韓国、電力不足最大のヤマ場 乗り越え

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韓国では8月12日から14日にかけて 、猛暑が見込まれるなか深刻な電力不足で大停電になる恐れが予想され、政府は計画停電など緊急措置を行う可能性があると明らかにしていた。

結果的には、公共機関での冷房使用禁止など政府の大胆な節電対策、企業の生産調整、国民の節電努力などにより大停電や計画停電など最悪の事態を免れた。

電力取引所によると、14日午後3時の最大電力需要は7,802万キロワットを記録した。
節電対策を取らない場合、「52.9万キロワットの不足」と予想されていたが、さまざまな需給対策により予備電力 508万キロワットを維持した。

企業は13日に電力需要を540万キロワット減らしたのに続き、14日はさらに多い557万キロワットを削減した。

だが、残暑が続く中、9月から発電所の定期整備が続々と始まるため、電力需給は9月初めにもう一度ヤマ場を迎える。
産業通商資源部は「電力需要の推移に応じ、発電所の整備スケジュールを調整して対応する」としている。

韓国には原子力発電所23基があるが、保守点検や偽造証明書で使われていた部品の交換などのため、6基が稼働を停止している。

韓国の原子力安全委員会は5月28日、稼働中や建設中などの原発6基の安全装置に、性能確認試験の結果を示す書類が偽造された部品が使われ、一部は緊急時に十分機能しない不良品であることを確認したと発表した。

2013/5/31 韓国の原発10基が稼動中断、夏の電力不足憂慮 

原発停止に加え、無理な出力運転による火力発電所などの故障も相次いでいる。

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政府は電力不足で大停電になる恐れがあるとして8月12日から14日までの3日間、全国の公共機関で冷房の使用を禁じた。
ソウルの政府庁舎では照明も消され、半分以上のエレベーターが止まった。

韓国の産業通商資源相は8月11日、企業や公共機関、家庭などに対し、12日からの3日間の午前10時から午後6時まで、電力消費を減らすよう求めた。
長官以下の幹部は、電力消費量が多い企業約100社の経営者に一斉に節電を要請する電話をかけた。

一方では、節電目標値を達成できなかった起亜自動車や現代自動車など20社、29カ所の事業所のリストをマスコミに公表した。

電力消費量5000キロワット以上の企業2836カ所では、8月5日から30日までのピーク時間帯に電力消費量を6月に比べ3-15%節減することが求められていた。違反すれば1日当たり50万ウォンの過料で、金額は少ないが、企業名が公表される。

3%の節電を割り当てられた企業の場合、通常の操業率を維持したままエアコンを止めれば、なんとか目標値を達成できるが、5%以上の場合は、生産ラインを一部 を止める必要が出てくる。

現代製鉄は、12-14日に電炉13基のうち11基の操業を一時中断、Sオイルは12日から温山工場の石油製品生産量を削減した。
昼間の作業を夜間に回した企業も多い。

韓国政府は2006年末に2012年の最大電力需要を6712万キロワットと推定し、それに見合う発電設備を拡充した。
しかし2012年の実際の最大電力需要は当初予測を11%上回る7429万キロワットに達した。

産業通商資源部の高官は「政府が需要予測をうまくできなかった上、原子力発電の管理にも失敗したせいで、こんな状況に至った」と政府の責任を認めた。

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韓国は電気代が安いため、韓国に進出する日本企業が多い。

韓国の電気代が安い第一の理由は、発電単価の安い石炭と原子力で発電電力量の約8割をまかない、かつ韓国の寒冷な気候のため日本と比べて原子力の設備利用率が高い(95%以上)ことである が、上記のとおり、原子力発電所の多くが問題を抱えている。

これに加えて、韓国の電気料金は「政策的料金」という位置づけのもと、料金をコスト以下に設定しているという異常さがある。

これ以外にも、韓国はいろいろの問題を抱えており、今後も供給不足や大幅値上げの恐れがある。

2011/9/28  韓国の電力事情

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韓国の企業、家庭が節電に務めているなか、例外がある。

7月16日付の日本経済新聞は「韓国 電力危機、動じないサムスンの特権」 という記事を掲載した。

韓国では電力公社と政府の協議で、電力が逼迫した場合、どのように停電させるかマニュアルで決まっている。

軍事基地など国家セキュリティーに関係する施設への電力維持が最優先される。
その次の優先供給先はソウルなど大都市の官公庁施設だが、サムスンのセミコンダクター関連の主要工場はこのカテゴリーに準じるのだという。

サムスンはスマートフォンでアップルと激しい競争を世界各地で繰り広げているが、半導体など主要部材工場の安定高稼働が必要で、最先端半導体ラインでは電力供給量の上下のブレはもちろん、コンマ1秒の瞬間停電すら問題となる。

サムスンのスマホ関連工場が「政府公認の聖域」になっており、現地でこれの部材を供給する村田製作所、TDK、住友化学なども「特別扱い」の恩恵にあずかっている という。

 



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