核燃料の再処理問題

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米科学誌 The Bulletin of the Atomic Scientists は1月14日、オバマ大統領宛ての公開書簡を発表した。
http://www.thebulletin.org/web-edition/features/open-letter-to-president-obama-the-time-the-doomsday-clock-five-minutes-to-midn

同誌はManhattan Projectに参加したシカゴ大学の科学者たちが1945年に設立したもので、1947年に世界終末時計(Doomsday Clock)を作った。

書簡は同誌の理事会が作成したもので、タイトルは 「終末時計は真夜中の5分前」となっており、
・核兵器の役割低減や一層の核削減を大統領に求め、
・核物質の管理強化に向けた戦略が必要と指摘し、核拡散の潜在的リスクを避けるため、日本に六ケ所村での再処理を断念させるとともに、韓国に対しても再処理構想を見直すよう求めるべきだと訴えている。

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最近、日本の核燃サイクルが破綻しており、六ヶ所村の再処理工場も、高速増殖炉も撤退するしかないという2つの報告が出た。

1)六ヶ所村再処理工場

毎日新聞が2月2日から6回にわたり、「虚構の環(サイクル) 再処理撤退阻む壁」という連載を行った。

核燃サイクルは資源に乏しい日本が「準国産エネルギー」を目指し60年代後半から具体化させた。しかし再処理工場の完成は19回延期され、再処理後の燃料を使うはずの高速増殖原型炉「もんじゅ」がトラブルで停止したままである。

実際には政府も業界も、ずいぶん前から、核燃サイクルは「完成のめどの立たない虚構」と考えているが、責任問題、費用負担問題、原発への影響などから撤退に動かず、国民に嘘をついてきたという。

2012年9月、民主党のエネルギー・環境調査会が「30年代に原発ゼロを目指す」「核燃サイクルを一から見直す」とする政府への提言を決めた。
日本原燃が
提示した「ひな型」をもとに六ヶ所村が「再処理堅持」の意見書を可決、「国際問題になりかねない」との意見書は猛烈に効き、「見直す」とする党の方針はわずか8日で覆った。

「(2003年)村田成二・経産事務次官が『六ケ所から撤退できないか』と提案してきた。電力から『撤退したい』と言えという。冗談じゃない。国から言い出し国が責任をとるべきだと考えた」(東電首脳)
言い出した方が責任を負う。だから言い出せない−−。この構図はエネ庁内部で「ばば抜き」と呼ばれた。

再処理工場の重大な弱点として、分割発注を挙げる声は根強い。
国の原子力政策作りを担う原子力委員経験者の一人が明かす。「プラント設計がばらばらで、分断されて施工している。うまくいくわけがない。トータルで仕切っている会社もない」

2004年4月27日、経産省職員2人は意を決して自民党商工族で大臣経験もある重鎮に接触した。撤退には政治の後押しが不可欠だ。
重鎮は黙ったまま聞き、説明が終わるとこう言った。
「君らの主張は分かる。でもね。サイクルは神話なんだ。神話がなくなると、核のごみの問題が噴き出し、原発そのものが動かなくなる。六ケ所は確かになかなか動かないだろう。でもずっと試験中でいいんだ。『あそこが壊れた、そこが壊れた、今直しています』でいい。これはモラトリアムなんだ」

2004年、六ケ所村の再処理工場を動かすと18.8兆円のコストが生じると公表されていた。一方、再処理工場を動かさず使用済み核燃料を地中に捨てる直接処分を選んだ場合のコスト試算について、エネ庁や原子力委、電事連などが共同で作業を進めていた。
自民党議員から「意図的に直接処分のコスト試算を膨らませろ」という意味の発言が出た。

「撤退」唱える共同研究、電力業界異論で連載中止

経産省上層部「維持」で意思統一、「撤退派」を次々更迭

「再処理事業の確実な実施が著しく困難となった場合、日本原燃は使用済み核燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置を講ずる」。1998年に日本原燃、青森県、六ケ所村が締結した覚書だ。
国も電力もこの文書に基づき「再処理から撤退
工場に貯蔵中の使用済み核燃料が各原発に送り返される収容しきれなくなり全原発が即時停止」というシナリオを最も恐れる。

現職のエネ庁課長級職員が取材に答えた。「核燃サイクルは恐らく完成しない。早く撤退した方がいいと思う。でも実際の政策となると無理」。電力会社首脳も「『サイクルをやるべきだ』とは思わない。しかし仕方がない」と言う。

2)高速増殖炉

原発推進派の池田信夫氏と止めるべきだとする河野太郎衆院議員などが2月10日に裏磐梯で開催されたG1 Summit 2013で、「核燃料サイクルは破綻しており、撤退するしかない。高速増殖炉が将来実用化しても、採算に乗らないからだ」という点で一致したという。
   池田信夫ブログ http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51842127.html

池田氏は補足して以下の通り述べている。

高速増殖炉の致命的な問題は、採算性である。
そもそも再処理の目的である高速増殖炉が経済的に意味をなさないのだ。

通常のウラン(価格130ドル/kg以下)の埋蔵量は、消費量の100年分ぐらいだが、それ以上のコストで採掘可能な非在来型ウランの埋蔵量は、・・・「きわめて保守的な推定」でも350年分である。

さらに海水中にはほぼ無尽蔵のウランが含まれているが、その精製コストも下がり、日本の原子力委員会の報告によれば25,000円/kgまで下げられる。これは通常のウランの価格基準(130ドル)の2倍程度で、今後の技術進歩で在来型のウランと競争できる可能性もあり、そのコストは核燃料サイクルよりはるかに低い。高速増殖炉が完璧で安全な技術だとしても必要ないのだ。
    池田信夫ブログ 
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51842217.html

池田氏は「使用ずみ核燃料の直接処分」(再処理せずにそのまま地下に埋める)しかないとし、候補地として、六ヶ所村や福島第一原発を挙げ、政治的には厄介だが、技術的には問題ないとしている。

河野代議士は以前から使用済み核燃料の処理が出来ないから原発を止めざるを得ないと主張しているが、ブログでは以下の通り述べている。

再処理はやめ、高速増殖炉からは撤退、使用済み核燃料をドライキャスクで暫定保管しながら、もはや守ることができない国と自治体の数々の約束について、守れないという現実を認めて具体的な方策を考えるという方向性でほぼ一致したといっても良いと思います。

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フィンランドの高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分実施主体であるポシヴァ社は、2012年12月 、世界初の使用済燃料の処分場の建設許可申請書を政府に提出したことを公表した。オルキルオト島に建設する。

日本でこれを建設し、稼働するまでには何十年もかかるであろう。それまで暫定保管で続けられるであろうか。

 


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