京大と日産化学、iPSの大量培養法を開発

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京都大学・物質-細胞統合システム拠点(中辻憲夫教授)と日産化学は4月22日、ヒト多能性幹細胞(ES/iPS 細胞)の新たな三次元培養法の開発に成功したと発表した。

http://www.nissanchem.co.jp/news_relese/news/n2014_04_25.pdf

この成果は4月25日付けの米科学誌 Stem Cell Reports(電子版)に掲載された。
   A 3D Sphere Culture System Containing Functional Polymers for Large-Scale Human Pluripotent Stem Cell Production
 

再生医療や創薬研究への実用化のためには、高品質の iPS 細胞を安定的に大量供給する必要があるが、今までの方法では困難であった。

 ・接着培養法(培養皿):大量生産には不向き
 ・浮遊培養法:細胞塊の大きさのコントロールや撹拌による細胞ダメージなどの問題
 ・スピナーフラスコ等を用いて撹拌する三次元浮遊培養法:力学的ストレスによる細胞ダメージがあるため実用化には適さない。

今回、最適な三次元培養による大量生産を可能にするために、次の方法による新たなスフェア(球状の細胞塊)培養法を確立した。

  細胞解離酵素を使わない機械的処理による継代法の確立
    メッシュフィルターを用いた機械的処理による細胞株の継代法を確立

 ②高分子ポリマー・メチルセルロース(MC)の添加によって自発的なスフェア融合の大幅な減少に成功
       メチルセルロースを培養液中に添加することで、細胞塊の自発的融合を大幅に減少し、
        細胞塊の大きさを均一にすることに成功

 ③高分子ポリマー・Gellan Gum(GG)の添加によって撹拌が不要な三次元的浮遊培養法を開発
        Gellan Gum (水溶性多糖類)の添加で、撹拌することなく浮遊させる

 

     朝日新聞の図を一部手直し

 

この方法でニプロが開発した200mL 容量のガス透過性培養バッグを用いた培養では、10の8乗個の細胞数を獲得でき、多能性幹細胞を効率的に増殖生産できるシステムの開発が可能であることを実証した。

これにより、従来の10分の1のコストで治療に使う量のiPS細胞を確保できるとされる。

今後の実用化研究では数リットル規模の培養タンクなどを富士フイルムが中心になって開発する。

 



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