肺がん薬イレッサ訴訟、遺族側が全面敗訴へ 最高裁決定

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肺がん治療薬「イレッサ」の副作用をめぐり、死亡した患者2人の遺族が、販売元のアストラゼネカと国に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(寺田逸郎裁判長)は4月2日、国への請求について原告の上告を受理しない決定をした。

国の賠償責任を否定した2011年11月の二審・東京高裁判決が確定した。

アストラゼネカへの請求については同日、原告の上告を受理し、判決期日を今月12日に指定した。
ただ、二審の結論を見直す際に必要な弁論を開かないため、アストラゼネカの賠償責任も否定した同判決が維持され、遺族側の全面敗訴が確定する見通し。

最高裁は、医薬品の添付文書と製造物責任法(PL法)の関係について初の判断を示すとみられる。

付記
最高裁第三小法廷は4月12日、原告の上告を棄却した。遺族側の全面敗訴が確定した。

なお、大阪高裁で訴えを退けられた患者側が最高裁に上告しているが、異なる結果が出ることは考え難い。

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イレッサで深刻な副作用を受けた患者と副作用によって死亡した患者の遺族計15人が、国とアストラゼネカに損害賠償を求めた訴訟で、東京、大阪両地裁は、原告側の和解勧告の上申書に基づき、事前に協議して、2011年1月7日に和解勧告した。

しかし、政府は1月28日、東京、大阪両地裁の和解勧告に応じないことを決めた。アストラゼネカも勧告受け入れを拒否した。

2011/1/31   政府、イレッサ訴訟で和解勧告拒否

このため、両地裁で判決が言い渡されることとなった。

地裁判決と、その後の高裁判決の概要は以下の通り。

東京 東京地裁 判決 国とア社に1760万円の支払いを命じる
ア社 イレッサは特定の患者に高い効能、効果があり、製造上の欠陥はない
当初の添付文書の記載では医師らへの情報提供が不十分で、指示・警告上の欠陥
(PL法上で規定する「通常の安全性を欠いた状態」)
添付文書に致死的となる可能性を記載していれば、間質性肺炎で死亡することはなかった
国は承認前の時点で副作用による間質性肺炎で死に至る可能性があると認識
安全性確保のための必要な記載がない場合、国は記載するよう行政指導する責務がある。
間質性肺炎の危険性を目立つように記載するよう指導しなかった国の対応は違法
東京高裁 判決 地裁判決取り消し、遺族側主張を全面的に退ける
ア社 イレッサには有用性があり、製造における設計上の欠陥はない
イレッサの初版添付文書に警告欄がなく、副作用が致死的になり得るとの記載がなくても、指示・警告上の欠陥ではない

専門医が処方する薬剤
専門医であれば間質性肺炎による死亡の可能性を認識
国内の治験で死亡例はなく、海外の死亡例も因果関係があるとまでは言えない

欠陥があるとの前提事実がない以上、規制権限の不行使が違法かどうか論じるまでもない
大阪 大阪地裁 判決 ア社原告9人に計6050万円の支払いを命じる
ア社 警告欄に記載するなどして注意喚起を図るべきだった。
緊急安全性情報配布(2002/10)前は製造物責任法上の欠陥があり、賠償責任あり。
添付文書に関する行政指導は必ずしも十分ではないが、当時の知見のもとでは一定の合理性がある。
国家賠償法上の違法はない。
大阪高裁 判決 大阪地裁判決を取り消し、原告側の全面敗訴
ア社 担当医は肺がん治療を手掛ける医師であり、添付文書の重大な副作用欄を読めば、間質性肺炎の危険性を認識できた
副作用欄の4番目だからといって、担当医が致死的でないと理解するとは考えにくい
治験や海外症例などを含め、副作用の間質性肺炎による死亡は11例あったが、因果関係が明確と言えるのは1例で、「一般的な副作用を超える副作用を予測することは困難だった」
イレッサ自体に問題がない以上、責任はない



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