インドネシアが鉱石禁輸実施、直前に緩和

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インドネシア政府は1月12日、国内での加工推進を目的とする未加工の鉱石の輸出禁止措置を導入した。

インドネシアで採掘された鉱石を国内で加工・精錬することを義務付ける「鉱物・石炭鉱業法」(2009年制定)に基づくもので、
加工製品の輸出増加を通じて、鉱物資源からの収益を長期的に拡大する狙いがある。

ただし、当局の間でも、未加工の鉱石の輸出禁止により、短期的には外貨収入が落ち込み、経常赤字が拡大し、通貨ルピーを圧迫する、大量の失業が発生するとの懸念があり、長時間の協議の末、加工・精錬を実施または計画している企業に2017年まで精鉱あるいは加工鉱石を輸出することを認めるという鉱物省の提案が採用された。

加工・精錬を行うことの出来ない数百社に及ぶ国内の中小鉱山への影響は大きい。

2017年からは全ての企業が金属製品あるいは鉱石の精製品のみ輸出可能となる。

詳細は近く発表されるが、諸情報によると、

1) Freeport-McMoRan Copper and Gold やNewmont Mining Corporation、その他加工・精錬を実施または計画している企業は2017年まで、銅、マンガン、鉛、亜鉛、鉄鉱石を輸出できる。


現状では製錬所の建設提案を125件受けており、そのうち28件は着工しているという。

   
2) ニッケル鉱石とボーキサイトについては、国内に十分な数の製錬所があるため、輸出禁止措置
  (年間20億ドル以上の輸出が影響を受ける)
   
3) 石炭とスズの輸出は規制対象外
   

日本はニッケル鉱石の全体輸入量の4割超をインドネシアに依存する。
日本の非鉄各社は在庫積み増しや他国からの輸入増で乗り切る構えだが、代替確保は容易でなく、禁輸が長引けばステンレス鋼の原料となるフェロニッケルの減産を強いられるとの懸念も出ている。

現在の日本のニッケル輸入は、インドネシアが44%、フィリピンが32%、ニューカレドニアが24%となっている。

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1945年憲法第33条では、「天然の資源は、国家の管理の下に置かれ、国民が公共の福祉を最大限享受できるように活用されなければならない」とされている。

2009年1月に公布・施行された鉱物・石炭鉱業法(2009年法律第4号)の内容は以下の通り。

① 鉱業権は、国又は地方政府から発給される鉱業事業許可制度に一本化(鉱業事業契約制度は廃止)
② 鉱業事業許可は、鉱業事業許可(鉱業事業区域)と特別鉱業事業許可(特別鉱業事業区域)に分類
③ 事業許可は、探鉱許可(入札により付与)と生産許可の2段階制
④ 許可取得可能者はインドネシア法人又は自然人(内国資本、外国資本の差別無し)
    ただし、外国資本の場合、生産開始後に、国、地方政府、インドネシア民間企業等への資本委譲の義務
インドネシア国内での生産物高付加価値化(精製・製錬)義務
  2014年以降に鉱物資源の輸出禁止措置を実施する

⑥ 政府に生産量、輸出量をコントロールする権限を付与
⑦ 国内鉱業サービス会社使用義務

鉱物・石炭鉱業法実施のための細則が2012年2月6日にエネルギ-・鉱物資源省大臣令として発表された。
このなかで、2014年からを前倒しして2012年5月6日からの輸出禁止令を公布するとしていた。

しかし、インドネシア内部の鉱山業者の猛反対、政府内部の見解不統一もあって土壇場で20%輸出関税賦課で内部の折り合いを付けた。

商業省貿易局が指定した鉱物生産の登録輸出業者だけに金属鉱石21品目と非金属鉱石44品目の輸出を認可。
輸出関税は一律2割とした。

インドネシアの鉱石禁輸で日本にとって影響が懸念されるのがニッケル鉱石で、フェロニッケルの原料となり、全体輸入量の約5割をインドネシアに依存しているため、供給が途絶すれば製錬業界、ステンレス業界など関連業界への影響が懸念される。

2012年5月の輸出禁止は撤回されたが、2014年以降に未加工の鉱石輸出の禁止を予定している問題で、経済産業省の製造産業局長は2012年6月、一方的に禁輸を実施した場合にはWTOへの提訴も検討すると述べた。

「一方的な輸出禁止は輸入国である日本の製錬産業の根幹に関わる。輸出税についても輸出国の自由で行うようであれば日本からの投資にも影響がある。日本政府としてはインドネシア政府に対していずれの措置も受け入れることは難しく、引き続き撤回を求めていく」

日本政府は、制度の見直しを強く働きかけてきたが、インドネシア国内では資源採掘による収入が「地元経済に十分還元されていない」との不満が強く、4月の総選挙や7月の大統領選挙を考慮して、今回、部分的に緩和策をとったうえで、法律の規定どうり禁輸に踏み切った。

ニッケルについては鉱石での輸出は禁止される。




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