EU、中国の太陽光パネルに反ダンピング関税、中国は欧州産ワインで反ダンピング調査開始

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EUは6月4日、中国製太陽光パネルに対し、反ダンピング関税を暫定的に適用することを正式に決定した。6月6日から適用する。
12月に本調査を終え、5年間の反ダンピング関税を実施するかどうかを決める。

EUは当初平均 47.6%の税率を加盟国に提示したが、反ダンピング関税に中国が反発したことや、通商摩擦激化を避けたい加盟国の多くが慎重だったことに配慮し、当初は平均 11.8%とし、8月6日までに交渉を通じて中国側に改善がみられなければ 47.6%に引き上げることとした。

中国品はEU市場の80%以上を抑えており、その生産能力は世界の消費の1.5倍もある。中国企業の不公正な競争でEU企業は倒産の危機にある。2012年の中国の過剰能力は欧州の需要のほとんど2倍もあり、今回の措置はEUの25千人の職を維持し、更に業界で新しい仕事を作り出すこととなるとしている。

EUでは、平均ダンピング率は88%もあるが、47.6%にとどめたとしている。

EUは、中国の輸出業者、中国商工会議所との会話で問題を解決し、暫定関税を取り止める用意があるとし、また、EU・中国合同委員会を近いうちに開催し、WTOルールと戦略的パートナーシップの精神に基づき貿易関係の全ての問題を建設的に解決する用意があると述べた。

中国商務省は6月5日、欧州産ワインが中国で不当に安値販売されている疑いがあるとして、反ダンピング調査を始めると発表した。
昨年の中国の欧州産ワイン輸入量のうち約60%はフランス産で、EUの反ダンピング課税を強く支持したフランスを標的にした報復の可能性がある。

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中国の太陽光パネルの大増産により、米国やEUの企業で倒産が相次いでいる。
中国企業も経営難に落ち込んでおり、中央・地方政府による救済が行われている。

昨年来、中国の太陽光パネルを巡る貿易戦争が激化している。

EUは昨年9月に反ダンピング調査、11月に反補助金調査を開始、これに対し中国は、EU加盟国のイタリアとギリシャの"feed-in tariffs" (固定価格買い取り制度)現地の部品を中心に使っている電力会社を価格面で優遇しているのは協定違反だとして世界貿易機関(WTO)に提訴した。

更に中国商務部は欧州から輸入される多結晶シリコンに対するダンピング・補助金調査を開始した。

2012/11/14 太陽光パネルを巡る貿易戦争 

中国は世界の太陽光パネル生産量の6割を占めており、うち約85%を輸出している。中国の統計によると、2011年のEU向け輸出額は210億ドルで、中国の生産量全体の約60%を占め、反ダンピング課税が与える影響は大きい。

景気低迷が続くなか、欧州各国でこの問題で意見が分かれた。ドイツなどは太陽光パネルへの課税を決めた場合、中国が対抗措置をとることを警戒して消極的であり、中国もEU加盟国への働きかけを強めた。

メルケル独首相は5月26日、ベルリンでの中国の李克強首相との会談後、太陽光パネルへの反ダンピング課税を回避すべきだとの立場を鮮明にし、「ドイツは反ダンピング課税を避けるためにできるだけのことをする」と述べた。

EU加盟27カ国のうち、英国やオランダを含む少なくとも過半数の国が課税に反対し、賛成はフランスやイタリアなど少数派とされる。ギリシャのサマラス首相は5月中旬に訪中し、中国側と貿易や投資、海運などで協力する文書を交わした。

これに対し欧州委は、「仮決定をするのは欧州委だ」と強調。「中国が友好的な解決に動くべきだ」と述べ、中国にダンピングや不当な補助金の是正に向けた取り組みを求めた。さらに、「中国が個別国に圧力をかけているのは明らかだ」と不快感を募らせた。

EU発表の前日の6月3日、李克強総理は欧州委員会のバローゾ委員長と電話会談を行い、以下の通り述べた。

中国政府は中国・EUの太陽パネル製品を巡る貿易紛争に注目している。
本件は中国の重大な経済利益に関連し、適切に処理されなかった場合は中国側の利益を著しく損ね、また必然的に欧州側の利益を損ねることになり、中国・EU提携の大局に影響を及ぼす。
双方は貿易戦争ではなく、対話・協議により問題を解決するべきだ。貿易戦争に勝者は存在しない。

中国側は自国産太陽光パネル製品の輸出価格が安くなりすぎないように規制する案をEUに提案しているとされている。

EU発表を受けて中国が反発を強め、中国商務省は「中国政府は対話による解決に向けて誠意を示して最大限の努力をしたが、EUはこれを理解せず不公正な課税措置を取った。断固反対する」と批判する声明を発表した。

商務部は同時に、EU産ワインを対象にダンピング調査に入ると発表した。報復をちらつかせて太陽光パネルの課税に賛成に回ったフランスをけん制し、EU側から譲歩を引き出す狙いとみられる。

欧州各国の政府が補助金支給などでワイン産業を不当に保護しており、中国のワイン産業に打撃を与えていると主張、「貿易保護主義には一貫して反対する」とした。

2012年の中国のEUからのワイン輸入量は25万7千キロリットルと2009年比で4倍に膨らみ、約60%がフランスからとなっている。

 

 

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