New York市の炭酸飲料規制、控訴審でも敗訴

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New York市が肥満対策の目玉として決めた炭酸入り飲料の販売規制をめぐり、飲料業界などが差し止めを求めた訴訟の控訴審で、ニューヨーク州高裁は7月30日、市側敗訴の一審判決を支持し、控訴を棄却した。

市は判決を不服として、州最高裁に上告する方針。

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2002年1月に就任したNew York市のMichael  Bloomberg市長は市民の健康増進を最優先課題とし、まず喫煙とトランス脂肪酸に取組んだ。

間接禁煙の健康被害を強調し、2003年に市内の飲食店は事実上、全面禁煙とし、その後、公園なども全面禁煙とした。

トランス脂肪酸については、米国においては、飽和脂肪酸及び食事由来コレステロールの摂取の他に、トランス酸の摂取が冠動脈心疾患のリスクを高めるLDL コレステロール(「悪玉」コレステロール)のレベルを上昇させるという科学的知見に基づいて、 2006年1月1日以降、食品の栄養成分表示欄に飽和脂肪酸、コレステロールに加えてトランス酸の含有量も明記することが義務付けられている。

ニューヨーク市は2006年12月、全米の自治体として初めて、レストランでのトランス脂肪酸の使用を実質的に禁じることを決めた。

2006/12/11  ニューヨーク市、トランス脂肪酸の使用禁止へ

Bloomberg市長は2012年6月、市民の肥満防止対策の一環として、ソーダなど砂糖入り飲料のビッグサイズでの販売を禁止する方針を打ち出した。

禁止される容器は16オンス(約470 ml)超のもので、アイスティーやスポーツドリンクを含め、飲食店や映画館、野球場などでの販売が禁止される。

違反者には200ドルの罰金が科される。

スーパーやコンビニでの販売は認められる。
ダイエット飲料や牛乳50%超、果汁70%超の飲み物も対象外となる。

市長はかねて、砂糖入り飲料を肥満の元凶として敵視していた。
市長は2010年10月、フードスタンプでの砂糖入り飲料の購入を禁止する条例案を提示したが、砂糖入り飲料だけ禁止するのは技術的に難しいとして農務省が認めなかったため、規制の目安としてサイズに注目した。

この条例は2013年3月12日から施行される予定であったが、飲料や食品の業界団体が、市は権限を逸脱しており、小規模事業者などが不当に影響を受ける恐れがあるとして訴えを起こした。

施行予定日の前日の3月11日、地方裁判所はこの条例を「恣意的かつ一貫性を欠いている」として無効とする判決を言い渡した。

判決は、コンビニなどが対象になっていないことや、同じコップに再び注ぐ「おかわり」を禁止していない点を挙げ、「抜け穴が多く、目的が達成されない」と指摘、市議会ではなく、市の保健委員会が決定したのは権限の逸脱で、無効だと判断した。

これに対し、市長は判決を不服として控訴する意向を表明した。
市当局には規制を利用して「肥満の蔓延」を食い止める権限があると述べ、「判決に誤りがあるのは明らか」と批判した。

 

高裁は控訴審で、規制を市保健当局が決めたことについて「権限を逸脱した」と指摘、市側敗訴の一審判決を支持し、控訴を棄却した。

高裁は満場一致で、このような広範な規制は州議会や市議会で決めるべきものであり、市保健当局が決めるものではないとした。

市は判決を不服として、出来るだけ早く州最高裁に上告する方針。

市長は、施行予定日以降の4か月で2千人以上が糖尿病で死亡しており、American Medical Associationが肥満は病気であるとしているとし、市保健当局が市民の健康を守るため、重要な決定をした例はいくつもあるとしている。

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市長としての最終年を迎えたBloomberg 市長は2月14日、2013年の市政教書演説のなかで、発泡ポリスチレンの食品包装を店舗やレストランで禁止する法律を制定すると述べた。

2013/2/22 New York市長、発泡ポリスチレン容器禁止を提案

炭酸飲料とは異なり、市長はこれを市議会に提案する予定で、議長もこれに強く賛成している。

議長は、このままでは、この世の終わりに残るのは、ゴキブリとStyrofoam (Dowの発泡ポリスチレンのブランド名)だけだろうと述べている。




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