12月に浙江省寧波市の鎮海地区にエチレンコンプレックスを完成させた。

 

 

 

 

 

 

 

 





  既存
   千トン
第一期
   千トン
技術
Refinery  

23,000

 
エチレン    1,000  
LLDPE     450 Unipol
PP   200   300 Sinopec
EO/MEG     650 Dow
BTX  1,000   600  
PX   500   Axens (IFP group)
エチルベンゼン     650  
MTBE      110  
Butene-1      40  
Butadiene     160  
SM(JV)     620 Lyondell  
 SM/PO併産
PO (JV)     285
PG (JV)     100 Lyondell
尿素   600    


ZRCC
Lyondell 20074月に50/50製造JVNingbo ZRCC Lyondell Chemical Company を設立した。

2010/3/4 シノペック鎮海煉油化工、新エチレンセンターのポリプロ工場を先行稼動

今回、Sinopecは増設計画を実施しようとした。

投資額は557億人民元(89億米ドル)で、Refinery 1500万トン、エチレン 120万トンのほか、能力は明らかにされていないが、PE、PPのほか、パラキシレンを含んでいる。

10月初旬から、健康被害が出るとして住民が計画撤回を求め始めた。

市政府は、工場に近い住民の移転を約束したり、環境保護対策を発表したが、住民は受け入れを拒否していた。

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中国ではこれまでもパラキシレンに対する反対運動が相次いでいる。
最初は下記の厦門でのデモで、この事件からパラキシレンは恐ろしい化学物質との情報が浸透したと思われる。

2006年に台湾資本のDragon Group(騰龍グループ)が福建省厦門の海滄投資区で芳香族とPTAプラントの建設に着工した。

しかし、2007年にインターネットで「(パラキシレン工場で)事故が起こると何千トンもの毒物が放出される」との情報がインターネットで流れ、大規模のデモが発生した。"I Love Xiamen, No PX ". といったビラが厦門市中にばらまかれた。

この結果、計画は中断され、2007年12月にこれを福建省Zhangzhou市の古雷半島に移転させることが決定、2009年5月になって、古雷半島で2年遅れで建設が始まった。

2007/6/11 中国のインターネット反対運動が石化計画を止め


2011年8月に遼寧省大連市で8月14日、化学工場の撤去を求める市民およそ1万2,000人が市政府庁舎前に集まり、抗議を始めた。

撤去を求めているのは、大連の市街地から北東約20kmの大孤山石化産業園区の沿岸部にある大連福佳・大化石油化工有限公司の工場で、パラキシレンを生産している。

台風が接近した際、工場から約50mの距離にある防波堤が決壊したが、防波堤のすぐ近くに保管されていたパラキシレンが漏れ出す恐れが強まり、付近住民らが避難する騒ぎとなった。

市政府は当初、工場の移転を一つのオプションとして検討するとし、同時に有毒物質を出来るだけ早く取り除くとしていたが、夕方になり工場の即時操業停止と早期移転を決定し、抗議活動は収束した。

2011/8/15 中国・大連で化学工場の撤去求め デモ 

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中国では住民の権利意識が高まり、環境面から工場建設に反対する動きが高まっている。

本年7月2日、四川省什邡市で化学工場建設に反対する住民2万人による抗議デモが発生した。

亜鉛精錬大手の四川宏達グループが6月29日、金属モリブデンなどの精錬工場の建設を始めたのが発端。7月1日の夜、建設に反対する住民約1万人が抗議デモを起こし、翌日には2万人に膨れ上がった。

工場が完成すれば、年間 モリブデン4万トン、銅40万トン、硫酸180万トンを精錬する見通しだった。
モリブデンや銅などの精錬は汚染リスクが高く、住民らは「死神が近づいている」と不安を募らせた。

当局が工場建設の中止を発表したため、騒ぎは沈静化した。


7月末には江蘇省南通市にある王子製紙の工場から出る排水が、環境汚染を引き起こす恐れがあるとして、住民1万人以上が抗議デモを始めた。

問題の工場は江蘇王子製紙(王子製紙 90%、南通市経済技術開発区総公司 10%)の南通工場で、南通市の経済技術開発区にあるが、南通市政府は廃水を南通市が建設する約100kmのパイプラインで黄海に排出することとしていた

住民の反対を受け、市政府は「パイプラインの建設計画を永遠に取り消す」と発表した。

2012/8/1 王子製紙の排水に抗議、中国江蘇省でデモ 


 


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