三菱ケミカルホールディングス、中期経営計画を下方修正

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三菱ケミカルホールディングスは3月5日、中期経営計画APTSIS 15(2013年度-2015年度)の説明会を開いた。

2012年度(2013年3月期)見通しがAPTSIS 15の当初計画に対し大幅なギャップを生じていることを勘案し、「基本戦略は変更しないが、実行可能な目標を再設定する」とし、2015年度(2016年3月期)の営業損益予想を大幅に下方修正した。

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同社は2008年5月、2008年度-2010年度の新中期経営計画 APTSIS 10の策定 を発表した。

APTSISは、強い企業体として持続的成長を遂げるために欠かすことのできない6つの要素 であるAgility、Principle、Transparency、Sense of Survival、Internationalization、Safety, security and sustainabilityの頭文字からとった。

同社は2010年3月に三菱レイヨンを子会社化し、2010年10月1日に完全子会社化したが、これを折り込み、同年12月に、2011年度から2015年度を対象とする新中期経営計画「APTSIS 15」を策定した。

この時点の2010年度の営業損益予想は三菱レイヨンの連結効果もあり、前年度実績の663億円を著しく上回る2,030億円であったが、2015年度の営業損益を、機能商品とヘルスケア分野でのアライアンスとM&Aによる「飛躍」の利益 700億円を含んで、4,000億円とした。

2010年度の営業損益実績は2,265億円と予想を更に上回ったが、翌2011年度は 特に素材部門が大幅な減益となり、1,306億円に減少した。

2012年度は業績は更に悪化し、現時点での予想ではAPTSIS 15での目標の2,300億円に対し、1,000億円まで減少すると見込まれている。

主な問題点は以下の通り。

素材(テレフタル酸、ポリオレフィン、フェノール・PCチェーン等):
  景気後退による市況低迷、中国を含む新興国の過剰投資による需給バランス悪化

グリーンエネルギー(LiB、LED関係、炭素繊維・複合材料等):
  市場の立ち上がり遅延、過剰投資による需給バランス悪化

フラットパネルディスプレイ関連(OPLフィルム、PETフィルム、PMMA導光板等):
  欧州景気低迷や中国成長鈍化、ニーズ変化に伴う市場縮小

これを受け、今回、基本戦略は変更しないが、目標と事業管理手法を見直すこととした。

自助努力による改善を重視、セグメントごとに実行可能な目標を再設定した。
機能商品とヘルスケア分野でのアライアンスとM&Aによる「飛躍」も、700億円から200億円に減らした。

なお、前提条件を一部変更した。
 ナフサ価格(2013~2015年度):55,000円/kl65,000円/kl
 為替レート:80円/$→90円/$


セグメント別営業損益対比は以下の通り。

  2010/3 2011/3 2012/3   2013/3   2016/3
実績 実績 実績 計画 予想 差異 計画 見直し 差異
機能商品 エレクトロニクス
アプリケーションズ
-14 10 -53 120 -40 -160 300 50 -250
デザインド
マテリアルズ
133 365 240 540 240 -300 1,000 800 -200
ヘルスケア 710 851 764 790 770 -20 1,200 1,100 -100
素材 ケミカルズ 69 530 149 350 20 -330 350 250 -100
ポリマーズ -225 550 254 480 10 -470 700 350 -350
62 45 61 70 75 5 100 100 0
全社 -73 -86 -108 -50 -75 -25 -50 -50 0
Contingency
(安全をみたもの)
            -300   300
飛躍 (アライアンス + M&A)             700 200 -500
合計 663 2,265 1,306 2,300 1,000 -1,300 4,000 2,800 -1,200



当初のAPTSIS 15
 
今回見直し

 

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化学業界とその周辺を取り巻く状況は大きく変わりつつある。

「素材」分野では、海外では中東で依然として設備新設が盛んである。

従来の計画と異なるのは、これらでは汎用品だけでなく、最新技術を入れた高付加価値製品が生産されることである。
これまで安泰であった製品も今後はそうではなくなる。

さらにシェール革命を受けて、米国の天然ガス価格が大幅に下落し、米国の石油化学産業が大々的に復活しつつある。

2012/12/25      2012年 回顧と展望

「機能商品」分野では、液晶関連や太陽光発電(太陽電池、シリコンなど)のように、世界中のいろんな分野の企業が新規成長分野に競って参入することとなったため、状況は短期間で激変する。

「ヘルスケア」分野でも世界のトップメーカーによる生き残り競争が熾烈である。

今後もこれまでは考えられなかった状況変化が起こり得ると思われる。

 









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