カネカ、医療機器事業買収

| コメント(0) | トラックバック(0)

 

カネカは4月5日、医療機器の消化器領域の内視鏡処置具への事業展開・研究開発を加速させるために、同領域でユニークな技術および製品を持つリバーグループと株式譲渡契約を本年3月に締結したと発表した。

買収するのはリバーセイコー(2013年2月にリバー精工から社名変更)と子会社のリバーメディカル、メディカルリヴで、今後リバーセイコーが他の2社を吸収合併したのち、7月1日をめどにカネカが同社の80%の株式を取得する。

リバーグループは医療機器メーカーに未滅菌医療機器などのODM供給を10年以上行っており、内視鏡処置具を中心に特許も多く保有している研究開発型のメーカーである。

1981年に西村製作所が設立され、内視鏡処置具の製造に携わった。1988年にリバー精工となった。

主要製品は生検鉗子(組織採取用)と止血鉗子で、TVの
『ガイアの夜明け』、『がっちりマンデー』、『夢の扉』で取り上げられた。(鉗子は手術用はさみ)

2011/7/26 TV東京 『ガイヤの夜明け』

長野県岡谷市、精密機械工場が集まるこの町に、全国の医師たちが詰めかける会社がある。リバー精工は、大手医療機器メーカーとは違ったアプローチでユニークな製品を作り出す会社。社長の西村幸(みゆき)(60歳)氏。元々、モノづくりの世界に身を置いていたわけではない。
実は、法務省の官僚。地元・長野に戻った西村氏の目にとまったのが、家内制手工業で作られる医療器具の部品だった。人の為に頑張れるのはこの仕事だと思い、半年間弟子入りし技術の取得に没頭した。
その後リバー精工を立ち上げ、数々の医療機器を開発していくこととなる。製品の特徴は、全国の大学病院の医師と、共同開発をしていくということ。
通常、医療機器メーカーが開発から生産し、その器具を医師たちは使いこなそうと努力する。しかしリバー精工の場合は逆。あらかじめ医師たちから要望を聞き、共同で開発をする。例えば、医師の要望から、ナイフ型だったカテーテルの処置具を、自在に回転するハサミ型のものにした。これまでに比べ確実にガン細胞だけを除去することができ、手術時間を大幅に短縮させることに成功した。
そんな折、西村は5年前に大腸や胃など5つのガンがあることが判明した。それ以来、自らもガン患者の身として、患者にとっても負担の少ない器具を作ることを目指している。
リバー精工の医療機器は、最近では海外からも注目され始めている。世界中からその処置具を試してみたいというオファーが来ているのだ。そんな時起きた震災。日本製品の風評被害が世界で巻き起こり、興味を示していた中国側の輸入代理店からは、安全性を証明するよう求められた。日本の最先端医療を世界に広めていくために、西村氏はある作戦を考えていた。

2012/8/12  TBS がっちりマンデー

諏訪地区のスゴイ人が選ぶスゴイ人四人目は、長野県岡谷市にあるリバー精工の西村幸会長。西村さんは世界で一つの刃付きの生検鉗子という医療器具を作っている。生検鉗子の合わせ目を刃に出来るのは西村さんにしか出来ない技でこれまでに91種の特許を取得している。

2012/09/30 TBS 『夢の扉』

山形県酒田市の日本海総合病院に内視鏡によるがん治療を行う本間医師がいる。この日手術を行う患者は内視鏡治療を選択した。内視鏡のカメラの先にあるハサミで腫瘍を切り取りわずか30分で手術は終了した。この内視鏡用ハサミにより本間医師の治療件数が10倍になったという。
長野県岡谷市にあるリバー精工でその内視鏡用ハサミは産まれた。この会社では砕石バスケットやスネアーなどの医療器具を作っている。
会長の西村氏は一技術者として作業場に立つ。頭に立つ人は自分で物を作れなくてはいけないという信念があると語った。西村氏は刃渡り2ミリの刃の角度をペンチで調整する。そんな西村氏はがんの手術を経験し、負担が少ない医療器具を作りたい思い内視鏡用ハサミを開発。それまでは高い技術を要するメスが使用されていたがハサミは臓器を傷つけるリスクが少なく医師と患者にやさしい医療器具となっている。
内視鏡用ハサミの開発は6年前に始まった。本間医師は西村氏に内視鏡用のハサミが作れないかと提案した。西村は過去の経験を飛び越えるのが開発だと想い、それを引き受けた。1ミリ以下の部品が多く機械では作れないためすべてが手作業となった。開発から1年後西村氏はがんを患った。

ーーー

カネカの医療機器事業は、血液病因物質を選択的に除去して浄化された血液を再び体内に戻す血液浄化システムと、血管内治療用カテーテルを中心としたインターベンション事業を中心に展開して いる。

血液浄化システム:血液から血漿を分難し、病因物質だけを選択的に除去して、浄化された血液を再び体内に戻すシステム。
 (1)サルフラックス®(膜型血漿分離器)
 (2)リポソーバー®(LDL吸着器) 1988年 高分子学会賞
 (3)セレソーブ®(SLE治療用吸着器)
 (4)リクセル®(透析アミロイド症治療用血液浄化器)

血管内治療用カテーテル:心臓、脳、四肢などの病変部血管に細いチューブを挿入して血管内で疾患を治療するカテーテル。
PTCAバルーンカテーテルなど治療法毎に多数の製品を開発している。


カネカでは、当事業の更なる拡大を目指し、消化器領域に本格的に参入することとしたもの。
また、カネカの得意とする高分子加工技術とリバーセイコーの金属加工技術を組み合わせることで、新製品開発を促進する。

消化器領域だけでなく、リバーセイコーの技術を活用して循環器領域や他臓器(脳や腎臓など)でも再生・細胞医療への適応や、腎臓アブレーションなどへ展開し、3年後には100億円の売上増を目指す。


付記

カネカは4月12日、再生・細胞医療で使用される間葉系幹細胞を骨髄液から安全かつ効率よく分離するセレフィックBM(間葉系幹細胞分離デバイス)の欧州での医療機器承認を得たと発表した。
間葉系幹細胞は安全性や有効性が確認されつつある細胞で、iPS 細胞と同じく、再生・細胞医療で使用されることが大きく期待されている。

セレフィックBM による分離方法は、従来の遠心分離により細胞を分離する方法とは大きく異なり、特殊な不織布フィルターを使用することにより遠心分離をすることなく閉鎖系で骨髄液を処理することができる。
血液浄化システムの研究開発で培った独自の技術やノウハウを活かした。





トラックバック(0)

トラックバックURL: https://blog.knak.jp/knak-mt/mt-tb.cgi/2154

コメントする

月別 アーカイブ