米国対アジアのエビ戦争で逆転決定、ITCが相殺関税を否決

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世界最大のエビ消費国の米国と冷凍エビの調達先のアジア各国(+エクアドル)との通商摩擦が解決した。

メキシコ湾岸のエビ生産業者などの団体が2012年12月に、インド、ベトナム、マレーシア、中国、タイ、インドネシア及びエクアドルから輸入される冷凍エビ(warmwater shrimp)が各国の政府の補助金を武器に安売りされているとして、相殺関税制度による反補助金調査の申請を商務部と米国際貿易委員会(ITC)に行い、米国商務部が2013年1月に調査を開始した。

反ダンピング税に関しては、ブラジル、中国、インド、タイ、ベトナムから輸入された冷凍エビに対してすでに徴収が行われている。

2012年の輸入量(及び金額)は、エクアドルが7.2万トン($499.7 million)でトップ、以下、インドが6.5万トン($551.2 million)、ベトナムが3.8万トン($426.2 million)、マレーシアが1.9万トン($142 million)、中国が1.4万トン($101.9 million)となっている。
 インドは2010年から2倍以上となっている。

ITCは2013年2月11日に、上記7か国からの輸入冷凍エビが各国政府の補助金を受けていることにより米国の産業が被害を受けているというリーズナブルな証拠があるとの仮決定を下していた。

公聴会でルイジアナ州副知事は、 「貴重なメキシコ湾のエビを扱う業者に、資金力に物をいわせる外国政府との生存競争を強いてはならない」 と述べ、政府は米国のエビ漁師や加工業者を保護すべきだと訴えた。

これに対し、各国の水産業者は「不当な補助金は受けていない」などと反論、致命的な打撃を受けると訴えた。
東南アジアや中国ではバクテリアによる大規模な病害が発生しており、ダブルパンチになる。

「エビ問題がこじれれば環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉にも影響しかねない」と懸念する声も出ていた。

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米国ではダンピングの存在は商務省が、被害の存在はITCが認定する。

商務省は8月13日、5か国から輸入された冷凍エビが各国政府の補助金で不当に安く販売されているとして、相殺関税を課す決定を行った。
タイとインドネシアは対象となる相殺関税が最低率を下回るためde minimis)、免除された。

相殺関税の率は以下の通り。

エクアドル   10.13~13.51%  
インド   10.54~11.14%  
ベトナム     1.15~7.88%  
マレーシア   10.80~54.50%  
中国   18.16%  
タイ   1.41~1.52%  最低限以下のため免除
インドネシア   0.23~0.27%

 同上

この結果、米国際貿易委員会(ITC)が被害を認めれば最終的に関税適用が決まることとなる。

しかし、ITCは9月20日、中国、エクアドル、インド、マレーシア、ベトナムからの輸入凍エビは米国の関連産業に実質的被害あるいは脅威を与えていないとの認識を示し、相殺関税を徴収するとの米商務省の決定を否決した。

委員のうち、4人が否定、委員長を含む2人が被害ありと投票した。

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反ダンピング税に関しては、ブラジル、中国、インド、タイ、ベトナムから輸入された冷凍エビに対してすでに徴収が行われている。
ダンピング税率は毎年見直されている。

これに関し中国は2011年2月、米国商務省が中国から輸入される冷凍えびについてのダンピング・マージンを算定する際、いわゆる「ゼロイング」方式を用いていることを問題とし、WTO協議を申し入れた。

WTO専門家チームは2013年6月、 米国が中国産エビおよびダイヤモンド鋸刃の反ダンピング調査で使用した「ゼロイング」計算法は、「アンチダンピング協定」に違反しており、WTOの規則に反するものだとの報告を行った。

米政府は2012年2月6日、日本とEUの要求に応じ、反ダンピング(不当廉売)関税の計算法「ゼロイング (Zeroing)」を廃止することで日欧と合意したと発表した。7日以内にゼロイングを撤廃することを約束した。

2012/2/8  米が反ダンピング課税で「ゼロイング」廃止 

米商務部は2013年9月、ベトナム品についてダンピング税率を初めてゼロとした。
2004年以来、ベトナム産の冷凍エビに4.57%の反ダンピング税率を適用していた。

 



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