ロシアとウクライナ、天然ガスで再び抗争

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ロシアとウクライナが天然ガスを巡り、再び争っている。

ウクライナはロシアとの間で、ロシアの天然ガスの価格を巡り、長期にわたり争い、EUにも影響が出た。
2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止

本年に入り、ロシアのGazprom はウクライナのNaftogaz に対し、70億ドルの請求を行った。
2009年の売買契約での"Take or Pay" 条項に基づくとしている。

ウクライナは2012年にロシアから329億m3のガスを購入した。
2009年の契約では購入義務量は毎年 520億m3で、20%の引き下げは可能となっており、420億m3が"Take or Pay" 義務量となっている。
Gazpromはこの不足量に対し請求を行った。

Gazpromの欧州とウクライナへの輸出は減っており、2012年の損益は前年比15%減となった。

これに対しNaftgasは、以前から2009年の契約が価格その他の条項がアンフェアだとして再交渉を要求している。

Naftgasは、本四半期の価格1000m3当たり430ドルという「法外な価格」であるとする。

これまで数度にわたり2012年の購入量を下げると通知しており、支払うべき金額は支払い済みであり、支払いの根拠がないとしてGazpromの要求を拒否した。


一方でウクライナは、国内でのシェールガス開発を進めるとともに、欧州から安いガスを大量に購入し、ロシアからの輸入を更に引き下げることを狙っている。

ウクライナ政府とShellは1月24日、ウクライナでのシェールガス開発に関する契約を締結した。
  
2013/1/29 Shell、シェールガス開発でウクライナと正式契約 

西部のLvivとIvano-Frankivsk地区のOlesskaシェールガス田の開発権を得ているChevronとの間でも正式契約に向け動いている。

別途、2012年8月に黒海沖合の天然ガス開発で、ExxonMobilが中心となり、Shell、ルーマニアのOMV、ウクライナのNadra Ukrainyが参加するコンソーシアムが落札したが、本年中に正式契約することを予定している。

ウクライナは供給先の多様化を狙い、スロバキアとハンガリーのガスの輸入交渉を行っている。
昨年11月には、Gazpromより安い価格でドイツのRWEからガス輸入を開始した。
また、トルコからブルガリア、ルーマニア経由でLNGを輸入することを検討している。

但し、欧州各国側は、Gazpromからのガス輸入契約に再販禁止条項があるため、問題となることを恐れ、ウクライナへのガス供給に積極的ではない。

ウクライナ大統領は、今回の70億ドルの請求問題で何度もEUに書簡を送ったが、なんら支援の表明がないと不満を表している。

また、需給状況にもよるが、欧州からのガスは必ずしも安くはない。

ウクライナの姿勢は価格面でロシアから譲歩を引き出す戦術とも見られるが、これに対しロシア側は、値引きの条件として、ウクライナが関税同盟(ロシア、ベラルーシ、カザフスタンが加盟)に参加するか、欧州に通じるパイプラインの経営権を渡すことを挙げている。

 

ウクライナはEUへの参加を希望しているが、EU側は現政権が野党指導者のユーリア・ティモシェンコ前首相を刑事起訴・拘束したことを問題視し、進展していない。



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