米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可

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米エネルギー省は5月17日、テキサス州のFreeport LNGに対し、日本などFTA非締結国への輸出を承認したと発表した。同社の計画には中部電力と大阪ガスが加わっており、2017年にも日本への輸出が始まる見通し。

Freeport LNGは2005年にテキサス州FreeportのQuintana IslandにLNGを海外から輸入してガスに戻す設備を完成させたが、米国内でガスの採掘が進んだため、天然ガスの液化設備を建設してLNGの輸出基地に替えることを決め、2010年にエネルギー省に輸出認可を申請した。
2011年2月には米国とFTAを締結している国に対する輸出認可を得ている。

米国はLNGを戦略物質とみなし、輸出を個別の許可制にしている。唯一の例外は本土48州に輸送不可能だったアラスカのKenai LNGの輸出だった。
米国は輸出承認に際し、米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い。


これまで非締結国に対する輸出承認を得たのは2011年5月のCheniere EnergyのSabine Pass LNG Terminalのみである。
   2012/2/24 米国からのLNG輸入問題

その後、オバマ政権はLNG輸出に向け動き始めたが、Dow Chemicalなどが反対運動を起こしている。

2012/12/7 米エネルギー省、LNG輸出に向けての報告書を発表

2012/12/12 Dow、エネルギー省のLNG輸出に関する報告に反論

後記の通り、Freeport LNGにはDow Chemicalが出資しており、そこに輸出承認が与えられたのは皮肉である。

本ブログは米国政府によるLNG輸出承認制度はWTO規則違反であるとの見方をしている。
    
2013/2/5 米国の天然ガス輸出規制はGATT違反? 

なお、LNGの輸出が制限されているため、天然ガスの需給が緩み、価格が低下しており、倒産した会社も出た。
   2013/4/5 米国のシェールガス開発会社が破産法申請

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今回、エネルギー省はFTA非締結国向けの2番目の輸出承認をFreeport LNGに与えた。

1日当たりの輸出量を14億立方フィート (LNG換算で年900万トン)までに限定し、申請は25年間ではなく20年間に短縮して輸出を認める条件を設けることで、「(米国の)公益に反しない」と判断した。

承認理由として、以下を挙げている。

反対派は承認が公共の利益に反するという証拠を示していない。
輸出は米国にとり net economic benefits となると思われる
承認により、天然ガスが供給不足になったり、天然ガス価格上昇や著しい価格変動を起こすことは考え難い。
  http://energy.gov/sites/prod/files/2013/05/f0/ord3282.pdf

Freeport LNGは年間440万トンの能力の液化設備3系列を建設中で、2017年に液化事業を開始することを目指しているが、下記の通り 2系列分について契約を締結している。

大阪ガスと中部電力は2012年7月31日、天然ガス液化加工契約に関する契約を締結した。
第1系列の液化設備においてそれぞれ年間約220万トンずつの天然ガス液化能力を確保した。
大阪ガスはFreeport のLNG基地事業にも参加している。(後記)

大阪ガスは2012年6月22日、米国テキサス州イーグルフォード地区のPearsall Shale ガス・オイル開発プロジェクトに参画することを決め、Cabot Oil & Gas Corporationとの間で、権益35%を250百万米ドルで取得すること等を定めた権益売買契約を締結した。

同社と中部電力は東京ガスとともに三菱商事が参画しているカナダシェールガス開発プロジェクトにも参加した。 
  2011/5/14 中部電力、東京ガス、大阪ガスと
JOGMEC、カナダシェールガス開発プロジェクトに参加 

BP Energyは2013年2月、年間440万トンの天然ガス液化加工契約に関する契約を締結した。

残る1系列分については、今回のFTA非締結国向けの承認枠を超えるため、既に承認を得たものを含むFTA締結国向けになるとみられる。

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Freeport LNGの概要は以下のとおり。


Dowは2003年にFreeport LNGに参加した。LNGを海外から輸入してガスに戻すために利用していた。
同社は
DowはFreeport LNGによるLNG輸出計画には反対してきたが、2012年にこの65億ドルの液化計画に参加しないことを発表した。

三菱商事は2005年1月にLNG受入基地に係わる17年間の使用契約を締結した。
同社は2004年7月にOmanのQalhat LNGとの間でLNGの長期購入契約を締結しており、これを再気化して、主にテキサス州の需要家に販売する。

大阪ガスは2008年1月30日、Contango Oil & Gasとの間で、同社が保有する米国のフリーポートLNG基地事業の全持分を譲り受けると発表した。
この事業のための特別目的会社 Turbo LNG LLC を通じて同プロジェクトに10%出資した。

この時点ではLNGの輸出は検討されておらず、LNGの輸入ー再気化事業である。
ConocoPhillips、Dow Chemical、三菱商事の3社が最大25年間に渡り基地を使用する契約を締結済みであり、長期に渡る安定した収益が見込まれるとしていた。

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今後、米国の天然ガス価格は100万BTU当たり6ドルになるとの説があるが、それでも、LNGへの加工費3ドル、輸送費3ドル(メキシコ湾岸)を加えても12ドル程度であり、現在の原油価格スライドの約16ドルと比べ、かなり安くなる。

但し、現在のLNG輸入価格は単なる原油スライドではなく、震災後の買いあさりで割高になっているもので、長期的にみれば米国からのLNGはそれ程有利でないかも分からない。


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日本企業では他に下記の各社が米国産LNGの輸入を計画し、輸出認可を待っている。

東京ガスは2013年4月1日、米国のDominion Cove Point LNGから住友商事を通じて年140万トンのLNGを輸入すると発表した。
関西電力も同日、年80万トンを輸入すると発表した。
     https://www.knak.jp/blog/2012-4-2.htm#sumisho

三菱商事と三井物産は2013年5月17日、米国のSempra Energyの子会社であるCameron LNGとの間で、それぞれ、天然ガス液化加工契約及び合弁会社設立契約(液化事業への参加)を締結したと発表した。
     https://www.knak.jp/blog/2012-4-2.htm#LNG




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