ウクライナ問題でのロシア制裁の影響

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米政府は4月28日、ウクライナ東部の緊張緩和に向けた措置を講じていないとして、ロシアに対する追加制裁を発動すると発表した。

軍事産業に用いられる恐れのあるハイテク製品の輸出を禁じ、プーチン大統領側近で国営石油会社Rosneftの Igor Sechin 社長 ら7人を新たに資産凍結と渡航禁止の対象に指定、大統領に関係する企業17社の資産も凍結する。

企業としてのRosneft や天然ガス大手のGazprom は含まれていない。Gazpromの社長の名前もない。

http://www.treasury.gov/resource-center/sanctions/OFAC-Enforcement/Pages/20140428.aspx

さらに、ロシアがウクライナとの国境付近に集結させている部隊をウクライナ東部に進軍させるようであれば、エネルギーや防衛セクターを含むロシアの主要産業に対する制裁を発動する構えを鮮明にした。

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エネルギーに対する制裁が発動された場合、多くの欧米企業が影響を受ける。欧州諸国はガスの30%をGazpromから輸入しており、EUはロシアの最大の貿易相手国である。


EUの産業担当委員は「ロシアへのいかなる制裁措置も、欧州の企業をたくさん傷つけることになる」と語った。

BPは「欧州連合が厳しい制裁を課した場合に危機にさらされる」と述べ、BASFは「用心している」としている。


エネルギー関連の欧米各社の状況は以下の通り。

1)BP

BPはRosneft に19.75%を出資し、CEOのBill Dudley など2人がRosneft の取締役になっている。

BPはTNK-BPの持分(50%)をRosneftに譲渡し、現金171億ドルとRosneftの株式 12.84% を取得、同時に、ロシア政府からRosneft株式 5.66%を48億ドルで買収した。
BPは既にRosneft株式 1.25%を保有しており、この取引で合計19.75%を保有することとなった。

BPは2013年にRosneft から配当4億5600万ドル(約467億円)を得たと明らかにしている。

2012/10/24 ロシアのRosneft、TNK-BPを買収

今回、Rosneft のIgor Sechin 社長 が制裁対象となったが、BPのBill Dudley CEO がIgor Sechinが社長のRosneft の取締役となっていることが問題となる。

米国務省によると、米国民は一般的に制裁ブラックリストに載った人物と取引することを禁止されるが、Bill Dudleyは米国市民である。

2)Centrica (英国の電力・ガス会社でBritish Gas の親会社)

2012年9月にGazpromとの間で、2014年後半から3年間で24億m3の天然ガスを購入する契約を締結した。

3)BASF

ロシアの天然ガスはウクライナ経由、ベラルーシ経由のパイプラインのほか、バルト海の海底約1200キロを通ってドイツ北東部まで繋ぐ Nord Stream Pipelineで欧州に供給される。

Nord Stream PipelineにはGazprom が51%、BASF子会社のWintershallが15.5%、オランダのGasunieが 9%、フランスの GDF SUEZ が9%出資する。

Wintershallはロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加することで合意している。

2011/8/27 Nord Stream Pipeline、欧州ネットワークに接続

4) ExxonMobil

Rosneft とExxonMobil は2011年に戦略的協力協定を締結し、2012年4月にこれを実施する契約を締結した。

・黒海と北極海(Kara Sea)開発
・北海の7ブロック追加
・西シベリアのタイトオイル開発
・ロシア極東でLNGプラント建設

2013/6/24 Rosneft とExxonMobil、戦略的協力関係を促進

同社はまた、サハリン1プロジェクト を主導している。日本企業も参加。

事業主体 ・エクソンネフテガス社
 (米、エクソン・モービル子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO)
 (日、石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資30%)
・ONGCヴィデッシュ社(インド、20%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社(ロシア、11.5%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 8.5%)
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
①石油    約23億バレル
②天然ガス 約4,850億立方メートル

5)Shell

Shellは三井物産、三菱商事と共に、Gazpromが過半数を獲得したサハリン2プロジェクト に参加している。

事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
・Gazprom 0%→50%+1株
・三井物産 25%→12.5%
・三菱商事 20%→10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
原油 10億バレル
天然ガス 4,080億立方メートル

2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景


更に、Shell とGazprom Neftは50/50の合弁会社 Salym Petroleum Developmentを設立し、本年1月から西シベリアのBazhenov formation でシェールオイルの試験掘削を開始した。

両社はまた、ロシアの北極圏の東部のチュクチ湾、西部のペチョラ湾で、Gazpromが過半を出資する合弁会社を設立して石油・ガスの探査を進める。

北極海ではRosneftとExxonMobilがKara、Laptev、Chukchiで、GazpromとShellがPechoraとChukchiで開発する。

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欧米によるロシア制裁はロシア経済に大きな影響を与えるのは確実で、ルーブルは急落している。

しかし、4月29日付 日本経済新聞 によると、当面はプーチン政権の基盤は揺らいでいないという。

一つは原油価格の高止まりで、ロシアの代表的な油種であるウラル原油は、ロシア政府が当初予算に盛り込んだ2014年の年間予想の101ドル/bbl を上回り、108ドル/bbl前後で推移している。

そして皮肉なことに、制裁によるルーブルの急落で、ドル建てで取引される資源輸出の収入(ルーブル建て)が増加、資源輸出に対する課税額が膨らみ、2014年1~2月の歳入額は2兆3681億ルーブルで、前年同期を19.5%上回った。



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