ウクライナ政府とShellは1月24日、
ウクライナでのシェールガス開発に関する契約を締結した。
DavosのWorld Economic
Forumの会場でウクライナの大統領が見守るなか、ShellのCEOとウクライナのエネルギー相が調印した。
開発するのは東部のKharkiv とDonetsk地区のYuzovskaガス田。ウクライナ政府によると、2018年から年間で70億~200 億立方メートルの生産を計画。同国のガスの年間消費量の最大4割に相当する。
生産分与協定の期間は50年で、シェルは権益の5割を取得する。
残り5割はNadra Yuzovska 社で、同社はウクライナ政府が90%出資している。
投資額は100億ドルを超える見込みで、欧州のシェールガス開発では過去最大の規模となる。
シェルは2012年5月に入札でこのYuzovskaガス田の開発権を手中に収めた。
同時にChevronも西部のLvivとIvano-Frankivsk地区のOlesskaガス田の開発権を得ている。
米エネルギー省エネルギー情報局の資料によると、ウクライナのシェールガス埋蔵量は約42兆立方フィートで欧州4位。ウクライナ自身の推定埋蔵量はこれをはるかに上回る。
技術的に回収可能なシェールガス埋蔵量(兆立方フィート)
ポーランド 187 フランス 180 ノルウェー 83 ウクライナ 42 スウェーデン 41
欧州のシェールガス |
資料: World Shale Gas Resources: An Initial Asse ssment of 14 Regions Outside the USA (2011/4)
ウクライナはロシアとの間で、ロシアの天然ガスの価格を巡り、長期にわたり争っており、EUにも影響が出た。
2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止
ロシアとしては、EUへの加盟も視野にいれるウクライナに欧州向け天然ガスパイプラインを抑えられるのは問題で、この対策として北側のNord Streamを建設したが、今回、南側のSouth Streamの建設も開始した。
2012/12/13 ロシア、サウスストリームパイプライン計画着工
ウクライナは、自国でのシェールガス開発により、ロシアへのエネルギー依存を引き下げる。
ウクライナのほか、ポーランド、ルーマニアなど中・東欧を中心にシェールガスの開発計画が相次いで浮上しており、これらの開発が進めば、欧州向けの天然ガス輸出を収益源としてきたロシアにとっては、戦略の見直しが必要となる。
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欧州ではシェールガス開発に対する考え方が国によって大きく異なっている。
以下、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の「欧州におけるシェールガス開発動向」(2012/7/19)
欧州委員会 |
現在の手順が既存のEU法(水質汚濁防止や使用薬剤に関する規制他)と重大なギャップがなく、直ちにEU法を改正する必要がない、と発表。(2012/1) |
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積極的な推進 | ポーランド |
・2011年までに試掘井が23坑掘削され、12年末までに更に41坑が掘削予定 ・ポーランド地質調査所はEIAの埋蔵量推定を下方修正 ・Exxonは試掘結果を基に撤退を表明 |
ウクライナ | 上記 | |
リトアニア | 2012年6月、同国初のシェールガス探鉱ライセンス入札を開始 | |
推進するも 抗議運動あり |
ルーマニア | Chevronへのライセンスに対する抗議活動が発生、政府内にモラトリアムの発動を伺う動き |
スペイン | バスク地方政府は、シェールガスの開発を望むが、複数の環境保護団体が、抗議運動を実施 | |
モラトリアムを検討 | チェコ | 政府が2年間のモラトリアムを計画中 |
ドイツ | 実質的なモラトリアム状態 環境省は、水圧破砕技術を規制する法律を準備中(使用可能な薬剤の制限等) |
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水圧破砕の使用を禁止 | フランス | 2011年6月、水圧破砕の禁止を議会で採択 2011年10月、2企業3鉱区のシェールガス探鉱鉱区を撤回 |
ブルガリア | 2012年1月、水圧破砕の禁止を採択 2012年6月、在来型資源に対する水圧破砕の使用を許可 |
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論理的な対応 | 英国 | 2012年7月、独立調査機関が、ベストプラクティスの適用と厳格なルール適用により水圧破砕活動は安全とのレポート発表、リスクの可能性に対し、理論的検証実施中 |
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