水俣病認定基準

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環境省は水俣病の患者認定について、メチル水銀との因果関係が認められれば、手足の先のしびれなどの感覚障害だけでも認める方針を固め、近く、熊本、新潟両県など関係自治体に通知する。


水俣病の認定については、環境庁は「手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせ」(52年基準)を条件としているが、2013年4月16日に、水俣病未認定患者の遺族が熊本県に認定を求めた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁は、裁判所が患者認定を独自に審査しうるとするとともに、「52年判断条件」に基づく高裁判決を破棄した。

「52年基準」についての最高裁判断:

手足の先の感覚障害だけの水俣病が存在しないという科学的な実証はない。

「52年基準」は、複数の症状が認められる場合には通常水俣病と認められ、個別的な因果関係について立証の必要がないとするもので、多くの申請について、迅速かつ適切に判断するための基準として定めたという限度で合理性を有する。

「52年基準」の症状の組み合わせが認められない場合でも、諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、水俣病と認定する余地を排除するものとはいえない。

2013/4/17  水俣訴訟、最高裁判決 

最高裁判決を受け、石原伸晃環境相は2013年4月19日の閣議後記者会見で、「判決の趣旨をしっかり踏まえ、(運用改善の)具体化を急ぐよう指示した」と述べ、検討を始めたことを明らかにした。



今回の決定はこれを受けたものであるが、認定基準そのものの変更ではなく、「補足」と位置付けた。

通知案のポイントは以下の通り。

・感覚障害のみでも認定できる

52年基準では、手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせが必要

・魚介類の多食時期や入手方法に加え、体内水銀濃度や居住歴、職歴などを確認する

有機水銀に汚染された魚介類をたくさん食べた時期や、魚介類の入手方法から認定申請者のばく露状況を確認、その上で(1)メチル水銀を摂取した当時の毛髪やへその緒などによる体内の有機水銀濃度 (2)汚染地域での居住歴 (3)家族の認定状況 (4)漁業などの職業歴−−を確かめる。

・水俣病に特徴的な症状か確認する

・水銀ばく露から発症までの期間は通常約1カ月、長くて約1年以内と考えられる

「時期が近くない場合は別の病因や加齢の影響が高まる」との見方。

・できる限り客観的資料の裏付けが必要

さまざまな機関が行った疫学調査などでも「適切な手法」で得られた結果であれば資料として取り扱えるとしたが、個別具体的な本人情報が記載されていることが条件。

・過去の処分の再審査はしない

過去の審査結果は見直さず、棄却された人も再審査をしない。


この認定条件は非常に厳しく、多くの被害者にとって水銀ばく露を証明する書類を今から確保するのは極めて困難で、これが救済対象の拡大につながる可能性は低いとみられている。

被害者団体では、「毛髪やへその緒の水銀値などの記録が残っている人は少ない。この内容で審査したら、最高裁判決や不服審査会の裁決を受けて水俣病と認定 された人たちが、認定されないことになる。「52年基準」よりも認定しにくくするもので、環境省は最高裁判決を全く無視したと言わざるを得ない。被害の実 態に反するごまかしだ」と厳しく批判している。

 「52年基準」では、複数の症状が認められる場合には通常水俣病と認められ、個別的な因果関係について立証の必要がない

 


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