TPP閣僚会合、日本の交渉参加を正式承認

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環太平洋経済連携協定(TPP) の交渉参加11か国は、4月20日の閣僚会合で、日本の参加を全会一致で承認した。

TPP閣僚会合の共同声明の要旨は以下の通り。

 ・各国が日本との2国間の協議を完了したことを確認。日本は他の参加国と同様、妥結に向けて迅速に交渉する
 ・日本は各国の国内手続きが完了したあとで交渉に参加できる
 ・日本の交渉参加でTPPは世界のGDPの40%近く、世界の貿易の約3分の1を占める
 ・日本の交渉参加はTPPの経済的な重要性を高め、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)への道筋を支える

日本は7月下旬にマレーシアで開催が検討されている次々回会合から交渉に合流する見通し。

米国には、新たな交渉参加国を認めるために米議会で90日間以上議論するという取り決め(90日間ルール)がある。
米通商代表部(USTR)は全参加国の同意を受け、議会に合意を通知する。

付記 オバマ政権は4月24日、米議会に対し日本の交渉参加を通告した。

日本の交渉参加に当たっては、ブルネイ、チリ、マレーシア、メキシコ、シンガポール、ベトナムの各国は早期に賛成したが、その他の国々は簡単には賛成せず、いろいろな条件が付いた。(後記)

ーーー

環太平洋戦略的経済連携協定 (Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement) の参加国は以下の12か国となる。


各国は以下の順で参加した。

2006/11 TPP(通称P4)発効 シンガポール
ニュージーランド
ブルネイ
チリ
(計4か国)
2010/3 (拡大)TPP
政府間交渉開始
米国
オーストラリア
ベル―
ベトナム
2010/10 追加参加 マレーシア
(計9か国)
2011/11 Broad outlineに合意  
2012/11 追加参加 カナダ
メキシコ
(計11か国)
2013/2 日米共同声明  
2013/4 追加参加支持 日本
(計12か国)

2011年11月に参加9か国は合意の概要(Broad outline)を発表した。これ以外の交渉内容は公表されていない。

1.包括的な市場アクセス(関税その他の非関税障壁を撤廃)
2.地域全域にまたがる協定(TPP参加国間の生産とサプライチェーンの発展を促進)
3.分野横断的な貿易課題(TPPに以下を取り込みAPEC等での作業を発展させる)
   ・規制制度間の整合性:参加国間の貿易を継ぎ目のない効率的なものとする
   ・競争力及びビジネス円滑化:地域の経済統合と雇用を促進する
   ・中小企業:中小企業による国際的な取引の促進と貿易協定利用を支援
   ・開発:TPPの効果的な履行支援等により、参加国の経済発展上の優先課題が前進
4.New trade challenges:革新的分野の製品・サービスの貿易・投資を促進し、競争的なビジネス環境を確保
5.Living agreement:将来生じる貿易課題や新規参加国によって生じる新しい課題に対応するため、
   協定を適切に更新

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カナダ、メキシコの参加に当たっては、次の秘密の覚書があったことが分かった。
1: 遅れて交渉した国は、既に交渉を始めている9ヵ国が合意した事項(条文)を、原則として受け入れ、再協議は認められない。
2: 交渉を打ち切る権利は、9ヶ国にあり、遅れて交渉入りした国には認められない。


日本政府は、日本の場合にこういう条件は付けられてないとしている。

安倍首相は2月22日のオバマ大統領との日米首脳会談で、自民党の参加条件である「聖域なき関税撤廃が前提でない」ことを確認し、参加に踏み切った。

日米共同声明

両政府は、日本が環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉に参加する場合には,全ての物品が交渉の対象とされること、及び、日本が他の交渉参加国とともに、2011年11月12日にTPP首脳によって表明された「TPPのアウトライン」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。

日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。

両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての二国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている。

米国との間では、以下の交渉が行われた。(4月12日 TPP政府対策本部発表)

  日本が他の交渉参加国とともに、「TPPの輪郭」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認するともに、日米両国が経済成長促進、二国間貿易拡大、及び法の支配を更に強化するため、共に取り組んでいくこととなった。
     
  この目的のため、日米間でTPP交渉と並行して非関税措置に取り組むことを決定。
    対象分野:保険、透明性/貿易円滑化、投資、規格・基準、衛生植物検疫措置等
     
  また米国が長期にわたり懸念を継続して表明してきた自動車分野の貿易に関し、
  TPP交渉と並行して自動車貿易に関する交渉を行なうことを決定。
 対象事項:透明性、流通、基準、環境対応車/新技術搭載車、財政上のインセンティブ等
TPPの市場アクセス交渉を行なう中で、米国の自動車関税がTPP交渉における最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされること、及び、この扱いは米韓FTAにおける米国の自動車関税の取り扱いを実質的に上回るものとなることを確認。
     
  日本には一定の農産物、米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にあることを認識しつつ、TPPにおけるルール作り及び市場アクセス交渉において緊密に共に取り組むことで一致

非関税措置については、米国側発表では以下の通りとなっている。

保険   かんぽ生命との公平な競争環境
透明性    
投資   外部取締役の役割強化などを含む日本企業へのM&Aの機会増
知的財産    
規格・基準    
政府調達    
競争政策    
急送便   日本郵便の手がけるEMS(国際スピード郵便)
SPS(植物検疫)   日本の食品添加物の審査手続きを早めて効率を上げるよう求める


両国の合意があれば、これら問題以外にも付け加えることができる


ニュージーランドとオーストラリアは「すべての品目を交渉のテーブルに載せる」「交渉を遅らせない」「高い水準の自由貿易を実現する野心がある」の3点を挙げ、「保証」を求めた。

カナダとの交渉は自動車関税の扱いで難航した。
日本は米国との事前協議で日本車の関税撤廃時期の先送りで合意したが、カナダが「カナダと米国の自動車産業は一体である」として、米国並みの条件を要求した。
最終的に、自動車関税をTPP交渉とは別に交渉するというカナダの提案をのんだ模様。

今後、米やカナダとの事前協議を踏まえ、日本に関税維持を求める国が増える懸念もある。

逆に、日本が「聖域」とする「コメ」「麦」「乳製品」「牛肉・豚肉」「砂糖やデンプンなど甘味資源作物」の5品目については何も決まっていない。

参考

 2010/11/10  TPP参加と農業問題
 2011/11/7    番外編 記事紹介 「TPP亡国論のウソ」:「農業の守り方を間違った」
 2011/11/16  環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉
 2013/3/18  TPPで関税撤廃した場合の経済効果についての政府統一試算

 



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