公取委、オリエンタル白石に対する課徴金を返還

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公取委は6月5日、プレストレスト・コンクリートによる橋梁の新設工事の入札で課徴金を納付したオリエンタル白石に対し、課徴金を返還したと発表した。

公取委は2011年6月15日、国土交通省関東地方整備局と近畿地方整備局並びに福島県が発注するプレストレスト・コンクリートによる橋梁の新設工事の入札参加業者10社に対し、課徴金の納付命令を行った。(千円)

  関東 近畿 福島県 合計
オリエンタル白石 105,740 375,810 55,750 537,300
合計  592,630  1,806,540  221,070  2,620,240

これに対し更生会社であるオリエンタル白石の管財人から審判手続の開始の請求があり、審判となったが、2012年 9月25日に課徴金の納付を命ずる審決があった。
オリエンタル白石はこれを納付のうえ、 10月17日に違法であるとして審決取消訴訟を提起した。

オリエンタル白石は、公取委は課徴金債権を債権として裁判所に申告しておらず、会社更生法の定めるところにより失権しており(更生法204条1項)、納付を命じる審決は違法であるとした。

これに対し公取側は、違反行為者に対する制裁として罰金と同じであり、免責されないと主張した。

争点
(1)本件課徴金債権は、更生債権に該当するか。
(2)本件課徴金債権は、更生計画認可の決定により免責されるか。
(3)本件課徴金債権が更生計画認可の決定により免責されるかどうかにかかわらず、公取委は課徴金の納付を命ずることができるか。

2013年5月17日、東京高裁の判決があった。

まず、公取委は、独占禁止法の違反行為があると認めるときは、当該課徴金債権が会社更生法204条1項の規定により免責されるかどうかといったことは考慮することなく、課徴金の納付を命じなければならないとした。
独禁法の課徴金には繰り返し違反に対する割増の規定があり、
今後違反があった場合、再犯とする必要がある。

仮に課徴金債権は会社更生法の定めるところにより失権している(そのため、強制執行が出来ない)としても、納付を命じる審決そのものは違法とは言えないとして、オリエンタル白石の訴えを却下した。(形式論)

以下、判決書別紙で実質判断を行った。

課徴金の対象となる独占禁止法に違反する行為が更生手続開始前にされた場合には、(課徴金納付命令が更生手続開始後にされたとしても)更生債権に該当する。

更生債権に該当する本件課徴金債権は、会社更生法上は「租税等の請求権」に該当する。

会社更生法は、租税等の請求権と罰金等の請求権とを、法的性格が異なるものとして明確に峻別し、その取扱いをまったく異にしている。
本件課徴金債権について、債権届出がない場合に、罰金等の請求権について定められた免責の例外規定を類推適用して、更生計画認可決定によっても免責されないとすることは許されない。

制裁という点で性質を同じくするとしても、明文の規定もないまま、同号の規定を類推すべきであるとすることは、法律解釈の限界を超えるものであるといわざるを得ない。

原告は、平成22年7月1日に確定した更生計画認可の決定により、本件課徴金債権につきその責任を免れたものというべきである。

公取委はこの判決を受け、オリエンタル白石から公取委に対して納付された本件課徴金は「自然債務」となっており、不当利得に該当するものと解されるとし、2013年6月4日、納付された課徴金5億3730万円に利息7万3602円を加え、返還した。

「自然債務」とは、債務者が任意に弁済すれば有効な弁済となり、債務が消滅する効果が認められるものの、弁済が任意でない場合には、弁済により得た利得は法律上の原因に基づくものとはいえず、不当利得になると解されているもの。

 


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