日本触媒 事故の中間報告発表

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日本触媒は1月21日、9月29日の事故の中間報告を発表した。

日本触媒 事故調査委員会中間報告

2012年9月29日 14時35分頃、日本触媒姫路製造所において、高純度アクリル酸精製塔のボトム抜出液を一時貯蔵する中間タンク(機番V-3138、公称容量70m3)が爆発・火災を起こし、隣接するアクリル酸タンク、トルエンタンク及び消防車輌にも延焼した。

この事故で、消防署員1名が死亡、合計36名が負傷した。

2012/10/1  日本触媒・姫路製造所で爆発事故


 

中間タンク(V-3138)の概要:

精製塔の停止時等に精製塔からの抜き出し液を一時貯蔵する中間タンクであり、通常は液の出入りはない。
タンク内部には、冷却水コイルが設置されている。(下部のみ)
アクリル酸は引火性液体のため、タンク空間部にはM-Gasでシールしている。
タンクの貯蔵液は送液ポンプで液面計リサイクル及び天板リサイクルする。

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姫路製造所では事故前の9月18日から20日の3日間にわたって全面停電による電気・計装保全工事が実施され、その後、各製造設備を順次、スタートさせていた。

9月25日9時30分頃より回収塔能力アップのテスト準備のため、V-3138 の液溜めを開始した。

事故の原因は以下の通りと推定された。

V-3138の冷却水コイル上面より上部の液は冷却されにくくなり、貯蔵液縦方向に不均一な温度分布が生じた。
その結果、比較的温度が高い領域において、アクリル酸の二量体(DAA)生成反応が緩やかに進行、この反応熱が温度を徐々に上昇させた。
天板リサイクルを実施しなかったために、上部が冷却不足となった。
V-3138 には温度計が設置されておらず、温度上昇を検知できなかった。〔温度検知および温度監視の不備〕
温度の上昇の結果、アクリル酸の重合反応が開始し、重合熱により温度が更に上昇した。
   
アクリル酸二量体が、高温時において早い反応速度で生成することは認識していたものの、その反応熱がタンク貯蔵液の温度上昇まで繋がる潜在的危険性があることを十分に認知していなかった。

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驚くべきことに、同社では潜在的危険性を十分に認識していなかったという。

このため、温度の監視をせず、本来なら計器室で常時温度を監視すべきであるのに、タンクにさえ温度計が設置されていなかった。
また、貯蔵量を増やす際には、冷却水コイルのない上部に天板リサイクルをすべきだが、その必要性も考えなかったのであろう。

自社で消火作業を行い、事故の通報が遅れたのも、爆発の危険性を認識していなかったからであろう。

今回の作業は特別な作業ではないため、これまでに事故が発生しなかったのが不思議なくらいである。

2012年 回顧と展望 (2012/12/25) の後半部で化学工場の事故多発を取り上げている。

(企業トップの発言で) 世代交代で、マニュアル通りに運転するだけで、各プロセスでの反応の意味や潜在的な危険性を認識せず、異常事態時に対応が出来ないというのである。

まさにこの通りで、ぞっとする。

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また、「事故当時の報道では、出入りの業者は火災等の場合、消防への直接通報を禁止されていたという」と述べた。

日本触媒は1月21日、これを報道したテレビ朝日「報道ステーション」(2012/10/2)に抗議した。

「消防への通報が遅れていた。」「その理由は何か」とした上で、「会社の上の方から、直接、消防の方には連絡するなという指示が出ていたということがわかりました。」として、事故当時現場に居合わせたと称する作業員の証言を次のとおり引用しています。

「工事に入る前に安全教育というのを2~3時間受けるんですね。で、そのなかで、何か異常を見つけても、勝手に、その、消防署には連絡しないでほしいということと、まず担当者に連絡して所内の固定電話からかけるようにということを言われておりました。」

更に、下請業者が個人の判断で通報すると内部基準に照らされて罰則を受ける可能性があり、萎縮して通報できなかったと話す。

同社では、「目的は、携帯電話の電波による製造所計器類の誤作動防止及び製造装置の爆発防止のためです。そのため、当社社員を含め、事業者の個人の携帯電話の現場持ち込みは禁止されています。従って本件対応の目的は、専ら安全上の理由によるものです 」とし、報道されたような「隠匿を目的」として「罰則を背景に事業者を委縮させる」ものではないとしている。

        http://www.shokubai.co.jp/ja/news/news0100.html


 


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